ナチスの犬(2012)


 
 
もしも戦争がおきたら、私たちはどうするでしょう。
 
やはり家族の命を守ることに懸命になると思います。
民族の誇りを掲げるより
国境や資源を奪おうとするより
食べ物をどうするのか、寒さや暑さをどうしのぐのか
子どもたちが飢えたり病気になるなんて耐えられない。
まして死んでしまったら狂ってしまうしかない。
 
ドイツ系ユダヤ人のズスキントは、ユダヤ人評議会から仕事をもらい
家族の強制送還を逃れます。
ユダヤ人評議会とはドイツの管理下におかれたユダヤ人の自治組織で
ドイツ軍の命令によりユダヤ人を動かすユダヤ人です。
彼らはユダヤ人からみたドイツ軍のために働く「ナチスの犬」なのです。
 
ズスキントが与えられた仕事は、親衛隊のフュンフテン大尉の下で
戦場に行ってしまったドイツ人の代わりにドイツ国内で労働させるため
移送するユダヤ人を選別するというものでした。
しかしあるとき親衛隊の娼婦から
移送されたユダヤ人は虐殺されているという事実を聞かされるのです。
 
ズスキンドはフュンフテン大尉に酒をプレゼントし話し相手となり
大尉から信頼を得ることで仕事を一任されます。
ススキンンドは名簿を改ざんし子どもたちを逃がします。
しかし収容所送りにする人数だけはごまかすことはできません。
代わりに老人を送るズスキンド。
そのため評議会のユダヤ人も送られていくことになります。
 
しかしその行為がいつまでも親衛隊にバレないわけがありません。
ズスキンドを友人だと思い、信頼していたフュンフテン大尉のショックは大きい。
ダイヤを賄賂に妻子を助けようとするススキンド・・
 
ナチス軍に協力するユダヤ人はたくさんいたそうです。
金髪のかつらをかぶりナチの将校クラブで踊る娼婦たち。
誰もが生きるためにしたことなのです。
自分の尊厳を捨ててさえも。
 
しかし親衛隊もまた軍の命令に従わなければ
過酷なロシアの最前線に送られ、命の保障はなくなるのです。
 
15万人ともいわれるオランダのユダヤ人ほぼすべてを
収容所に送った売国奴、ズスキンド。
しかし1000人の子どもの命は救いました。
 
何が正義か悪なのか
何が正しいのか間違っているのか
この作品では判断をしていません。
立場が変われば善悪も変わるのです。
 
オランダ映画(未公開)なのですね。
ハリウッドとはまた違った、戦争の価値観なのでしょう。
虐殺シーンなどはないものの、とても重い内容でした。
でもこういう暗くて救いようのない戦争映画って
なぜか好きでつい見てしまいます。
 
自然災害は人間の手で止めることができない
けれど戦争は人間の手で止めることができるはずなのです。
だけれどなくならない
戦争に正義があると思っている人がいる限りは。