ビフォア・ミッドナイト(2013)



「今の私と列車の中で出会ったら、声をかけてきた?」

「今の僕に誘われたら、一緒に列車を降りたかい?」

それは100%ありえない(笑)



恋人までの距離ディスタンス)」(1995)でのウィーンの一夜の恋

ビフォア・サンセット」(2004)でのパリで再会した数時間

それから9年後

ギリシャの空港で14歳になる息子を見送ってから

ペロポネソスのホテルで二人きりで過ごす夜までのお話


パリでセリーヌジュリー・デルピー)と再会した

ジェシーイーサン・ホーク)はアメリカへは帰らずに

妻とは離婚したということなのでしょう

セリーヌは妊娠して双子の女の子を出産

今はフランス流の事実婚を続けているようです




野球にもサッカーにも興味を持たない息子が不憫なのか

「音楽会に来なくていい」と断られたのがショックなのか

それともアメリカへのホームシックか

突然シカゴに住まないかと言い出すジェシー


「はぁ?」こっちでの生活もあるし、仕事もあるのに

この男は何をイキナリ勝手なことを言い出すのか

テメエのことしか考えないのか


そのことで怒りのスイッチの入ったセリーヌ

家事に育児に、ワンパターンなセックスのやり方まで

今までの積もり積もった不満が爆発してしまいます




1作目と2作目の会話や議論はお互いを知り
理解を深めるためのものでした

意見の食い違いもむしろ楽しい、すべてが新鮮で心ときめくもの


しかし長年一緒に暮らしていたら、そうはいきません

仕事や、子どもや、親兄弟の問題、ご近所や友人との付き合い

旅行先を決めるだけでも衝突してしまうのが、現実




夫の身なりも、そぶりも、だらしなくなってしまい

すっかり太った妻に羞恥心はなくなり、口を開けば愚痴ばかり


究極の長回しに、毒と才気に溢れるセリフが

リアルで面白い




子どもが小さかったときは、やはり夫に八つ当たりしたことあります(笑)

だからセリーヌのいい分には「うん、うん」と頷くことも多い

そこで夫が堪えてくれたからこそ、今も夫婦でいれるのです


セリーヌはつい簡単に「別れる」とか「もう愛してない」

と言ってしまいます

ジェシーには何で怒っているかわからない




それでも何とか溝を埋めようと

タイムマシンで未来からやってきた代理人となり(笑)


セリーヌに、未来のジェシーからの手紙を読むのです

そこで意地にならなかったセリーヌには、寛容と知性を感じました


だって、セリーヌが育児で発狂しそうなくらい大変な時に

ジェシーは本屋のエミリーと楽しくヤっていたのですから

私ならこの優柔不断男が、また浮気するに三千点懸けます

(でもヤるなら絶対奥さんにバラすなよ)




出会いの頃の気持ちを思い出し、お互いを許し合うふたり

こうして何度も喧嘩して、仲直りして続いていくのが家族


こうしてシリーズで見ると

何歳になっても甘酸っぱい気持ちが蘇る不思議な作品




しかもリチャード・リイター監督、イーサン・ホークジュリー・デルピー
三人にとってはライフワークになっているとまで言います


もし9年後にまだ続編が出来るとしたら

タイトルは「Beforedawn(夜明け前)」になるのでしょうか(笑)

息子や双子の娘たちも成長し、ジェシーセリーヌ

そのときまではたして一緒に暮らしているのか


秘訣は「簡単な勝負には女が負ける」ことみたいです(笑)






ああ、聞こえたよもう愛してないって?

もしあれが本気だったなら、はっきり言うが

君も娘達と同じおとぎ話に生きたいだけだ

僕は関係を良くしたい 君を無条件に愛する 君は美しい

80でも最高のケツだ 僕は君を笑わせた

君の文句に耐えているが、僕が犬のように必ず戻ると思ったら大間違いだ

でも、真実の愛を求めるなら、ここにある

完璧ではないがこれこそ本物だ

それがわからないなら、僕は諦める




【解説】allcinemaより

主人公ふたりの儚くもロマンティックな出会いを綴った「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)」とその9年後の再会を描いた「ビフォア・サンセット」の名コンビ、イーサン・ホークジュリー・デルピー、そして監督のリチャード・リンクレイターが再び結集し、前作からさらに9年後の物語を描いた恋愛ドラマ。最初の出会いから18年の時を重ねたジェシーセリーヌの現在が、ギリシャの美しい風景をバックに赤裸々に描かれていく。
 パリでの運命の再会から9年。当時はそれぞれにパートナーがいたアメリカ人のジェシーと、フランス人のセリーヌは一緒に暮らしているばかりか、ふたりの間にはかわいい双子の娘たちまでいた。パリに暮らしている彼らは、南ギリシャの美しい港町にバカンスにやって来ていた。ウィーンでの初々しい出会いからすでに18年。すっかり中年となり、仕事と子育てに追われる日々。楽しいはずのバカンスも、気づくとすぐに言い合いとなってしまうふたりだったが…。