オデッサ・ファイル(1974)




フォーサイスの小説の面白さは
読むものの予想を、見事に裏切った結末に尽きる

そして、読むのが怖い
ページをめくる恐ろしさといったら
この「オデッサファイル」が特に逸品
こんなことが現実にあったなんて

西ドイツの記者、ミラーは自殺した老ユダヤ人の日記を読み
ユダヤ人の絶滅政策を残虐に遂行してきたナチSS将校
ロシュマンの存在を知り、彼を探しはじめます

ユダヤ人過激派グループの協力を得て
自分も元親衛隊になりすまし
オデッサ」という秘密組織に入り込もうとするのです
しかしたった一度恋人に電話をかけてしまったことで
身元が割れてしまいます
オデッサから命を狙われることになるミラー

なぜ、こんなにも執拗にミラーはロシュマンを追うのか
ドイツ人の彼が、ユダヤ人の復讐のためにそこまでするとは思えない
その謎が最後に解き明かされます

だけれどロシュマンは言う
その健康な身体を、目の色を、髪を
西ドイツの経済発展を見ろと

誰のおかげだと思う
我々が作り出したのだと

それは、親衛隊が劣性を排除したおかげだからだ
優性生殖の恩恵なのだということを
意味しているのです

恐ろしいのは、きっと誰しもが
そういう考えを心の片隅に持っているということ
ナチスだけのことではないのです
それをフォーサイスは問いかけている

ただ映画のほうは、やはり原作のスリルを
出しきれていませんでしたね

でもこの作品をきっかけに
もっと多くの人がオデッサを知ることが
できればいいと思いました



逸話】ウィキペディアより
登場人物の元強制収容所エドゥアルト・ロシュマンは、実在の人物。リガにあったカイザーヴァルト強制収容所の歴代所長の一人で、“リガの屠殺人”と呼ばれた。1977年8月、パラグアイで死亡が確認されている。
フォーサイスはロシュマンをはじめ、実在のナチス関係者や組織についてかなり詳細な情報を入手して作品を執筆したとされる。後年、ロシュマンの検死をした関係者が「フォーサイスの小説では、ロシュマンは逃亡中に足の指を数本欠損したと書いてあったが、それは事実だった」と述べている。この作品の出版に当たっては、作者のフォーサイスの元には多くの脅迫状が届いたと言う。



オデッサ (組織)【概要】ウィキペディアより
ドイツの元ナチス党員の犯罪を追求するサイモン・ヴィーゼンタールによれば、この組織は1946年にナチス親衛隊のメンバーをはじめとする、旧ナチス党員の逃亡支援のために結成されたとされる。
しかし第2ドイツテレビ(ZDF)が行った元親衛隊隊員へのインタビュー番組を含む他の資料は、ウィーゼンタールがいう「単一の世界的組織」としてオデッサが存在したことはなく、むしろ複数の組織が、元SS隊員をはじめとする元ナチス党員の国外逃亡を助けたことを示唆している。
元SS隊員を助けた組織には、公的団体も非公的組織もあり、バチカンを筆頭とするカトリック教会やアメリカのCIA、チリやアルゼンチンなどの南アメリカ政府の機関、ロッジP2のような秘密組織が含まれていたと指摘されている。他にSS同志会やルデル・クラブなど、旧ドイツ軍人が旧ドイツ軍人およびナチス戦犯者の支援のために創設した組織もある。