歩いても 歩いても(2007)


 
 
地味ですがなかなかの傑作。
 
まるでタイムスリップしたように
子どもの頃そのままの台所、急な階段、居間から出入りできる庭・・
何年経っても変わらない、親が年老いていく以外は。
そんな、ザ・実家ストリー。
 
成長し結婚し家を出た息子や娘が里帰りする
または嫁として夫の生家を訪ねる
どちらの立場として観ても、とても共感するものがあるでしょう。
 
「子ども作らないの?」
 
家族だからこそ、思わず言ってしまう棘のある残酷な言葉。
悪気などない、むしろよかれと思って言った何気ない一言が
相手を傷つけてしまう。
その傷は他人につけられたものより、治りが遅いと
もしかしたら死ぬまで治らないと私は思います。
 
自分ももう大人なんだから
些細なことを気にしたり、根にもったりしなくていいのに
親の前ではいつまでたっても子どものままなのかも知れません。
 
「 いつもこうなんだよな、ちょっと間に合わないんだ」
 
本当にそうですよね。
何もかも過ぎてしまった後から気が付く。
セリフのひとつひとつに納得してしまいました。
 
主演者全員素晴らしい演技でハマリ役でしょう。
樹木希林さんはいかにも母らしく姑らしく
YOUさんはいかにも娘らしく、夏川さんはいかにも嫁らしかった。
 
しかし(成人指定という意味ではなく)R35でしょうね
若い人が観てもつまらない作品でしょう。
 

 
【解説】allcinemaより
長男の命日のために、老いた両親に家に久々に顔を揃えたある一家の一日をスケッチしたホロ苦くも温かな家族ドラマ。なにげない会話の積み重ねを通して、家族ゆえのわだかまりやいたわりといったない交ぜの感情を抱える登場人物の揺れ動く心の機微を、ユーモアを織り込みつつ辛辣かつ温かな眼差しで繊細に描き出していく。監督は「誰も知らない」花よりもなほ」の是枝裕和
 夏の終わりの季節。高台に建つ横山家。開業医だった恭平はすでに引退して妻・とし子とこの家で2人暮らし。その日、久々に子どもたちがそれぞれの家族を連れて帰郷した。その日は、15年前に亡くなった長男の命日だったのだ。次男の良多は、もともと父とそりが合わなかった上、子連れのゆかりと再婚して日が浅かったこともあって渋々の帰郷。両親がいまだそれぞれに長男の死を受け止めきれずにいることが、良多の心をますます重くする。いつも陽気でソツのない長女のちなみは、そんな家族のあいだを取り持ち、家の中に軽い空気を持ち込むが…。