仁義なき戦い 頂上作戦(1974)




「ほおか ほいじゃあ言うとったるがの
 広島極道はイモかもしれんが、旅の風下に立ったことはいっぺんもないんで
 神戸のもんゆうたら猫一匹通せんけえ、おどれらよう覚えとけや!」


原作においての事実上の最終作が、この「頂上作戦」ということです

暴力団という存在を肯定するつもりは一切ありませんが
1作目での、敗戦による喪失と屈辱、貧困と飢えが
仲間を作り助け合い、生きていくため暴力に駆り立てられたのは
事実なのでしょう

しかし時は流れ、時代は高度成長期
東京五輪を間近に控え、時代が生んだアウトローたちのカタルシス
やがて淘汰されていくことになるのです


前作から続く「広島抗争」の決着がいよいよ
つくことになるはずの本作

しかし、銃や、喧嘩や、刀だけで
ドンパチを繰り広げるわけにもいかなくなり
戦うための大義を探して、したすら膠着する2大勢力

そんな中、ぬくぬくと凌いでいく山守組長(金子信雄)の
腹立たしい老獪





「代理戦争」でやっと広能(文太兄ぃ)と、山守組長が
対決する段取りがついたというのに、兄ぃは警察に張られて逮捕
表舞台から消えてしまいます

しかも成田三樹夫さんは、前作でカタギになったので
出てこない、超欲求不満ではないですか!(笑)


それゆえ、主役は武田(小林旭)だと言ってもいいでしょう
神戸ヤクザにタンカを切る
山守組長の請求書の束に悶絶
エンストしたクルマまで必死に押す

知的なインテリが、子分にやらせておけばいいのに、頑張る
この妙で真面目なギャップは可愛い(笑)

ボスに疑問を感じるナンバー2という設定にも
共感がもてます


そして本作のベスト・オブ・クズ野郎は、小倉一郎さん
気弱で、「原爆スラム」に住むヲタク的なキャラ
そんな彼のことを同情したのか、松方部長(再々登場)は
面倒を見てあげようとします





なのに、家族にテレビを買うためだけに
この若者は外道の所業をしてしまうのです

己の私欲だけのために行動する「新時代」
そして、今まで以上に深まっていく警察、新聞、市民の介入


仁義と度胸を貫いたせいで長期刑になった、兄ぃやアキラさん
なのに、山守組長のようなクズがすぐに釈放されてしまう仕組みには
今も昔も変わらない、権力と法律の矛盾を感じるラストでした
でもその理不尽が、実話らしい

「広島ヤクザ戦争はなんの実りもなく終結を迎えた」
そんなナレーションで、物語は幕を感じることになります



【解説】allcinemaより
 “仁義なき戦い”シリーズの第4作目。昭和38年春から翌年にかけての、敵対する2つの広域暴力団の代理戦争となった広島抗争を実録タッチで描く。昭和38年春。西日本広域暴力団・明石組とライバル神和会の代理戦争の場と化した広島。明石組系の打本組と広能組、神和会系の山守組の対立は激しさを増し、相次ぐ抗争事件から、市民の批判は高まり、警察は暴力団撲滅運動に乗り出し、“頂上作戦”を敷くのだが……。