メランコリック(2018)

メランコリック(melancholic)とは憂鬱

あるいは物思いに沈むさまのこと

 

きっちさんのおススメで鑑賞

東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で監督賞

ドイツのニッポンコネクションで観客賞

ウディネファーイースト映画祭で新人監督賞を受賞

製作費300万という低予算も併せて

大ヒット作「カメラを止めるな」と比べられるようですが

こちらのほうがずっと面白い

特に新社会人になった若者に見てほしいですね

「なぜこんな仕事をしているんだろう」という疑問

職場で頼られているという自信

はじめてボーナスを貰ったときの喜び

上司から同僚のほうが高い評価を受ける悔しさ

彼女の出来た嬉しさ

両親からのやさしさと思いやり

それを「銭湯サイドビジネス」という

ユルイ感じのギャグとユーモアでうまくまとめてる

 

監督はアメリカのドラマ「ブレイキング・バット」を参考にしたそうです

高校の化学の教師が病気の息子の治療費と住宅ローンのため

メタンフェタミンの製造販売のサイドビジネスをはじめると

思いがけない事件に巻き込まれていくという話ですが

近年のドラマの中で最高に出来がいいんですよ

本作もですがNetflixに加入している方はぜひ見てください(笑)

主人公の和彦は東大卒で30歳になるにもかかわらず、フリーター人生

両親はやさしいけれど、当たらず触らずに近い状態

ある夜、母親が誤ってお風呂のお湯を捨ててしまい
近所の銭湯にいくと、高校のクラスメイトだった百合と会い

行くつもりのなかった同窓会に誘われます

和彦が無職と知った百合は

銭湯で従業員を募集しているから

そこで働けば私もたまに会えて嬉しいと言います

 

その気になった和彦が面接に行くと

松本という金髪の男も面接にやって来ました

銭湯のあるじの東はふたりとも採用

さらに小寺という男が働いています

和彦が百合とのデートの帰り

営業が終わってるはずの銭湯に電気が付いていたので

中を覗いてみると小寺が男を殺していました

見られたものは仕方がない、東は小寺は他にも仕事があるので

和彦に血で汚れた風呂場を掃除をするよう頼みます

そして翌日、お金の入った封筒を和彦に渡すのでした

銭湯で殺人って実に理にかなっていますね(笑)

血は洗い流せるし、死体は薪と一緒に燃やせばいい

灰と一緒に処分したら証拠も残らない

臨時収入の入った和彦は百合を高級レストランに誘います

百合は喜んでくれましたが

緊張するから次は居酒屋にしようと笑います

この百合を演じた吉田芽吹ちゃんがめっちゃいい

これを好きにならない男はいない(笑)

 

東が殺人のため銭湯を貸しているのは

ヤクザの田中に多額の借金をしているためでした

その田中が小寺を引き抜くことになったので

代わりの殺し屋に松本を雇うことにしたのですが

偶然同じ日に和彦が面接に来たのです

 

この松本とか、田中と愛人のアンジェラもですが

みんな演技がうまいわけじゃないんですよ

両親役なんて知り合いの素人連れて来たんですかって感じ

ただ本当にいそうなタイプなのが、妙にリアル(笑)

松本ばかりが信頼されているとやっかむ和彦

そこで東は昼のリーダーを和彦

夜(殺し)のリーダーを松本にすることにします

 

しかし小寺が殺され、今度は松本が田中に引き抜かれるかも知れない

和彦と松本は田中を殺す計画を立て東に相談します

すると東も田中を殺して欲しいと頼むのでした

和彦はこの仕事をやるなら、実家通いや恋人は弱みになる

家族はしょうがないにしても、彼女と別れられないなら

抜けたほうがいいと松本に言われ、百合と別れる決心をします

だんだん松本くんがかっこよく見えてくる(笑)

彼女の別れ際の立ち振る舞いも、潔くていいね

田中に置いて行かれて、泣いてしまうアンジェラとか

この監督、女性をよく研究している

人間観察が凄すぎる(笑)

田中の家に向かった松本は

東の「若い子たちが怖い」という心変わりで撃たれてしまいます

駆け付けた和彦が東と田中を撃ち、松本を実家に運ぶと

撃たれた松本を見たお父さん

「お風呂屋さんの仕事も結構危ないんですね」って(笑)

お母さんは普通に手料理ふるまってるし(笑)

和彦は同窓会の人気者、田村に銭湯の経営を引き継ぎかたを仰ぎに行きます

そしていつも通り番台に立つと、百合がやって来ました

 

和彦は心の中で呟きます

「人生には何度か、一生これが続けばいいのにっていう瞬間が訪れる」

実際に主演のおふたりも2020年にご結婚されたそうです

これが本当のハッピーエンド

良かったですね

祝福も込めてお気に入りにさせていただきます

 

 

【解説】映画.COMより

深夜に殺人が行われる銭湯を舞台に、ひょんなことから人生が大きく動き出してしまう人々の人間模様を、サプライズ満載の変幻自在なストーリー展開で描いたサスペンスコメディ。名門大学を卒業後、アルバイトを転々とし、うだつの上がらない生活を送っていた和彦。ある日、偶然訪れた銭湯で高校時代の同級生・百合と再会した彼は、そこで一緒に働かせてもらうことに。やがて和彦は、その銭湯が閉店後の深夜に浴場を「人を殺す場所」として貸し出していることを知る。さらに、同僚の松本が殺し屋であることが明らかになり……。新人監督・田中征爾の長編デビュー作で、第31回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門で監督賞を受賞(武正晴監督の「銃」と同時受賞)。和彦役の皆川暢二、松本役の磯崎義知、田中監督による映画製作ユニット「One Goose」の映画製作第1弾作品。

2018年製作/114分/G/日本
配給:アップリンク、神宮前プロデュース、One Goose