ロスト・イン・トランスレーション(2003)

 

 

原題の「Lost in Translation」とは

翻訳によって本来の意味原文のニュアンス文化的背景

失われるということ

ソフィア・コッポラ20代前半で大学を中退した後

たびたび大好きな日本に訪れ

当時何をすべきかわからなかった彼女は

自分の将来を考えながら東京を彷徨ったという実体験をもとに

現代社における人間関係相互理解の難しさ、疎外感を

「異邦人」という立場から描いた、というもの

一見はパークハイアットホテル、サントリー

新宿西口、靖国通りのネオン街、スクランブル交差点

パチンコ、カラオケ、新幹線・・を背景にした

雰囲気だけの「お洒落映画」なのですが(笑)

なかなか深い

しかも大人になってから見たほうが共感できました

スカーレット・ヨハンソンではなく

ビル・マーレイのほうに(笑)

仕事は落ち目(燃え尽き症候群

25年連れ添った妻との関係はおざなり(中年の危機)

日本の丁寧なおもてなしに白け

性的な刺激にも興味を持てない

それらから感じる孤独は全て老いによるもの

 

ボブ役にはマーレイしかいないと思ったソフィアは

(マーレイはプライベートでも世捨て人で連絡が取りにくいらしい 笑)

1年にも及ぶ説得の末、やっと主演する同意を得たそうです

マーレイがサントリーのキャンペーンを行うというアイデア

かって父親のフランシス・フォード・コッポラ黒澤明

サントリーリザーブのCM(1980)に主演したことから生まれたそうです

しかも敬愛する黒澤明の「影武者」の製作費を稼ぐため出演したそうな

なんていい奴なんだ、コッポラ(笑)

あんなCMディレクター(ダイヤモンドユカイ)や通訳がいたり

性接待があるというのは

さすがに大げさすぎで、ギャグかと思いましたが(笑)

最近でもフジテレビ問題がありましたが

20年以上前のマスコミ(だけに限らず)なら大いにある話

というか普通

ハリウッド俳優のボブ・ハリス(ビル・マーレイ)は

サントリーのCMに出演するためパークハイアット東京に到着しますが

日本でのカルチャーショックと、時差ぼけのため眠ることができません

同じくパークハイアット東京に写真家の夫ジョン(ジョバンニ・リビシ)と

(ソフィアの元夫スパイク・ジョーンズがモデル)滞在している

大学の哲学科を卒業したばかりのシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)は

ジョンが撮影で忙しいため(しかも妻そっちのけで女優のケリーと盛り上がっている)

東京のあちこちをひとりで観光して時間を潰しています

ソフィアの才能のひとつである、女性目線のポップな映像が素敵

ブレイク前の、当時まだ17~18歳のスカヨハが瑞々しい

世に言うミューズに簡単に手を出せない神々さえある

ソフィアはスカヨハ名前さえ知らず

「あのハスキーな声のかわいい女の子」と指名したそうです

撮影を終えたボブがホテルのバーで飲んでいると

ジョンの友人たちと来ていたシャーロットがボブに気づき

ウェイターに頼み彼に日本酒をおごります

次の日もシャーロットがバーに行くと、ボブは同じ席で飲んでいました

ふたりはお互いのことを話し親しくなります

ジョンが1週間出張することになり、寂しがるシャーロットに

ジョンは日本人の友人“チャーリー”と会うことを勧めます

シャーロットはボブも誘うとカラオケにストリップと夜の東京を遊びまわり

それからもシャーロットとボブはふたりきりで会うようになります

日本酒を飲み、一緒のベッドでも寝る

その後シャーロットは京都にひとり旅に出かけ

マシュー南藤井隆)のテレビ番組の収録を終えたボブが

いつものようにホテルのバーでウイスキーを飲んでいると

バーのバンドのヴォーカリスト(キャサリンランバート)と意気投合

翌朝、京都から戻ったシャーロットがボブの部屋に向かうと

女性の声に気づき、そのまま自分の部屋に戻ります

ボブはシャーロットをしゃぶしゃぶランチに誘いますが

気まずい雰囲気が漂います

すべての撮影が終わりボブがアメリカへ発つ前夜

ホテルの火災報知機が誤作動し、宿泊客たちがホテルのエントランスに避難すると

シャーロットを見つけたボブは正直に彼女を恋しく思ってることを打ち明け

ふたりは和解しホテルのバーへ行きます

帰りのエレベーターでシャーロットの両頬に別れのキスをするボブ

翌朝、ボブシャーロットの部屋に電話しますが彼女は出ない

するとシャーロットがロビーに現れ、ボブにさよならを告げます

広告代理店の社員たちと記念撮影をしながらシャーロットを見送るボブ

空港へ向かうタクシーの窓からシャーロットボブは

タクシーを降りると彼女を追いかけ抱き締めます

何かを彼女の耳元で囁くと泣きながらうなずくシャーロット

ボブはシャーロットに初めて口づけをすると

再びタクシーに乗り込空港へ向けて出発するのでした

これはソフィアが自分で書いた脚本の台詞が気に入らないと告げたため

マーレイが即興でスカヨハの耳元で囁いたというもの

ソフィアはこのシーンに新たな台詞を吹き替えることも考えましたが

最終的に聞こえないほうが良いと判断したそうです

ちなみにインタビューで「耳元で囁いたセリフは何か」と質問されたマーレイは

「忘れた」と答えたそうです

さすがマーレイ(笑)

 

東京も開発により、この頃とだいぶ変わったところもありますが

ちょっと異邦人になった気分で散策したくなる

もしかしたら新しい発見と出会いがあるかも?と

思わぬ期待までしてしまいます(笑)

 

 

【解説】映画.COMより

長編映画デビュー作「ヴァージン・スーサイズ」で高く評価されたソフィア・コッポラ監督の長編第2作。異国の街・東京で出会ったアメリカ人男女の心の交流を繊細に描き、2004年・第76回アカデミー脚本賞をはじめ数々の映画賞に輝いた。
ウィスキーのCM撮影のため来日したハリウッドスターの中年男性ボブ。倦怠期の結婚生活から逃れる口実と2万ドルの出演料のためになんとなく引き受けたものの、言葉が通じない中で疎外感を募らせていく。一方、若い女性シャーロットは写真家の夫に同行して東京へやって来たが、夫は仕事で忙しく、ホテルの部屋でひとり孤独な日々を過ごしていた。滞在先のホテルで偶然知り合ったボブとシャーロットは急速に親しくなり、ネオンきらめく東京の街へと繰り出していく。
ビル・マーレイがボブ、スカーレット・ヨハンソンがシャーロットを演じた。林文浩、藤井隆ダイアモンド☆ユカイら日本の芸能人、タレントも出演。

2003年製作/102分/アメリ
原題または英題:Lost in Translation
配給:東北新社