「愛がなければそれは無に等しい」聖書のコリント人への手紙の一節
「クレイマー・クレイマー」が注目されますが
この作品もそれらに負けないくらい素晴らしいです
第57回アカデミー賞では主演女優賞と脚本賞を受賞
これがデビュー作というマルコヴィッチも
助演男優賞にノミネートされました
未亡人と失明した青年が黒人の助けを借りながら
成長していくという、心温まる感動作
1930年代、テキサス州
保安官である夫を黒人の拳銃の事故で亡くしたエドナ
この時代、一家の大黒柱を失うということは
収入が途絶え路頭に迷ってしまうということ
エドナもふたりの子どもを抱えて困り果てていました
そんなとき食器を盗んだ黒人の流れ者
モーゼス(ダニー・グローヴァー)を
助けたことがきっかけで、綿花栽培に乗り出します
もうひとり戦争で失明した
青年ウィル(ジョン・マルコヴィッチ)も
下宿人としてエドナの家にやってきます
彼は家族から厄介者扱いされ、最初は心を閉ざしていましたが
次第にエドナともモーゼスとも打ち解けるようになります
美容師をしているエドナの姉
マーガレット(リンゼイ・クローズ)は
夫のウェイン(エド・ハリス)と仲睦まじく暮らしていましたが
やがてそのことはマーガレットにバレてしまいます
信仰、開拓精神の名残り
戦争の後遺症(国境戦争1910–1919だろうか)
綿花栽培、人種差別、ハリケーンの被害
不倫による人間関係の破壊
ヒロインにはそういう偏見があまりなく
とても気丈で親切で頑張りやさんなのです
家のローンを返すため、綿花の収穫競争で
1位になって賞金を獲得する
そんなけなげな彼女のためにモーゼスもウィルもマーガレットも
綿花の収穫を強力します
弱い立場の者同士でも、助け合えば何かを成し遂げられる
彼らは堂々とナンバーワンになります
しかし弱い立場の人間が目立つことをするのが
気に入らない人間も当然出てきます
ウィルに助けられ一命は取り留めましたが
エドナの家を出ていく決心をしました
KKKは怖いですね
普段付き合ったり、教会で一緒の近所の人々が
白い袋をかぶり集団でいきなり襲ってくる・・いいえ
殺しにやってくるのです
殴って、車で引きずり、紐で吊るす
いつしか、家族のような存在になっていたモーゼス
引き止めたいけれど、引き止めれない
エドナは別れを惜しみます
ラストの出て行ったモーゼスや
死んだ夫と黒人の少年も登場しての
カーテンコールのような幕切れは洒落ていましたね
人間の愚かさを、愛で包む
そんな素敵な作品でした
エド・ハリスとエイミー・マディガンがここでの共演がきっかけで
結婚したというのもめでたい話です(笑)
【解説】allcinemaより
30年代のアメリカ南部の厳しい時代背景をバックに、夫を亡くした妻が貧困にもめげずに必死になって家族を守ろうとする姿を追った感動の人間愛ドラマ。時は35年のテキサス。酔っ払いの黒人によって誤って撃ち殺された保安官の妻、エドナ(フィールド)。それまで家計は夫に任せ切りで家に借金がある事すら知らなかった彼女は、銀行から期限までにお金を返さなければ家を売るように言われ、二人の子供を抱えて途方にくれてしまう。そんなある日、物乞いに現れた黒人(グローヴァー)に家の前の畑で綿花を育てればいい金になる事を教えられ、彼を雇って畑仕事を開始する。途中、頑に心を閉ざす盲人の下宿人(マルコヴィッチ)の面倒を見ることになったり、竜巻の被害にあったりと苦難の道を辿るが持ち前の頑張りでなんとか乗り切り、収穫の日を迎えるのだったが……。本作で2度目のアカデミー主演女優賞を獲得したS・フィールドの力強い演技、古き良き時代のカントリーの雰囲気に、決して平坦ではなかった当時の社会事情や人間関係をしっかり融合させた脚本(アカデミー・オリジナル脚本賞受賞)と、その人間愛に満ちた素晴らしい作風が好感を呼ぶ感動作に仕上げている。素朴な田園風景の描写も美しいし、出演者全員の好演(本作が映画デビューにも関わらずアカデミー助演賞にノミネートされたJ・マルコヴィッチ、今や押しも押されもせぬ黒人人気俳優となったD・グローヴァー)も見逃せない。ただ、エドナの姉(クローズ)の夫(ハリス)と女教師(ドレス姿が似合っていないマディガン)の不倫関係のエピソードが本筋に織り込まれているのだが、それが作品を多少緩慢にしてしまった欠点もあるのは確かである(でも私生活ではハリスとマディガンは、本作が縁で撮影中に結婚している)。