AMY エイミー(2015)




「私の音楽は一般ウケしないから売れたらいいと思う時もあるけど
 もし有名になったら対処できなくて頭がおかしくなる」


第88回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞

音楽ドキュメンタリーで、このような大きな賞をとるのは

珍しいのではないでしょうか


ヘロインとアルコールの過剰摂取で亡くなった、27歳伝説のひとり

エイミー・ワインハウスの、鬱と、苦しみと、滅びゆく美しさ




私がエイミーを知ったのは、スペシャルズ(TheSpecials)

「ヘイ・リトル・リッチ・ガール」と

「モンキー・マン」をカヴァーしたのがきっかけ

往年のスペシャルズ・ファンの夫から

「凄い女性シンガーがいる」と教えられたのです


その風貌と、歌唱力は衝撃でした

今の歌姫トップに影響を及ぼしたのも明らかでしょう

レディ・ガガはエイミーを真似しているし

アデルも意識している




ガガもアデルも成功してセレブの仲間入り

でもエイミーは違う


Rehab」(リハブ)のヒットによりメジャーになるものの

楽物中毒とアルコール依存症のため、ますます闇に入り込む

BackTo Black」(バック・トゥ・ブラック)

日本語訳詞は「私は暗闇にいたけれども」


町山さんの解説によると

英語のスラングでブラック=ヘロイン中毒のことで

エイミーが恋をし、結婚したブレイクという男に宛てた歌

だけどブレイクはエイミーにヘロインを教え

女遊びばかりする最低の男

金目当ての寄生虫




エイミーも誰とでも寝る女でしたが

ブレイクに夢中でした

その彼が去ってしまう


Kepthis dick wet”の”dick”とは男性のあそこのこと


ブレイクは”ディック”を濡らしたまま、他の女のところに行く

だから私はまたブラック(ヘロイン中毒)に戻る

私がダメになったらいいの
死んだほうがまし
好きになったら負け、私はいつも負け試合



そんな、陰々鬱々で破滅願望の歌詞なのですけれど(笑)
これが何回も繰り返して聞けるような名曲
第50回グラミー賞では6部門でノミネートされ
最優秀新人賞や最優秀楽曲賞など5部門を受賞



しかし薬物やアルコールはますます彼女を蝕み病的に痩せ、錯乱状態
パパラッチに追いかけられ、疲れ切ってしまいます
しかも薬を断ち切るはずの休暇先にまで
父親のミッチが取材班を連れてやってくる



そこでの浮気がブレイクにばれ、ふたりは離婚

エイミーの麻薬依存はますます強くなっていきます


エイミーは孤独だったわけではありません

彼女を思う親友がいて、信頼できるマネージャーもいた

だけどどんな彼らの助けより、ブレイクと父親のいいなり

離れられなかったのです


でもエイミーの人生にも、歌にも、嘘はなかった

だから私たちは彼女の歌声に感動するのかも知れません




「生きていたなら彼女にこういいたい

 生き急ぐな、貴重な存在だ、生き方は人生から学べる

 ・・もし長く生きれば」



2011723日没
正式な死因は今でも不明のままということです



【解説】allcinemaより

 2011723日に27歳の若さで急逝した英国の天才女性シンガー、エイミー・ワインハウスの波乱に富んだ短すぎる生涯を描き、アカデミー長編ドキュメンタリー賞をはじめ数々の映画賞に輝いた音楽ドキュメンタリー。2003年にデビューするや、そのパワフルな歌声が絶賛され、瞬く間にスターの階段を駆け上っていったエイミー。しかし、曲作りのプレッシャーや執拗に追い回すパパラッチの存在、あるいは恋人の影響などから急速にドラッグと酒に溺れていく。本作は、貴重なプライベート映像や関係者へのインタビューを通して、そんなエイミーの知られざる素顔を明らかにするとともに、数々の歌詞に込められた彼女の想いに迫っていく。監督は「アイルトン・セナ ~音速の彼方へ」のアシフ・カパディア。