原題も「V FOR VENDETTA」
vendettaはイタリア語で「復讐」「敵討ち」の意味
公開当時はかなり酷評だったらしく
最初は私も「スクリーム」(1996)のパロディかよ!
と、思ったのですが(笑)
今見たらこれ、スゴイ映画ですよ
アメコミの中の近未来の世界が、現実になっているのですから
中国当局では上映禁止
2012年に解禁されたものの、2020年に再び禁止
ただ、Vとゴードンが同じトーストを焼く理由や
ヒロインが監禁された収容所内に明らかに仲間がいた・・など
あちこちで伏線の回収が出来ていないのが残念
原作は読んでいませんが、かなり脚色されているようで
もう少し練って丁寧に作っていたら、相当な傑作になっていた思います
(かといって、リメイクは作るべきではないけど 笑)
第3次世界大戦後、世界中でウィルス汚染により何十万人も死亡
アメリカ合衆国は崩壊し内戦が続き
イギリスでは独裁者サトラーが誕生
戒厳令がひかれ、自由はもちろん、音楽や絵画といった芸術も奪われ
国営放送BTNでは、キリストを語るプロパガンダ番組と嘘のニュースを放映
反体制派や、異教徒や、同性愛者は逮捕され、拷問、銃殺されていました
BTNに勤務するイヴィー(ナタリー・ポートマン)は11月4日深夜
人気キャスター、ゴードン(スティーヴン・フライ )に誘われ外出すると
複数の男たちに絡まれ、猥褻な行為を要求されます
痴漢だと思い催眠スプレーを取り出すと、彼らは夜間外出禁止令を取り締まる
秘密警察”ザ・フィンガー”だったのです
警察が権力を利用して無抵抗の人間に暴力を振るったり
女性をレイプしようなんて、それこそ行政が機能していない証拠
そこに仮面の男が現れ、鮮やかな手並みでウジ虫たちを退治
お喋りな仮面の紳士は“V”と名乗り、イヴィーを音楽会に誘います
そして時計の針が12時を指し11月5日に日付けが変わったとき
(1605年の火薬陰謀事件でガイ・フォークスが逮捕された日
=ガイ・フォークス・ナイト)
街のスピーカーからチャイコフスキーの1812年(序曲)が流れ
(1812年の演奏では本物の大砲の砲音を使う)
裁判所が爆破し花火が打ちあがります
警察は監視カメラに写っていた仮面の男を探すため
身元のわかったイヴィーを追うことにします
翌朝BTNに出勤し何も知らずスタジオに“V”のマスクを届けたイヴィー
どこからか現れた“V”はテレビ局を電波ジャックし
来年の11月5日、国会議事堂に集まるよう国民に呼びかけます
そして警察に追われ暴動で気を失ったイヴィーを
悩んだ末隠れ家の「シャドウ・ギャラリー」に連れて行くのです
乙女なエプロン姿にキュンキュン(笑)
しかしイヴィーは“V”の殺人に納得していませんでした
英国教会のロリコン司教の相手の仕事を頼まれたとき
隙を見つけて逃げ出し、ゴードンに助けを求めに行きます
このゴードンが、イイ感じの変態(笑)
極端な趣味をもつ異端児で、同性愛者でしたが
秘密警察から身を守るため、若くて美人のイヴィーに
気のあるそぶりをしていただけなんですね
温かくイヴィーを迎え入れてくれます
サトラー(ジョン・ハート)のそっくりさんのパロディ番組を放映したことで
国民は大うけしたものの、サトラーの怒りを買ってしまい
ゴードンは連れ去られ処刑、イヴィーも捕まってしまいます
一方でフィンチ警視(スティーヴン・レイ)と
部下のドミニク警部 (ルパート・グレイヴス)は
“V”に殺された、プロパンダ番組司会者のプロセロ
リリアン司教、そして検視官で元植物学者のサリッジ女医の
共通点を洗いだしていきます
しかしすべてのデータは削除され、資料も残っていない
そこで警視が目をつけたのが税務署に残された納税証明でした
プロセロは元軍人で、かってラークヒルに存在していた
強制収容所で囚人たちを拷問し
ウィルスの治療薬製造に携わり、製薬会社から莫大な賃金が支払われていました
サリッジ女医はラークヒル収容所でウィルスによる人体実験していました
サトラーから巨額の口止め料を受け取っています
その収容所の生き残り、それが”V”でした
”V”は新型ウィルスの実験で死ななかったただひとりの人間で
ウィルスの変異で超人的な身体能力を身につけてしまったのです
サトラーと側近たちは、ウィルスを故意にまき「細菌テロ」を自作自演
そして権力と、莫大な治療薬の利益を受け取ることに成功したのです
しかし、独裁政治も長く続くと、いくら側近といえ
そうそういつまでも、仲良しこよしでいるのは至難の業
お互い不満が芽生え、その気持ちを”V”がくすぐるんですね
国民たちを躍動するのもうまくて(笑)
当然そのことで犠牲者が出てしまうわけですが
何もしないで殺されるより
行動を起こすほうが大事だという気持ちにさせられる
復讐は間違っていると思っていたイヴィーでさえ
警察に捕らえられ、独房に入れられ、拷問にあい
同じように、幸せを奪われ死んでいった人々がいたことを知り
死への恐怖より、自由を求める信念のほうが強くなる
これが革命の精神なんだな
”V”の意思を継いだイヴィーは
ロンドンの象徴でもある国会議事堂(ビック・ベン)を
爆破する決意をします
さすがのフィンチ警視も、それを止めることは出来ませんでした
最後まで仮面を被り続けた"V"は「マトリックス」(1999)で
声と身振りだけで、憎悪と狂気と悲哀を表現したのは見事
本当に、予言詩のような作品で
独裁国家が強大な軍事力で、外交も国民も支配するようになる
国際機関もお金で左右され、国際法は機能しなくなる
未来の世界に、はたして平和はやってくるのだろうかと
深く考えさせらる
あと少し、辻褄合わせがうまくいっていれば・・
「お気に入り」までも、あと少し
惜しい作品だったと思います
【解説】allcinema より
アラン・ムーアとデヴィッド・ロイドによって80年代に発表されたコミックをベースに、「マトリックス」シリーズのウォシャウスキー兄弟が脚本化したサスペンス・アクション。独裁国家となったイギリスを舞台に、反ファシズムを掲げテロ行為を繰り返す謎の男“V”と、その戦いに巻き込まれていく一人の女性の葛藤と成長を描く。9.11同時多発テロ事件以降のアメリカを中心とした政治体制の方向性に対する強い懸念を色濃く反映したものとなっている。主演は「マトリックス」シリーズのヒューゴ・ウィーヴィングとスキンヘッドでの熱演が話題を呼んだナタリー・ポートマン。監督は、「マトリックス」シリーズなどで第一助監督を務め本作が監督デビューとなるジェームズ・マクティーグ。
近未来のイギリス。そこは独裁者アダム・サトラー議長が支配するファシズム国家となっていた。テレビ局で働くイヴィーはある日、外出禁止時間に表を歩いていたところを運悪く秘密警察に見つかってしまう。そんな絶体絶命の危機を、彼女は“V”と名乗る謎の仮面男に救われる。しかし男は、1605年に国王の圧政に反発し国家転覆を図り失敗に終わったガイ・フォークスにならって、たった一人でサトラー政府に反旗を翻す狡猾非情なテロリストだった。次第にVのテロ活動に深く巻き込まれていくイヴィーは、やがてVとサトラー政府を巡る恐るべき因縁を知ると共に自分自身の内なる真実に目覚めてゆく…