いとこ同志(1959)



アプローチは「狂った果実(1956)とほぼ同じ
出来栄えのほうは、正直「狂った果実」のほうが上でしょう


いとこのポール(ジャン=クロード・ブリアリ)のアパートに

大学に通うため田舎からやってきたシャルル(ジェラール・ブラン)


ポールの傍にはクロヴィス(クロード・セルヴァル)という男がいて
遊び人であるポールの揉め事(女の妊娠)などの
解決の手伝いもしているようです



ポールが貴族の御曹司というのは時代的に無理がありますが
それくらいの身分と金持ちであるのは間違いないでしょう

尊大で、自由奔放で、女を見下す、ルートヴィヒ二世気取り


一方のシャルルは真面目で勉強家だけど自分に自信がないマザコン

そんなシャルルがクラブで出会った美女
フローランス(ジュリエット・メニエル)に一目惚れ
フローランスも純情なシャルルに惹かれ、愛を知りたいと感じます



シャルルに嫉妬したポールはクロヴィスのチカラを狩りて
フローランスを奪い、同棲まで始めてしまいます


「順番を待つよ」

フローランスへの思いを断ち切るため猛勉強に励むシャルル
なのに遊んでばかりのポールが(カンニングで)試験に合格
あんなに勉強したシャルルのほうが落ちてしまうのです



現実でも真面目な努力家が挫折した時のほうが
立ち直ることが難しいでしょう
母親の期待に応えることもできなかった
パリに来て、いいことなんてひとつもなかった


学生証を川に捨ててしまう
ポールの銃に弾を込め、ロシアンルーレットを始める
次の朝、弾が入っているとは知らず
シャルルに向かってふざけて銃の引き金を引いてしまうポール

ずっと勝者だったポールも、これからの人生は殺人者という

十字架を背負って生きいくことになるのでしょうか




項垂れる先で鳴り響く音楽は終わり、レコードの針が離れる
玄関のベルが鳴ったところでエンディング
皮肉にも、美しいラストです
カメラはヌーヴェルヴァーグの映画作品を支えたアンリ・ドカエ


私はこのあとドアを開けて現れるのは

試験に落ちて自殺とみせかけるか
強盗に襲われたと思わせるか
警察に賄賂を掴ませるか

ここでも後始末を引き受けることになる
クロヴィスではないかと思うのです



【解説】allcinemaより

パリに受験のためにやってきた真面目な青年シャルル。彼はいとこのポールのアパートに同居することになった。熱心に勉強に勤しむシャルルの前で、ポールは女を引っ張り込み、遊びにばかり夢中になっている。そして、万事に要領のいいポールは、シャルルをしり目に試験にさえもあっさり合格してしまう。そんな理不尽さに、シャルルは次第にいらだちを募らせていった……。C・シャブロルが初監督作「美しきセルジュ」に続いて描く奇妙な青春映画で、その鮮烈なイメージと斬新な描写はヌーヴェル・ヴァーグの存在を世に知らしめた