「笑の王国」の座付き作家だった菊谷栄(きくやさかえ)
検閲の圧力に負けず、数々のヒット作を生みだし
高い評価を受けていましたが
1937年に召集された中国で戦死、34歳没
そんな史実を知って見ると
ラストシーンも感慨深いものになるかも知れません
ほぼふたり芝居というのも、役者の力量が試される
セリフだけの攻撃で面白く見せるというのは
簡単そうに見えて難易度が高い
ただ、長い(笑)
特に前半のテンポが悪い
この内容なら70~80分で十分
無駄に豪華なエンディングも
余計に長くして商業的に成功させようという
ビジネスとしてのいやらしさがミエミエ
どうせやるなら最後までくだらない「笑い」にこだわって
菊谷栄に敬意を払って欲しかった
戦時下の警視庁、保安課検閲係の
笑った事のない検閲官、向坂(役所広司)から
舞台劇「ジュリオとロミエット」の上映許可を得るために
台本の修正にやってくることになります
せっかく書き上げた喜劇に、検閲官が次から次へと注文を付けてくる
「設定を日本に」「接吻はダメ」「”お国のため”というセリフを入れる」
「ジュリオとロミエット」は「貫一とお宮」になり
接吻は警察官が邪魔に入ることによって可笑しさを増し
「お国」は「おくにちゃんのため」になり「お肉のため」になる
最後には原型をとどめないほど変えられるのですが
そのおかげでむしろ面白い台本になってしまうのです
プロットはウディ・アレンの「ブロードウェイと銃弾」(1994)に
よく似ていますね(笑)
(しかも本作のラジオドラマの放送初演も1994年という偶然)
しまいには喜劇のとりこになってしまった堅物検閲官
やっと上演許可を下した7日目、脚本家は自分にも召集令状が届き
舞台は上演できなくなったと報告するのです
検閲官は台本を預かると言い「生きて帰ってこい!」と脚本家を見送る
こんな警察署内にNGワードもってくるよりは
「おにくちゃんのために頑張ってこい、グッ!」が、よかった
ふたりで愛肉精神を誓うみたいな(笑)
同じような屁理屈ばかりのクドい台詞劇のコメディでも
ほとんどの脚本を100分以内できっちり収める
ウディ・アレンとはやはり格の違いを感じてしまう
いまさら私に言われなくても
三谷幸喜も十分承知でやっていることだろうけど(笑)
三谷もいつか(女性問題は別として 笑)
アレンになれる日がくるのだろうか
たぶん、こないな
【解説】allcinema より
人気脚本家・三谷幸喜の傑作舞台劇を三谷幸喜自らの脚本で映画化したコメディ・ドラマ。太平洋戦争突入目前、言論・思想統制が厳しさを増す時代を背景に、一人の喜劇作家とカタブツな検閲官が台本の中の“笑い”を巡って熾烈な攻防を繰り広げる中で、次第に奇妙な連帯感を築いていく姿を緊迫感とユーモアを織り交ぜ描く。主演は「Shall We ダンス?」「うなぎ」の役所広司とSMAPの稲垣吾郎。
日本が戦争へと突き進んでいた昭和15年。国民の戦意高揚の妨げになると様々な娯楽が取締りの対象となっていたこの時代、演劇もまた台本の段階で厳しい検閲を受けていた。警視庁の取調室では2人の男が新作喜劇を巡って熱い火花を散らしていた。一人は、一度も笑ったことがない厳格な検閲官・向坂睦夫。相対するは、笑いに命をかける劇団“笑の大学”の座付作家・椿一。向坂は台本から“笑い”を排除しようと椿に無理難題を突きつける。上演の許可をもらうためその要求を聞き入れながらも、なんとか“笑い”を残そうと苦悩する椿だったが…