本日休診(1952)




まだ空襲の焼け跡が残る、戦後まもない東京
舟暮らしに電車住宅、当時の暮らしがわかります

普通の人に、金持ち
警察官、泥棒、商売女
戦争のため精神がおかしくなってしまった青年
いろいろな人間が入り混じって生活しています
そんな人々を相手にしている老町医者

誰にでもやさしく、時には厳しく
病気やケガを治すだけではなく
人生についても「先生」のような存在

戦後再出発してから1年の記念日
先生は「本日休診」の札を掲げます
この機会にゆっくり昼寝でもしようと思いました

だけれどすぐに、息子が発作を起こしたと言う婆や
警察とやってきた暴漢に襲われた娘
指をつめるため麻酔を打ってくれとヤクザ
盲腸患者がかつぎこまれ
ついにはお産があるという
(このころは男女の病室が一緒だったのですね)
次々と患者がやってきてしまう

とてもテンポがよく
次から次へと珍事が起こっていくので飽きませんね
貧しくても、おおらかな時代
結局、今日も先生は休めませんでした(笑)

滑稽さの中にある残酷を絶妙なバランスで
人情喜劇としてうまく完成させていると思います
そして戦後からの復興の願いを込めたラストシーン

記録映画としても貴重でしょう
知らざれる傑作なのではないでしょうか



【作品情報】MovieWalkerより
 製作は「麦秋」の山本武。井伏鱒二の原作から「わが恋は花の如く」の斎藤良輔が脚色し、「自由学校(1951 渋谷実)」の渋谷実が監督に当っている。撮影は「命美わし」の長岡博之が担当。出演者の主なものは、「夢と知りせば」の柳永二郎「母化粧」の増田順二、「唄くらべ 青春三銃士」の鶴田浩二、「陽気な渡り鳥」の淡島千景、「この春初恋あり」の佐田啓二、「とんかつ大将」の角梨枝子、「稲妻草紙」の三國連太郎、「旗本退屈男 江戸城罷り通る」の岸恵子などの他に、田村秋子、中村伸郎、十朱久雄、長岡輝子多々良純などの新劇陣や新派の市川紅梅などが加わっている。