愛すれど哀しく(1971)


 
 
「俺は働きたくないんだ。
 おまえが夜の街に立って稼いでくれ」
 
以前テレビで好きなホストに貢ぐために
風俗の仕事をしている女性の番組を見たことがあります。
働いた金を持ち彼の働いているクラブに行き
高級ウイスキーやシャンペンを注文し何百万と支払うのです。
どうしてそんな男性と付き合うのだろうと
私は不思議でなりませんでした。
だけれど、愛の形にはいろいろな形があるのでしょう。
愛のために犠牲になるという形も。
 
洗濯女ベルタ(オッタヴィア・ピッコロ)はパン職人のブブに夢中
彼と同棲をするために家を出ます。
一方のブブはパン屋の主人に悪態をつき仕事を辞めてしまいます。
そしてベルタに娼婦になれと強要します。
ブブの愛を失いたくないベルタは夜の街角に立つことになります。
 
ある日ベルタはピエロという田舎から出てきたばかりの青年と出会います。
誠実でやさしいピエロはベルタを助けるため
ブブと別れるよう言い、まっとうな仕事につかせようとします。
しかしベルタはブブにお金を貢ぎ続け、ついには梅毒になってしまいます。
 
ベルタが入院してしまったため収入がなくなりお金に困ったブブは
梅毒のベルタに働けと言いいます。
男からうつされたのだから男にうつしてもかまわないと。
自分が腹がすいたからと、病気のベルタの食事までも奪う・・
 
なんと情けなくばかな男なのでしょう。
なのに情けない姿を見れば見るほど
自分しかいないと、助けなければと、いいなりになってしまうベルタ。
 
でもこういう女性って別れても
また同じような男性と付き合うと思います。
こういう女性と付き合ったら
男性もダメ男になっていくような気がします。
 
夜の街に立つ娼婦たち
その化粧にも衣装にもゾッとするものがあります。
それでも男たちは次から次へと買いに来る・・
 
ベルタはやがて棄てられて死ぬでしょう。
彼女にとってそれは本望なのでしょうか・・
だけどそれしか道を見つけられない女なのでしょう、きっと。
 
ただただ純情だった女性が娼婦となって堕ちてゆく物語。
22歳のオッタヴィア・ピッコロが童顔でまだ少女のようです。
主演作を見るのは初めてですが
当時は日本でも人気の女優さんだったのですね。
 
エロティックですが文芸的。
ただ最後まで暗い話なので、鑑賞後の気分はあまりよくなかったかな。
 

 
【解説】allcinemaより
純情な女工のベルタは、ビュビュという男に騙され娼婦となってしまった。そんな彼女の前に、優しく真面目な青年が現れる。二人は愛し合うが、ビュビュのもとから逃げ出すことは出来ない……。20世紀初頭のミラノを舞台に、不運な女性の哀しさを描く。原作はシャルル=ルイ・フィリップの『ビュビュ・ド・モンパルナス』。