風にそよぐ草(2009)




「猫になれば、猫の餌が食べられるの?」


これは夢なのか、それとも現実なのでしょうか。
男性の妄想のようでもあり
複雑な女心のように掴めない
とても難解な作品でした。

フランスの巨匠アラン・レネ
89歳にして送り出した
たそがれた大人のラブストーリー。

たまたま拾った女性の財布。
その中の証明書の免許書に載った写真の女性に
いろいろと想像してしまう初老の男性。

彼には聡明な妻もいるし、幸せな結婚をした娘もいます。
誰が見ても真面目で良き夫、良き父親として暮らしてきました。

でも頭のなかは幾つになっても「男」なのです。
心の中では常に女性との刺激を求め考えてしまう。

女性から財布のお礼の電話が来たとき
なぜか男はひどい態度をとってしまいます。
反省し女性におわびの手紙をだす
やがてそれはストーカー行為になってしまいます。
行動が暴走して警察から警告されてしまう羽目に。
「男」は傷つき、そして女性に冷めてしまいます。

去った「男」に、今度は女性のほうが寂しくなってしまいます。
逢いたい、逢いたい、逢いたい・・
仕事が手につかず、逆ストーカーになってしまう。

彼女は歯科医という職業上経済的にも豊か。
男性だってそれなりにモテています。
なのに「男」から無視されるのは、耐えられない。
なんとか繋がりをもちたい
本当は私たちは愛し合っているの。

でも飢えた女と思われたくない
そんなプライドもあります。
奥さんも一緒に自分の操縦する飛行機に・・
そう誘います。

この難解な作品に私の出した答えはこうです。

大人の恋は、ただ恥ずかしい。
失態ばかりしてしまうのです。
ファスナーひとつ上げるのでさえ
慎重にやらないといけない。

よく解き明かせば
男と女の本性に迫った作品かもしれません。
男と女でいる限りの。



【解説】allcinemaより
去年マリエンバートで」「巴里の恋愛協奏曲(コンチェルト)」の巨匠アラン・レネ監督がクリスチャン・ガイイの小説を基に、ひょんなことから初老男性を襲う不条理に満ちた老いらくの恋の行方を瑞々しくかつミステリアスな筆致で描き出す恋愛ストーリー。主演は「メロ」のサビーヌ・アゼマ、「恋するシャンソン」のアンドレ・デュソリエ
 歯科医のマルグリットは、ショッピング帰りに引ったくりに遭いバッグを奪われてしまう。ショッピングセンターの駐車場で財布を拾った初老の男性ジョルジュ。それはバッグを引ったくられたマルグリットの財布だった。お金は抜き取られていたが、中身を確認したジョルジュは、小型飛行機の操縦免許証の顔写真を見て恋に落ちてしまう。そして財布を警察に届けたジョルジョのもとに、後日マルグリットからお礼の電話がかかってくるのだが…。