緑の光線(1985)

 

緑の光線とは、1882年に刊行されたジュール・ヴェルヌの恋愛小説のこと

水平線に太陽が沈む一瞬に発する緑の光線グリーンフラッシュ
見ると自分と好きな人とが通じ、幸福になれるというのです
 
ヒロインは、こだわりがあって、頑固で、協調性がなく
おまけに愚痴っぽい"めんどくさい"
しかも男性の理想は高く妥協を許しません
 
こんな我儘なのに、突然すごく寂しくなる
 
 
どうして私だけ、バカンスに行く相手もいないひとりぽっちなの
まだ若いのに人生に行き詰まり、最悪の日々
 
こういう女性は意外と多いですよね
これ私のドキュメンタリー映画ですか?
と思う女性もきっといるはず(笑)
 

7月のパリ、デルフィーヌはバカンスに行く予定を立てていましたが
友人にドタキャンされてしまいます
落ち込むデルフィーヌに家族はアイルランドに一緒に行かないかと誘いますが
バカンスを過ごす相手が家族しかいないのは気に入らない
 
見かねた友人の一人がシェルブールへ誘いますが
食事のとき肉が食べられないとか、海に行っても泳がないとか、わがまま
友人たちが親切にしてくれるほど虚しくなってしまう
そして突然パリに帰ると言い出します
 

今度は元カレに会いに山へとやってきたデルフィーヌ
ひとりで山を登り、下山した後、また突然気が変わり
パリへと戻ってしまいます
 
散歩中偶然会った昔の友人一人でバカンスをしていると言うと
彼女は海の近くに義理の兄の空き家があるから
そこへ行ったら提案してくれます
 

結局その家を借り、海岸沿いを散歩していると、読書会の老人たち
ジュール・ヴェルヌの「緑の光線」について語っていました
水平線へと太陽が沈む瞬間に一瞬だけ現れる「緑の光線
それは美し幸運の印で、その光を見ると好きな人と気持ちが通じるという

デルフィーヌはこれだ!と
自分が求めていたのはこれだ、と閃きます
 

翌日、海へ行ったデルフィーヌは陽気なスウェーデン女性と意気投合しました
彼女はひとりのバカンスこそ最高じゃない
彼氏も長く付き合うと束縛されて自由がない
バカンスで男を狩るのよ、と言います
だけど彼女のようにアバンチュールを楽しめない
 
結局、またパリに帰ることに(笑)
 

そんな駅の待合室家具職人だと言う男性が話しかけてきました
何か運命的な出会いを感じたデルフィーヌは
彼に仕事先の町に連れて行って欲しいと頼みます

そして港沿いのレストランで食事をし、海へ向かうと
そこには偶然にも緑の光線」と言う名前の店がありました
ふたりは水平線を見つめ、「緑の光線が現れるのを待つのです
 

見る側を苛つかせるヒロインを、冷静に
そして温かく撮影しています
お洋服やインテリアはさすがおフランス、センスがいいですね
さすが恋愛映画の名匠と言われるだけあって、女心を知り尽くしている(笑)
 

1000%、女性向けですが
男性の感想も聞いてみたいものです
 
ヴェネツィア国際映画祭、金獅子賞受賞作品
 

 
 

【解説】allcinemaより
 
独りぼっちの夏休みを何とか実りあるものにしようとする若い女性の旅を、優しい南仏の光に包まれる幸福を観る者にも味わわせながら、おっとりと軽妙に語っていくロメールの技に感服してしまう、最良のバカンス映画。恋に恋する彼女の理想は高く、昔からの男友達も、新たに現われた男性もなんとなく拒んでしまう。この優柔不断さを“あるある”と頷いてしまう向きも多いのではなかろうか。題名の“緑の光線”とは日没の際、一瞬見えると言われる光のこと。もちろん、それを見た者は幸福を得られると言いならわされており、主人公は愛する人と共にその光を見るのを夢見ているのだが……。女性スタッフ3名のみ(そこに出演者たちが手伝いで加わる)の小編成、16mm撮影という身軽さで、こんなに奥行きのある作品を飄々と作ってしまうロメールのこの映画作法にこそ、ヌーヴェル・ヴァーグの精神が原型のまま息づいている。