おとうと(2009)

 
 
 
「どんな家にも、ああいうのがひとりやふたり、いるんだよな」
 
います。私にも。
あるクレジット会社から身に覚えのない督促が来たのです。
勝手に保証人の名前を書いて三文判を押したようです。
金融機関では支払いが停滞すると借金した本人ではなく
保証人に支払いを請求できる権利があります。
 
これが他人によるものなら警察にも届けるし、訴えもおこすでしょう。
しかし身内なのです。
「迷惑かけないから」「必ず返すから」
 
その言葉に、全額ではないにしても
少しは誠意を見せてくれるのではないかと
はじめは思いました。
 
でもゼロでした。
1円も返してくれたことはありません。
 
そんな経験があるせいで
非常にリアリティありましたね。
 
口先だけのお調子者。
定職にも就けない。
お酒で酔い自分をごまかす。
 
そんな弟を心配して、ついつい助けてしまう姉。
世間でははみ出し者、でも彼女にとっては可愛いのです。
 
作品では姉弟でしたが
こういう男の母親はまさしくこの通り。
甘くなってしまう、お金を渡してしまう。
息子がしっかり生活するまでは死ねない・・そう思っています
一生治ることはないのに。
 
でも信じられないことに、一番苦しんでいるのは
好き勝手に生き、人を裏切ってきたこの男なのです。
どうしてうまくいかないのだろう・・
まるで自分は悲劇の主人公。
救けて、救けて・・・
 
「ほら、あの人も呼んでやったらいいじゃないの」
少しボケてしまったおばあちゃんは、孫の再婚前にそう言います。
嫁の弟を決して好きにはなれなかった
だけど彼の寂しさには気づいていたのでしょう。
 
自分もずっとのけ者にされていて
寂しいと感じていたから。
 
ほんのチョイ役で蛾次郎さんや仲居くんが登場する
山田監督らしいサービスはさすがに活きていますね。
 
でもあまりにも身近な話すぎて、イライラしっぱなし。
感動する余裕は全くございませんでした。笑
 

 
【解説】allcinemaより
男はつらいよ」シリーズ、「たそがれ清兵衛」の名匠・山田洋次監督の10年ぶりの現代劇となる家族の絆の物語。しっかり者の姉と問題ばかりを起こしてきた愚かな弟が繰り広げる再会と別れを、笑いと涙を織り交ぜ切なくも感動的に綴る。主演は「母べえ」に続いての山田監督作品出演となる吉永小百合と「ディア・ドクター」の笑福亭鶴瓶。共演に蒼井優加瀬亮
 東京で薬局を営む高野吟子は、夫を早くに亡くし、女手ひとつで一人娘の小春を育ててきた。その小春もエリート医師との結婚が決まり、喜びもひとしお。ところが式の当日、音信不通だった吟子の弟、鉄郎が突然羽織袴姿で現われた。酒癖が悪く、たびたび問題を起こしてきた家族の鼻つまみ者。周囲の心配をよそに、またしても酒をあおって大暴れ、大事な披露宴を台無しにしてしまう。誰もが激怒する中、それでも鉄郎をかばってしまう吟子だったが