一人っ子の国(2019)

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原題も「ONE CHILD NATION

1979年から、2015まで35年間中国で行われた

「ひとりっ子制作」の実態に迫るドキュメンタリー映画

 

在米中国人監督ワン・ナンフー(1985年生)が

生まれ故郷に行き、ホームビデオ用のカメラでひとりで撮影

マイケル・ムーアの女性版かと思いがちですが

そんなもんじゃなかった

 

こんなドキュメンタリー映画見たことない

極めて衝撃的な内容に驚かされます

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ナンフーさんは赤ちゃん(生後2~3ケ月)を連れ

母親や弟、親戚にお披露目するため江西省の小さな農村に里帰りします

中国でナンフーは「男栿」と書き男の名前

強く逞しい大黒柱になってくれることを願って両親が考え

産まれたのは女の子だったけどそのまま命名しました

 

その5年後弟が産まれますが(祖父は村の権力者だったと思われる)

姉弟のいるナンフーさんは学校で珍しがられ

虐められたこともあったそうです

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そこでナンフーさんは「ひとりっ子制作」について

母親や親戚、当時の村の村長

自分を取り上げてくれた助産婦などから話を聞くことにします

穏やかに見えても、切り口はかなり鋭い

 

「ひとりっ子制作」は私も知っています

だけどこんなにも非人道だとは知らなかった

それも何百年も過去の話ではなく、つい最近まで行われていたのですから

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195861年に毛沢東が行った「大躍進」(農業や工業の改革)が大失敗

7000万人とも言われる国民が食料不足のため餓死してしまい

このままだとますます食糧危機になってしまうため

人口を減らす、という政策が取られます(マルサス主義)


中国や韓国は、日本以上に長男が家を継ぐという

古い伝統が今も根強く残っていて、夫婦別姓なのも

結婚をしても嫁は夫の家の苗字をもらうことができないからです

もし女の子が産まれたら嫁に行ってしまい(子どもは夫の姓になる)

家が途絶えてしまう

だからどうしても男の子が欲しい、男の子じゃなきゃだめなんだ

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じゃあ、女の子が産まれたらどうする?

籠に入れて捨ててしまうのです

捨てられた赤ちゃんも、女の子なら誰も拾わない

顔中蚊に刺され、蛆虫がわき、赤ちゃんは死んでしまいます


でも中には女の子の赤ちゃんでも、捨てられない親もいるでしょう

隠れて次に男の子が産まれるのを待つわけですが

役人に家を壊され、担架に縛り付けて連れていかれ

強制的に不妊手術や、中絶をさせられてしまいます

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しかも中絶させられる妊婦のほとんどが8~9ケ月

とりあげられた赤ちゃんがたとえ生きていても

そのままビニール袋に入れられ、他のごみと一緒に不法投棄される


ナンフーさんをとりあげた助産婦は5万人は赤ちゃんを殺したという

10万人以上の処理をして、組織から英雄だと金賞をもらった助産婦は

「勲章を貰ったことをいまでも誇りに思う」と答える

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女の赤ちゃんを捨てた叔母に捨てた理由を尋ねると

姑から「捨てないと村八分にされる、非国民になる」

「その女の子を捨てないなら、私が殺すか、私が自殺する」と

脅され、やむを得なかったと答えます


だけど彼らがいくら赤ちゃん殺しでも

怖い人間かといえば、そうではない

家族を大切にするやさしい人々、模範的な国民、愛国者

「政策だった」「しかたがなかった」

政府による長年の洗脳教育で

自分の考えを持つことができなくなってしまっただけなのです

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しかし90年代に入り状況が変わります

アメリカなどの国が中国からの養子縁組を認めたのです

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ナンフーさんは人身売買の罪で5~10年の刑で服役していた

親戚の一家を尋ねます

一家と(配達員なのど仕事をしていた)仲間は

道端に捨てられた子どもを拾い、国営の施設に預け収入を得ていました

最初はこのまま死んでしまうより、誰かに引き取られたほうが

赤ちゃんにとっては幸せなこと、そう思っていたのです


そして中国人の女の子3人を養子に迎えたアメリカ人の夫婦

他国より養子縁組の手続きが簡潔で、金額もはっきりしていて

受け入れやすかったと言います

まさかそれが捨て子や

2人以上子どものいる家庭から)拉致された子どもだったとは知らずに

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中国は養子縁組という人身売買で莫大な利益を得ていたのです

その数10万人以上

これはアメリカ人の夫婦にとっても、子どもたちにとってもショックなこと

 

そして今、中国でも少子老齢化が問題となり

当然、圧倒的に男性の人口が多いため(3000万人以上)結婚できず

ますます少子老齢化が進み「ひとりっ子制作」は廃止

あちこちに掲げられているプロパガンダのスローガンも

「子どもは ひとりより ふたり」に変わります

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一党独裁国家や、独裁者を取材し、批判するジャーナリストはたくさんいますが

それを見た私たちは、どこか遠い国で起こっている暴動と

どこかで客観視してしまってる



だけどこの映画は違う

独裁国家がいかに間違ってるかを「ひとりっ子制作」を通じて

人権教育の重要さと、優生保護や監視社会の危険性を

ズシンと心に響かせてくれる

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これは中国だけの問題ではないのです

もしかしたら日本だって

ちょっとしたきっかけで同じ道を辿るかもしれないのだから

 

【解説】映画.COMより

中国で1979年から2015年まで行われていた「一人っ子政策」についてのドキュメンタリー。中国出身の2人の女性監督ナンフー・ワンとジアリン・チャンが手がけ、一人っ子政策がもたらす深刻な影響を暴き出した。2019サンダンス映画祭のドキュメンタリー部門でグランプリを受賞。Amazon Prime Videoで配信。