仁義なき戦い(1973)





「馬の小便か?こりゃ、ビールならもっと冷やいの持ってこいや!!」
「わりゃあ、馬の小便が嫌なら、わしの小便飲ませたろかぁっ!」 
「オウ! 飲ましてみいや!」


すごい映画でした
この映画を邦画ベスト1に推す人もかなりいるということですが頷けます
実話ベースだとは知りませんでした

ストーリーは生々しく、ドキュメンタリーのようなナレーション
手持ちカメラを多用した演出が異様なリアルさを生んでいます
ゴッドファーザー」(1972)の影響も見受けられますが
何よりもファミリーを大切にするマフィアとは違い
こちらは兄弟だろうが容赦なく騙し、裏切ります





舞台は戦後の動乱期、広島呉市
バラック闇市、ボロの国民服(国民服というのがあったのですね)
そのなかでヤクザ社会がどんどん成長していきます
日本刀で腕をブッた斬られる凄まじい幕開け

基本的には二部構成の映画で
まずは山守組と土居組の対立、続いて山守組の内部分裂を描いてます
登場人物は多いのですが、混乱することなくストレートでわかりやすい
そしてとにかく怒号の嵐、喧嘩の嵐、暑苦しい群像劇

「おどりゃア!」
「バカタレ!」
「うぬら、調子に乗りよって!」
「舐めよってから!」
「なにを言うとるんなら、このクソ!」
「ナンとしやがるんな!」

そして人が死ぬ度に「ちゃらら~ん♪」(笑)
この繰り返し





撮影に際しては当時を知る「ホンモノ」が呼ばれ監修したそうです
山守組長のモデルも、呉市に古くから住んでる人は
みんな知ってる人物だったそうです


仁義と裏切りと暴力と死が交錯する中
梅宮さんと、文太兄ぃの兄弟分の男気と
金子信雄さん演じる山守組長のクズっぷり

親分はやっぱり悪人だったか
騙されて涙する文太兄ぃ
葬式の時のかっこよさはない


「正義は勝つ」を完全否定し
突如出現した実録やくざ映画の傑作

人間には暴力的な猛々しさへの憧れもあるのだと
思い知らされる作品でした




【解説】allcinemaより
日本暴力団抗争史上で最も多くの血を流した“広島ヤクザ抗争”を、渦中の人物“美能組”元組長の獄中手記を基に描いた飯干晃一の同名ノンフィクションの映画化。深作欣二監督が、斬新で迫力ある映像を駆使してドキュメンタリー・タッチで描いた大ヒット実録ヤクザシリーズの記念すべき第1作目。敗戦直後の広島・呉。復員してきた広能はその度胸ときっぷの良さを買われ、山守組の一員に。それを機に、弱小勢力だった山守組は組織を拡大、ついには他組織との全面抗争へと発展していく……。