再会の街で(2007)





原題ReignOver Me
作中にも流れるザ・フーの「Love, Reigno'er Me愛が僕を支配する)
(日本語タイトルは“愛の支配”)のこと
センスがいいですね、ストーリーともとてもあっています

音楽も映像もいい
ただしあの改造原付スクーターは、本当は違法だということです(笑)

アメリカにとって9.11の衝撃というのは
家族を失った遺族はもちろん、そうでない人にとっても
特別なものなのだということが伝わりました





ニューヨークで歯科医をしているアラン(ドン・チードル)は
ある日大学時代のルームメイト
チャーリー(アダム・サンドラー)と偶然再会します
彼は9.11で妻子を失い、心を閉ざし、社会不適応者となっていました
チャーリーを社会復帰させようとするアランは
彼を精神科医に引き合わせようとします

アプローチはテリー・ギリアム監督の
「フィッシャーキング」(1991)とほぼ同じ
精神科医リヴ・タイラー)が合コンまがいのセッテイングまで似ています

完成度としては「フィッシャーキング」のほうが高いですが
こちらの正気を失うか失わないか寸前の
アダム・サンドラーの演技には説得力があり
共感するところは大いにありました





悲劇ではなく、悲劇の後の物語
家族を全て亡くして立ち直れる人ははたしてどれくらいいるでしょう
その哀しみの深さを共有できるなんて、誰が決めたのでしょう
チャーリーはヘッドフォンを常に携帯し、ゲームと映画と
そして台所リフォームをして現実逃避の日々を送っています

「写真も思い出の品も必要ない」
何も考えず、ただ独りでいたい、生きたい
私も彼の立場なら同じだと思います

アランも同じだったと思います
チャーリーの心を開かせようとすることで
実は自分もまわりに心を閉ざしていたことに気付いたのです

そして、辛い過去を告白したからといって
人は晴れやかな気持ちに必ずしもなるとは限らない
そのことを知ります

自分が撃たれたいために、警察官に空砲の銃を向ける
そのことでチャーリーは裁判にかけられます





9・11の遺族を警官が殴るのはマズイ」というセリフから
遺族がいかに同情の対象かがわかります
犯罪を犯しても、まるで腫れ物扱い

チャーリーの妻の両親であるティンプル夫妻の弁護士が
家族の写真を見せてチャーリーを苦しめるのは

見ていて辛かったですね
彼の精神は異常ではなく、私から見たら当たり前です

「シェパードがプードルに見える」のはさすがにマズいですが(笑)

ドナルド・サザーランドはこの作品でもチョイ役で登場
そして強烈なインパクトを残していきます(笑)





涙腺刺激ポイントは、裁判が終わって
チャーリーが何度も何度も往復してから
「お互いが必要なんだ」とティンプル夫妻に話しかけるシーン
そうです、誰もが苦しみを抱えているのです

リブ・タイラーのバカっぽさ残念
愛の予感を示すラストは賛否両論わかれそうですが
実際リアルに哀しみから回復する方法は
やはり新たな出会いと、愛しかないのでしょう

チャーリーを支えるアランの姿に友情を感じものの
大学時代のエピソードがほぼ無いため

二人の絆についてはわかりませんでした

でも見終わったあとはやさしい気持ちになれることは確かですし
夜の街をヘッドフォンで音楽を聴きながら散歩したくなるでしょう




愛の支配「Love, Reigno'er Me


愛だけが雨を降らせることができる
海岸が海にキスされるように
愛だけが雨を降らせることができる
大地に横たわる恋人たちの汗のように

愛よ、僕を支配して
僕の上に雨を降らせ

愛だけが、雨をもたらすことができる
その雨で、お前は天に向かって叫ぶのだ
愛だけが、雨をもたらすことができる
その雨は、高い空から落ちる涙のように降る

愛よ、僕を支配して
僕の上に雨を降らせ

乾いた、埃っぽい道で
2人離れて夜を過ごした
家に戻って
雨を乾かさなきゃいけない

眠れなくて、横になり、考える
夜はまだ暑く、インクのように真っ暗
神様、冷たい雨を僕は一口
飲んだほうがいいんです

愛よ、僕を支配して
僕の上に雨を降らせ



愛の支配ウィキペディアより
「愛の支配」(あいのしはい-Love, Reign o'erMe)は、イギリスのロックバンド、ザ・フーの楽曲。作詞・作曲はピート・タウンゼント。1973年のアルバム『四重人格』収録。

ロックオペラ四重人格』のフィナーレを飾るバラード。『四重人格』のストーリーは、主人公のモッズ少年・ジミーの孤独な苦悩を描いた内省的な物語だが、この曲では自殺寸前に追い込まれたジミーが海に小舟を出し、海の真ん中にある岩にたどり着いた時、そこに彼が求めていたものを見つける、という筋書きになっている。タイトルにもある「Lovereign o'erme(愛が俺を支配する)」というフレーズの意味は、作者のタウンゼントによれば「ジミーがばらばらだった彼の人格を一つにまとめ上げた苦痛と歓喜が入り混じった叫び」とのこと。最後にジミーがどうなったのかははっきりと提示されないが(これは『四重人格』を映画化した『さらば青春の光』でも同様である)、タウンゼントは「ジミーが命を絶つかどうかは誰にも決める権利はない、ジミー本人が決めること」としている。
この曲は、元々は1972年に制作されるも未完に終わったロックオペラ『ロック・イズ・デッド~不死身のハードロック』のために作られた曲であり、この曲の他にもこの作品から『四重人格』の方に使用された曲が存在する。アメリカではシングルカットされ、76位にランクインしている。シングルバージョンではイントロとアウトロがアルバムバージョンより短縮されている。



【解説】allcinemaより

9.11テロで妻子を失い心に深い傷を負って殻に閉じこもってしまった男と、彼の大学時代のルームメイトで仕事も家庭も恵まれた生活を送りながら満たされないものを感じていた男、そんな2人がニューヨークの街で偶然に再会し、再び友情を育んでいく中で、少しずつ互いの心を癒やしていく姿を切なく描いた感動ドラマ。主演は「50回目のファースト・キス」のアダム・サンドラーと「ホテル・ルワンダ」のドン・チードル、共演にジェイダ・ピンケット=スミスとリヴ・タイラー。監督は「ママが泣いた日」のマイク・バインダー。
 ニューヨークのマンハッタン。歯科医のアランは、ある日、大学時代のルームメイト、チャーリーを街で見かけ声を掛けるが、彼は気づかずにそのまま去ってしまう。その後、アランは再びチャーリーと遭遇、言葉を交わすが、驚いたことに彼はアランを覚えていなかった。彼は9.11テロで最愛の妻と娘を亡くして以来、すっかり心を閉ざしてしまっていたのだった。そんなチャーリーのことが気がかりでならないアラン。彼自身は歯科医として成功し、美しい妻とかわいい娘2人にも恵まれ、幸せな人生を送っているかに見えたが、実際には公私両面で問題を抱え、苦悩を深めていたのだった。そんな2人は次第に一緒に過ごす時間が多くなり、ニューヨークの街をさまよい昔のように遊び回るようになるのだったが…。