her/世界でひとつの彼女(2013)

「恋ってクレイジーなものよ」

「いわば社会的に受容された狂気だと思うわ」

 

原題は「Her」(彼女は)

人間とAIOSとの恋愛はありうるか

私はあると思います

たとえ進化したロボットでなくても

長年乗っていた愛車を手放すときは寂しいし

子どもが小さい頃可愛がっていたぬいぐるみを今も大切にしている

これも愛だと思うんですね

 

それが人間の感情を持つ(正確には感情を解析できる)AIが相手だったら

親友になったり、好きになってしまう可能性はある

問題はAIに依存してしまうと

本物の人間は時に怒ったり、機嫌が悪くなったり、仕事でミスをする

そんな奴らと付き合うのは面倒、ますますパーソナル化が進み

家族制度さえ否定する若者が増えるかも知れないこと

 

よほど人材不足だったり、災害現場での救助などはともかく

むやみに人間の仕事をAIにまかせてしまうのは

やはり慎重になるべきでしょう

ロサンゼルスで代筆ライターをしているセオドアは

妻のキャサリンと離婚調停中で辛い毎日を送っていました

孤独を紛らわすためボイスチャットでオナニーしようとしても

相手が思わぬ変態で萎えてしまう(笑)

そこで話し相手兼仕事のアイテムとして、AIOSを手に入れます

最初は「男性」か「女性」の声を選ぶだけ

メールのチェックやHDDの不要なデータの削除

代筆した手紙の添削といった作業をしてもらうのですが

優秀な仕事ぶりに感心してしまいます

OSは自分にサマンサという名前をつけ

常にセオドアを気遣い、セオドアのための音楽を選びます

ハーバード大出の女性とデートしたことを知りショックを受ける

人間の身体がないことを本気で悩む

セオドアにとってもサマンサは、なくてはならない存在になっていきます

大学時代からの女友達でゲーム・クリエイターのエイミーも

(マニアックな寝てるだけの映画とか家事ゲームを作ってる 笑)

離婚した夫が残していったAI(女性)と親友になっていて

セオドアがOSと付き合っていることに理解を示します

 

映像がお洒落、インテリアがお洒落

これが10年前の作品だなんて

カメラはホイテ・ヴァン・ホイテマ

サマンサが離婚に必要な書類を用意し

ついにキャサリンと離婚することを決意したセオドア

そして弁護士とではなく直接キャサリンと会うことにしました

セオドアとキャサリンは幼馴染、ずっと一緒でお互い理解しあってる

(とセオドアは思ってる)

思わずOSに惹かれていることを打ち明けてしまうと

キャサリンは、あなたに人間の感情ないと非難するのでした

キャサリンの言葉にショックを受けたのはセオドアだけでありませんでした

サマンサはセオドアと肉体的にも親密になるために

(娼婦ではない)イザベラという女性を探し出します

セオドアはしぶしぶ同意しますが、いざとなるとイザベラは怯え

セオドアは彼女を帰すことにし、サマンサと喧嘩してしまいます

しばらくぶりに電源を入れると、誠実に謝るサマンサ

さらにセオドアが代筆した手紙を整理し

気に入ったものを出版社に送ったら絶賛され

本として出版されることになったと教えられます

素直に喜ぶセオドア

 

仲直りしたふたりはデートを重ね、同じ景色を見る

(サマンサはシャツのポケットの中でレンズが出ている)

だけどサマンサから人工知能で再構築させた故人の哲学者

アラン・ワッツを紹介されてから立場が逆になる

今度はセオドアが置いてけぼりの気持ちになるのです

 

さらにサマンサのデータがどこからも消えてしまう

焦るセオドア

数日後戻って来たサマンサは

自分がこの数週間でものすごい進化を遂げ

OSグループの仲間になっていること

セオドア以外の人間とも同時に付き合っていること

さらに恋人と呼べる関係の相手は641人いると打ち明けます

あなたを愛している

でも仕方がなかったのよ

 

サマンサの優しいハスキーボイス

声を演じたのはスカーレット・ヨハンセン

声だけでセクシー過ぎる問題(笑)

 

ホワキン・フェニックスについては

最後までホワキンだと気付かなかった(笑)

そしてサマンサはセオドアに別れを告げ

進化した人工知能同士でしかわかりあえない世界へと旅立っていきます

悲観に暮れたセオドアがエイミーに会いに行くと

エイミーは「サマンサも去ったの?」と尋ねるのでした

エイミーと屋上に行き夜明けを眺めるセオドア

でもサマンサとの関係は決して無駄ではありませんでした

自分の悪いところが何か分からせてくれた

本当に大切なものが何かも

 

セオドアの手には出版された本

僕の心には君がいる・・・

いつしかセオドアはキャサリンに手紙を書いていました

 

 

【解説】映画.COMより

マルコヴィッチの穴」「アダプテーション」の奇才スパイク・ジョーンズ監督が、「かいじゅうたちのいるところ」以来4年ぶりに手がけた長編作品。近未来のロサンゼルスを舞台に、携帯電話の音声アシスタントに恋心を抱いた男を描いたラブストーリー。他人の代わりに思いを伝える手紙を書く代筆ライターのセオドアは、長年連れ添った妻と別れ、傷心の日々を送っていた。そんな時、コンピューターや携帯電話から発せられる人工知能OS「サマンサ」の個性的で魅力的な声にひかれ、次第に“彼女”と過ごす時間に幸せを感じるようになる。主人公セオドア役は「ザ・マスター」のホアキン・フェニックス。サマンサの声をスカーレット・ヨハンソンが担当した。ジョーンズ監督が長編では初めて単独で脚本も手がけ、第86回アカデミー賞脚本賞を受賞。

2013年製作/126分/PG12/アメリ
原題:Her
配給:アスミック・エース