わが命つきるとも(1966)

 
 
これはキリスト教でないし
宗教にそれほど信仰心をもたない私にとって
感情移入できるような作品ではありません。
 
しかし違う視点から見てみると
とても感慨深いものがありました。
 
今、この時だから
深く考えてしまいます。
 
6人の王妃と結婚したヘンリー八世。
彼は2番目の王妃アン・プーリンと結婚するために
最初の王妃キャサリンと離婚しようとしています。
そのためにはローマ法王の赦しが必要でした。
 
ウォルジー枢機卿は下院議員のトマス・モアに
国王の離婚をローマ法王に頼んでほしいと言います。
トマス・モアは誠実で国王からも国民からも信頼されている人物。
そして敬虔なカトリック信者でした。
やがてトマス・モアは大法官(司法省の一番偉い人)になります。
 
しかし欲に駆られた者たちに陥れられ
ロンドン塔に幽閉されてしまいます。
国王は自分の方針に従ってくれる人物を昇進させ
反対する者は迫害していったのです。
 
ついに国王は自分の権力ひとつでローマ教会から独立し
国の宗教を変えてしまいます。
 
当時の宗教の教えは国法も含めていたそうです。
断固として神への誓いを、法律を守ろうとしたトマス・モア。
信念を貫いた彼は反逆罪として斬首されます。
 
 
今、日本でも新しい法律が作られようとしています。
その法律が本当に必要なのか、そうでないのか。
それは権力を持っている者だけが決めるものではなく
国民はもちろん、いろいろな分野の専門家の意見を
もっと真剣に取り入れるべきではないのでしょうか。
 
私が必要だと思うのは武力よりも外交能力だと思います。
世界を動かしているのは人間なのだから。
 
 
第39回(1967)アカデミー賞
作品、監督、主演男優、脚色、撮影、衣装デザイン賞受賞。
名作には時代を超えて訴えるものがあります。
 
この作品を政治家に見てもらいたい
きっとあなたもそう思うでしょう。
 

 
【解説】フレッド・ジンネマン自伝より
 興行的見地からすれば全く期待できないプロジェクトだった。
不利な点が多くあった。誰もコスチューム映画なんか見たいと思わない。
アクションがほとんどなく、バイオレンスは言うまでもない。セックスもなければあからさまなラブストーリーもない。最も重要なことはスターがいない。実際アメリカの大衆が聞いたことのある俳優はほとんどいなかった。