そして人生はつづく(1992)

「道はどこかへ続いているものだ」

原題は「زندگی و دیگر هیچ 」(人生、ほかに何もない)

19906月、イランで起きたマンジル・ラドバール地震

4万人が死亡、約30万人が負傷、約50万人が家を失い

「友だちのうちはどこ?」の出演者の安否確認のため現地を訪れた

アッバス・キアロスタミセミ・フィクション・ロードムービー

冒頭、震災孤児の里親探しの放送が流れています

遮断された道路、車の渋滞、瓦礫の山

黄色いポンコツルノーの父子が、被災者たちに道を尋ねながら

コケル村を目指します

日本でも地震や台風の被害が大大的に報道されますが

こういう伝え方もあるんですね

本物の現場の様子、生き残った人々の本当の声

日本のマスコミがいかにゴミかわかる

息子がバッタを捕まえる

バッタを移民させると言います

「移民の意味を知ってるのか」「違う土地に住むこと」

父親はバッタを窓から逃がせと叱ります

 

息子が喉が乾いたと、道の途中の壊れた冷蔵庫からコーラを1

でもぬるくて不味い、残りを窓から捨てようとすると

「赤ちゃんにちょうだい」と母親が哺乳瓶を差し出します

息子は哺乳瓶にコーラを入れ、残りは捨てずに飲むのでした

監督キアロスタミを演じたのはイラン経済庁役人ということ

プロの役者がひとりもおらず、演技していない分

リアリティ感が半端ない(笑)

 

大渋滞のイライラ

赤ちゃんのミルクもない状況

家族を失った哀しみ

瓦礫の処理

それでも「しかたがないよ」「神のご意思だ」

「神のご加護を」と父子を見送る

新婚の夫婦は家族が全員死んだ震災直後に結婚したといいます

死は予見できないから、生きて結婚することを選んだのだと

前を向いて生きようとする人々の逞しさよ

 

「死んだ人が生き返れば 人生を大切に生きるようになる」

という印象的なセリフがありますが

死を知ることによって、人生を大切に生きようと思う

そういう教えも感じますね

家を失った人々のキャンプ

子どもたちと知り合った息子は

ワールドカップの決勝戦を観たいという

監督は後で迎えに来ると娘たちに息子を頼み

ひとりコケル村に向かいます

「友だちのうちはどこ?」の少年ふたりが

ストーブを運んでいると聞いた監督は

ふたりを車に乗せますが別人でした

コケル村に行くには急な坂道があるから

フルスピードで登るよう教えられるのでした

監督はタンクを運ぶ男に「乗せてくれ」と頼まれますが無視

丘を上って行くとオーバーヒートしてしまいエンジンが停止

あとから歩いて来たタンクに助けられます

困っている人のほうが親切という嫌味(笑)

再び走り出した車はタンクの男を乗せることにしました

 

結局、監督が「友だちのうちはどこ?」の少年に会えたかどうかは

この作品ではわかりません(笑)



【解説】allcinema より

「友だちのうちはどこ?」に始まり、「オリーブの林をぬけて」で完結するアッバス・キアロスタミの“ジグザグ三部作”の二作目。イラン北部を襲った大地震により崩壊した村を舞台に、「友だちのうちはどこ?」の出演者兄弟を、キアロスタミ監督とその息子が捜すという設定の中、村の人々の姿をドキュメンタリー・タッチで映し出していく。本作で新婚となった二人の男女を軸に「オリーブの林をぬけて」を構成するなど、巧妙に絡み合う三部作のディテール。瓦礫に埋もれた村で生きる人々の小さなドラマの連続は人生の起点ともいうべきノスタルジーに包まれ、観る者の心に温かな何かを与えてくれる。