母べえ(2007)

 
 
女性でこれくらいの年齢の子がいるということは
戦前という時代背景を考えると
私より年下なのではないかと思いますが・・・
 
いくら綺麗で品があってもやはり無理感はありましたね
サユリストの方が見たらまた違うのでしょうけれど(笑)
 
日中戦争中、反戦思想のため投獄されてしまった父べえ
母べえはふたりの娘を抱え臨時教師をしながら
そして父べえの教え子である山ちゃんの助けを借りながら
動乱の時代の中夫の帰りを待ち続けます
 
私は「正義」とか「真実」は本当に正しいことなのかと思うことがあります
自分が思う、間違っていることを許せないのはいいことなのでしょうか
 
誰だって戦争はしたくない、平和がいいと思っている
だけど家族を守るため、食べていくために
みんなが真実を心の中に留めて暮らしているだけなのです
 
なのに、自分は間違っていない
正しいと信念を曲げない父べえ
 
多くの人は警察や、恩師や、母べえの父親に対して
嫌悪感を抱くのでしょう
でも私は違いました
 
正しい思想を貫くよりも
今は家族を大切にしなさいと、そう言ってるだけなのです
自分の考えより、まずは妻や子どもを守るべきだと伝えているのです
みんな、我慢をしているのだよ
 
悪いたとえですけれど
もし女性に「ブスでデブで見るに堪えないな」
なんて言ったらどうでしょう
やはり「正しいことを言った」「俺は間違っていない」と
言い切るのでしょうか
 
正直が人を傷つける、苦しめるときもあるのです
言葉に出さなくてもいいときもあるのです
 
そして、まだ女ざかりで子どもを抱えた女性が
たったひとりで苦労しているとなると男性も寄ってくるでしょう
人生経験を積んだ人間はそれをわかってる
ヒロインを思ってのこと、意地悪ではありません
 
山ちゃんは自分の恩師の妻であることからその欲望を抑えた
寅さんを思わせる、山田監督らしいプラトニック
山ちゃんこそが、実は「男」だったのです
 
やがて、時代は変わり女性も自立しました
そして「父べえに会いたい」と言い残す母べえ
母べえにとっては、自らを犠牲にするほど
父べいは理想の人だったのでしょう
 
小百合さんと同じく品のいい作品でしたね
でも、悪役的存在の言い分にも耳を傾ける価値はあると思います
 

 
【解説】allcinemaより
 黒澤明作品のスクリプターとして知られる野上照代の自伝的小説『父へのレクイエム』(改題『母べえ』)を、「男はつらいよ」「武士の一分」の山田洋次監督が吉永小百合を主演に迎えて映画化した感動の反戦ヒューマン・ドラマ。ある日突然夫が治安維持法で投獄されてしまうという苦境の中で、夫を信じ続け、つつましくも気高き信念を失わず、残された2人の娘を守るため懸命に生きた一人の女性の姿を描く。
 昭和15年の東京。野上佳代は、愛する夫・滋と2人の娘、長女の初子と次女の照美と共に、つましいながらも幸せな毎日を送っていた。互いに“父(とう)べえ”“母(かあ)べえ”“初べえ”“照べえ”と呼び合い、笑いの絶えない野上家だったが、ある日、突然の悲劇が一家を襲う。文学者である滋が、反戦を唱えたことを理由に特高刑事に逮捕されてしまったのだ。穏やかだった生活は一変し、不安と悲しみを募らせる母と娘たち。そんな中、滋のかつての教え子・山崎や滋の妹・久子、放埒で型破りな叔父・仙吉らが一家のもとに駆けつけ、佳代と娘たちを優しく親身に支えていく。