英雄は嘘がお好き (2018)

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原題は「LE RETOUR DU HEROS」(英雄の帰還)

メラニー・ロラン初のコメディ映画

フランス映画らしく、お下品加減もほどよく(笑)

90分で上手くまとめ上げています

 

才気走ったオールドミスと、口だけ達者な腰抜け男

犬猿の仲の男女が、惚れ合ってしまうというオチは見当つくものの

その先にもオチが待っているのがシニカル(冷笑的)

結局こういう女は、こういう男の尻拭いを一生し続けるんだろうな

 

だけど私たちの感覚と違い、ブルジョワジーのお話なので(笑)

お金のトラブルは、どうにでも解決できたのでしょう(たぶん)

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1809年、ブルゴーニュ地方にある小さな町

ヌヴィル大尉は、貴族の娘ポーリンにプロポーズしますが

突然、戦場に行くよう命令を受け

ポーリンに毎日手紙を書くことを約束します

 

しかし、何日、数週間、数ヶ月経ってもポーリンに手紙は届きません

姉のエリザベットは、ショックで病に伏せたポーリンのため

ヌヴィル大尉を装い嘘の手紙を書きます

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祖国のために戦う勇敢な男、婚約者を思うロマンチスト

ポーリンは再びトキメキを取り戻し、両親は歓びで満たされ

ヌヴィル大尉の武勇伝はたちまち町中に広がってしまいます


妹のためとはいえ、さすがにヤバいと思ったエリザベット(笑)

最後に、ヌヴィル大尉が名誉の死を遂げる手紙を書き

悲しみに暮れるポーリンを説得し、気弱な青年ニコラと結婚させるのです

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これでもう、インチキ男の顔を見ることもないわ、うふふふふ

だけどそれから3年後、そのインチキ男が浮浪者同然で町にいた

今度こそ追い払おうと、男にお金を渡したのが間違い

小奇麗に変身したヌヴィルは生還した英雄として

ポーリンに会いにやって来るのです


なんとか辻褄を合わせるため、嘘の手紙の内容をヌヴィル教えるエリザベット

だけどヌヴィルはエリザベットより一枚も二枚も役者が上だった

嘘の手紙の内容を、さらに盛り上げ感動的にして皆に聞かせるヌヴィル

しかもダイヤモンド鉱山を当てたという出まかせが投資詐欺にまで発展

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今さらエリザベットが、これは自分が作った嘘の話だと言っても誰も信じない

それどころか頭がイカれたと思われてしまいます


しかもヌヴィルには何のモラルもない

再びヌヴィルに熱を上げ、その気になったポーリンを頂こうとわけですが

ポーリンの本性は、殴って、打って、激しくしのドMのド変態だった

萎えてしまったうえ、旦那のニコラから決闘を申し込まれてしまう

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軟弱に見えても、ニコラの射撃の腕は一流

これでヌヴィルもあの世行きだわ、うふふふふ


腰抜けヌヴィルに決闘する気などさらさらない、でもニコラは本気

そこにタイミングよくポーリンがニコラを止めに入ると

ヌヴィルはニコラにこっそり、女を悦ばせる秘訣は何かを耳打ちします

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ニコラはヌヴィルに言われた通り、ポーリンを罵倒し平手打ち

たちまちポーリンの目は旦那様にハート模様(笑)

これからは新境地のプレイでも開発して、何人でも子ども作ってくれ


そこでエリザベットはブルゴーニュ入りした将軍を招待します

将軍の前では、さすがのヌヴィルの嘘もバレるだろうと予測したのです

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そこでヌヴィルが、エスリンの戦い

ナポレオンが敗北した数少ない戦闘のひとつ)語るシーンは感動的

オーストリアの攻撃は激しく、劣勢で激しい銃弾の中フランス騎兵は撤退

正直に自分は逃げた、と伝えるのです

 

将軍ヌヴィルに祝福を示したその時、コサック(ロシアの軍事共同体)襲撃

そこでヌヴィルは、本来のダメダメ男を取り戻し(笑)

エリザベットに逃げろとか、住民を非難させろと言うだけ

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やっぱ信用出来ないわ、と思った直後

ただひとりライフルでコサックに立ち向かったヌヴィル

その瞬間、大砲のが鳴り響びます


それはエリザベットの教えでが屋敷の傍に

あらかじめ用意していて発砲したものですが

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あたかもヌヴィルコサックを追い払ったようになってしまうのです

嘘の英雄が、本物の英雄になってしまっ

しかも、突然エリザベットに結婚を申し込む(笑)

 

「はあ?」なエリザベットに反して、両親や周囲の人々は歓喜

でもこれは結婚というより、(マルチ商法の)ビジネス・パートナー

 

たぶんこの映画、ラブコメ風だけど

主題は「本人の意思が尊重されるべき」なんだろうな

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(女性が適齢期を超えても)結婚しなくていい自由

(男性が)戦争や死ぬことを否定していい自由

 

名誉だとか誇りだとか

人間がこうでならなくてはいけない「枠」は、誰が決めたのか

それは家族の愛や命より、大切なものなのか

 

そうして再び、偽の英雄ヌヴィルは戦場に駆り出されてしまう

今のところ、新妻の束縛から逃れ

再びうまいことやろうと意気揚々みたいだけど

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エリザベットを甘く見ちゃいけないよ

こういう男に興味なさそうな女ほど

火が付けば地獄まで男を追いかけていくんだから(笑)


最後にこれは使える、今日の名言コーナー

マルチ商法の取り分50:50に「女じゃないか」と反論した男に対し)

「だから?今は中世じゃないんだけど?」

 

もしカレや旦那に、それは女の仕事みたいなこと言われたら

「今は中世じゃないんだけど?」

まあ、日本だったら中世どころか

「昭和」でも使える気がしますが(笑)

 

 

【解説】allcinema より

「アーティスト」のジャン・デュジャルダンと「イングロリアス・バスターズ」のメラニー・ロランの共演で贈る痛快コメディ。19世紀初頭のフランスを舞台に、戦争に行ったまま戻らない婚約者を待ち続ける妹を不憫に思ったヒロインが、婚約者になりすまして代筆した嘘の手紙が原因で、やがて町を挙げての大騒動となるさまをコミカルに描く。監督は「プチ・ニコラ」「おとなの恋の測り方」のローラン・ティラール。
 1809年、フランスのブルゴーニュ。裕福なボーグラン家では次女のポリーヌの縁談がまとまりお祝いムード。ところが婚約者のヌヴィル大尉は戦争に駆り出されてしまい、彼の帰りを待ち続けるポリーヌは約束した手紙が一向に届かないことですっかり憔悴してしまう。そんなポリーヌを心配した姉のエリザベットは一計を案じ、大尉のフリをして自分で書いた手紙を妹に送り続けることに。おかげでポリーヌは元気になるが、調子に乗ったエリザベットは大尉の武勇伝をでっち上げ、最後は大活躍の末に戦死したことにしてしまう。すると町の人々はヌヴィルの銅像を建てて地元の英雄の死を悼むのだった。ところが3年後、エリザベットは貧相な姿で町に戻ってきたヌヴィルを偶然見かけ、このままでは自分の嘘がバレると大慌てになるのだったが…。