6才のボクが、大人になるまで。(2014)

「それで要点は?」

「要点なんかないよ」

原題は「Boyhood」(少年時代)

 

まるでどこかの家庭のドキュメンタリーを見せられているようですが(笑)

れっきとしたフィクション

12年もの間、毎年同じスタッフ同じキャストが集まり

脚本にミーティングで出たアイディアや

子どもたちの成長に合わせた変更を加えながら撮影していったそうですが

そのようなタイムラグがあったとはとても思えません

主人公を演じた少年は、撮影が始まった当時のことは覚えておらず

12~13歳頃になって演技を意識するようになったそうです

姉を演じたのは監督の実娘で、さすがに途中で

「私の役、死んじゃだめ?」と監督に頼んだそうです(笑)

なんとか撮影終了まで頑張りました

 

母親の離婚、引越、再婚によるDV、また引っ越しと

そのことに振り回される姉弟の物語

でもこれは子どもたちの成長記録というより

親が親として成長して、子どもが大学に進学するまでの

責任と役目を果たし終えるまでの話なんですね

なので若い人からしたら、なんて身勝手な大人にしか

見えない内容なんですけど(笑)

 

ときどきグサッとくる、いいセリフや

なるほどな、と思うアドバイスもあって

(ただし100%正しいとは言えない 笑)

ラストはハッピーエンド、ほっこりするものがありました

お爺ちゃんからの誕生日のプレゼントがライフルだったり

ティーンがお酒を飲んだりマリファナを喫っているところは

さすがにお国柄や(パーティ)文化の違いを感じましたけど

 

6歳になるメイソンJr.(エラー・コルトレーン

ママのオリヴィア(パトリシア・アークエット)と

姉のサマンサ(ローレライ・リンクレイター)と3人暮らし

ママが新しい彼氏と別れてしまいまい

実家のあるヒューストンに帰り

おばあちゃんの助けを借りて大学に通う決意をします

そこにアラスカへ行っていたバンドマンのパパ

メイソン(イーサン・ホーク)が1年半ぶりに子どもたちに会いに来ます

メイソンは子煩悩でやさしい性格ですが

夢追い人でお金もなく、家庭には向かない人間

帰宅したママと顔を合わせる喧嘩になり、怒って帰ってしまいます

間もなくしてママは大学教授のビルと再婚

ビルミンディとランディというふたりの子持ちでしたが

ビルの子どもたちとも、すぐに意気投合(子どもの立場でお互い苦労しているのね)

新しい家族として、うまくやっていけるように思われましたが

ビルはおを飲むと豹変するんですね、やたら口うるさくなる

やがて常に酒を飲むようになり、ついにはママに暴力を振るうようになります

ママは友人のキャロルに協力してもらい

メイソンとサマンサを連れビルから逃げることにします

ミンディとランディを心配するメイソンに

実子でないため連れ去る権利がない、誘拐で逮捕されると説明します

サマンサが15歳になり彼氏ができると

パパはいかにコンドームが必要かを娘に訴えます(ちょっとしつこい)

その頃メイソンにも好きな女の子が出来て、パパとキャンプに出かけて恋バナ

パパが言うには「女をモノにしたい時は 質問攻めにすること」

そして「出た答えを熱心に聞くこと」らしい(笑)

 

さらにママにテキサスの大学講師の仕事が決まり

また引っ越すことになることを打ち明けると

「どこへでも会いに行くから」と励ますパパ

テキサスでママは新しい恋人で元兵士のジムと暮らすようになり

中古ですが家も購入します(そのため修理費で金欠になり、ジムとも結局別れる)

 

パパもアニーという若い女性と再婚し、赤ちゃんが誕生

アニーと出会ってから落ち着き、真面目に働くようになったパパ

でもメイソンが16歳になったらプレゼントすると約束していた愛車を

手放したことにメイソンは傷つきます

(約束を忘れ、ファミリーカーを買ってしまう)

高校生になったメイソンは勉強より写真にのめりこんで行きます

こういうときの理解ある先生のさりげない一言って

学生にとって将来を左右する影響することがありますね

メイソンはちゃんと授業を受けるようになり(笑)

先生のアドバイスの通り、アート系の写真で才能が目覚めます

パーティーで知り合ったシーナという恋人もでき

ふたりはテキサス大学へ進学したサマンサのところへ遊びに行きます

(メイソンもサマンサと同じ大学への進学を考えている)

サマンサのアパートで(サマンサは彼氏のところで不在)

ベッドを共にしたふたりでしたが(しかもサマンサのルームメイトと遭遇)

シーナにラクロス選手の新しい彼氏ができ

写真コンクールでは銀メダルを獲得したものの

ショックから立ち直れないメイソン

 

それでも大学が決まり、無事に卒業式の日を迎えます

ママは自宅でメイソンのため卒業パーティーを開き

おばあちゃんに、パパとアニーもやってきます

ふたりの子どもを立派に育ててくれたと、ママに感謝の言葉を述べるパパ

その夜、メイソンはパパとパパの友人のジミーのライブへ行

シーナに失恋したことを打ち明けます

(父親の精神年齢が低いのが、たまには役に立つ)

 

子どもたちが巣立つことになり

家を売り、小さなアパートに引っ越すことにしたママ

メイソンサマンサにも自分の荷物を整理

処分するかガレージセールに出すよう伝えます

そして「これからは自由だ」と言っておきながら

「人生最悪の日だ」と泣き出してしまう

「人生はもっと長いと思っていた」

「結婚して 出産して 離婚して ふたりの子どもたちが大学生になった」

子どもたちのためだけに頑張ってきたのに

「これから私に何があるというの もう私の葬式しかない」

でも食事に行ったレストランのオーナーに声を掛けられたことで救われます

移民の修理工だった彼は、かってオリヴィアに「勉強しなさい」と叱咤され

英語を学び、学校に通ったことで出世できたと言うのです

私のしてきたことは無駄じゃなかった

家を出て大学の寮へ入ったメイソンはルームメイトのダルトン

彼女のバーブと友達のニコールとキャンプ場にハイキングに行くので

一緒にどうかと誘われます

そこは昔パパとキャンプへ来た場所でした

素朴で素敵な女性のニコールは、勉学の傍らタップダンスを教えているといいます
タップダンスを始めた理由は「流行っていないから」(笑)
さらに「どうしてみんな 一瞬を逃すな って言うの」
「私はなぜだか逆に考えちゃう 一瞬は私たちを逃さない」

 

その言葉に共感したメイソンは

「分かるよ 時間は途切れない」

「一瞬というのは 常に今ある時間のことだ」と答えます

それから遠くを見つめると、メイソンは今までにない幸せを感じたのでした

メイソンがここまで素直に育ったのは

たとえ離婚しても、失敗だらけの人生でも

両親が揺るがない愛情を子どもたちに注いできたからでしょう

 

そして子どもが幸せになることこそが

何よりの親孝行なのです

 

 

【解説】映画.COMより

ビフォア・ミッドナイト」のリチャード・リンクレイター監督が、ひとりの少年の6歳から18歳までの成長と家族の軌跡を、実際に12年をかけて撮影したドラマ。主人公の少年メイソンを演じるエラー・コルトレーンを筆頭に、母親役のパトリシア・アークエット、父親役のイーサン・ホーク、姉役のローレライ・リンクレーターの4人の俳優が、12年間同じ役を演じ続けて完成された。第87回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞ほか計6部門で候補に挙がり、アークエットが助演女優賞を受賞した。米テキサス州に住む6歳の少年メイソンは、キャリアアップのために大学に入学した母に伴われてヒューストンに転居し、その地で多感な思春期を過ごす。アラスカから戻って来た父との再会や母の再婚、義父の暴力、初恋などを経験し、大人になっていくメイソンは、やがてアート写真家という将来の夢を見つけ、母親のもとを巣立つ。12年という歳月の中で、母は大学教員になり、ミュージシャンを目指していた父も就職し、再婚して新たな子が生まれるなど、家族にも変化が生まれていた。

2014年製作/165分/PG12/アメリ
原題:Boyhood
配給:東宝東和
劇場公開日:2014年11月14日