「女性は見られてないと存在する意味がなくなるのよ」
原題は「FADING GIGOLO」
”fading”とは”色あせていく”ということ
本作では「いぶし銀」(華やかさはないが、実力や魅力があるもの)
とでもいう意味でしょうか
ウディが自身の監督作品でなく、俳優として主演するのは
アニメ映画「アンツ」(1998)、「ヴァージン・ハンド」(2000)
以来14年ぶりということ
監督、脚本、主演はジョン・タトゥーロ
が、ウディが登場したとたん、いつもの「アレン節」(笑)
長くてクドイ屁理屈をゴネゴネ
タトゥーロはウディを相当研究したんだな
ここまでされたらウディも出演するしかない(笑)
三代続いた本屋を潰したマレー(ウディに似合いすぎ 笑)は
花屋でバイトする親友のフィオラヴァンテ(タトゥーロ)に
自分の通ってる皮膚科の女医Dr.パーカー(シャロン・ストーン)が
レズの恋人と3Pしてくれる男を探していると説明します
そしてその相手役にはフィオラヴァンテしかいないと言うのです
しかも報酬は1000ドル、6:4の分け前でどうだと話は決まります
最初は、男が女からお金を貰うなんてありえない
男娼なんてまっぴらと思っていたフィオラヴァンテでしたが
渋々Dr.パーカーに会いに行くと、そこにいたのは意外にも
初デートで女子高生のようにドキドキしている熟女でした
フィオラヴァンテはDr.パーカーの話に耳を傾け
グラスに酒を注ぎ、優しくリードし、好きな音楽だとダンスに誘う
Dr.パーカーはフィオラヴァンテにイチコロ、まいってしまいます
なんたって彼は、アイスクリームでいえば「ピスタチオ」味(笑)
一見これ、金もない、若くもない中年男が
セレブの美女たちとヤリまくれる夢物語のようですが
実はものすごく、女性の恋愛心理や
女性が男性にしてもらいたい欲求を調べ上げてる(笑)
つまりアレンを研究する=女性を研究すること
しかもイイ女にばかりモテる
ウディの味方をするわけじゃないけど
私はハリウッドの「MeToo運動」を支持している派ではないのでね
だからといってセクハラに賛成している訳じゃありませんよ
ただ、脅しや、レイプや、クスリを飲まされたというような悪質なものは別として
性的なことや、容姿や年齢のことをことを言われたり
タッチされたくらいでも「MeToo」と騒ぐのはいかがなものかと思う
マレーのリサーチ力と
フィオラヴァンテの女性経験の豊富さと、数々のバイトで得た知識で
女性からの予約が殺到
そんな中、セラピーだとマレーが誘ったのが
(息子の髪ジラミをとってくれた)ユダヤ教ナビの未亡人で
6人の子どもがいるアヴィガル (ヴァネッサ・パラディ )でした
よく知らない宗教について意見を言うのはタブーだと知っているけど
女性の地位が低いんですね
(同じ土地で生まれた宗教だからあたりまえか)
しかも髪型やスタイルが独特なだけでなく
独自の解釈や、ありえないルールが多すぎる
フィオラヴァンテは、部屋を暗くし、ろうそくに火をつけ
アロマオイルでやさしく背中をマッサージ
するとアヴィガルは泣いてしまいます
夫は肌に触れなかった、寂しかったと
(肌に触れないで子ども作るって動物か←動物だって毛づくろいくらいするぞ)
次にフィオラヴァンテはアヴィガルを食事に誘います
彼が作ったのは、食材から調味料まですべて
「ラビ認定」のものを使った魚料理
こんなふうに男性にやさしくされたことがなかった彼女は
自分の中に女性を取り戻します
そしてフィオラヴァンテも決して幸せとはいえない彼女を
好きになってしまいます
そしてお約束の3Pの日
美女ふたりを前にして、フィオラヴァンテは萎えてしまう
だけどデキない彼をDr.パーカーと恋人のセルマは(ソフィア・ベルガラ)
「できないのは恋を知ったからね 素晴らしい!おめでとう!」と祝福します
(私もお姉様たちの間に挟まりたい 笑)
一方でアヴィガルに想いを寄せている
ユダヤ教の自警団のドヴィ (リーヴ・シュレイバー)は
マレーを逮捕し「ラビ審議会」というユダヤ教独自の裁判にかけます
ユダヤ教の超正統派の中でも
ニューヨークのコミュニティは有名らしいですね
コロナ渦の中、集団礼拝をやってニュースにもなりました
そこに現れたアヴィガルは自分の罪(背中と髪の毛を見せたこと)を
ラビに告白しアヴィガルと結婚する結婚する決意をします
そしてフィオラヴァンテに別れを告げに行くのです
ここらへんはアーミッシュの未亡人と、よそ者の警察官が淡い恋心を抱く
「刑事ジョン・ブック」(1985)と似ている
あまりに住む世界が違うため、結局結ばれることはない
アヴィガルにフラれたフィオラヴァンテは
マレーにダイナーでブルックリンを去る決意を語ります
が、カウンター席に座っていた美女(ローン・シャバノル)に
マレーはフィオラヴァンテを紹介し連絡先を渡す
そしてもう一度、フィオラヴァンテに今後の予定を尋ねるのでした
タトゥーロは名前の通りイタリア系だけど、ブルックリンで生まれ育ったから
こんな「なんか変だよ、ユダヤ教」をネタにした作品が作れたのでしょう
下ネタ満載だけど、最後はちょっとほっこりします
ひとこと感想は、よく上映禁止にならなかったもんだ(笑)
【解説】allcinema より
「バートン・フィンク」「オー・ブラザー!」のジョン・タートゥーロが主演のみならず監督・脚本も務め、共演にウディ・アレンを迎えて贈るコメディ。お金に困った本屋店主と彼にそそのかされジゴロ稼業を始めた花屋のバイト店員の凸凹コンビを主人公に、彼らを取り巻く愛とお金の人間模様をユーモラスに綴る。共演はヴァネッサ・パラディ、シャロン・ストーン、リーヴ・シュレイバー。
ニューヨークのブルックリンで、3代続いた本屋を自分の代で潰してしまったマレー。失業で途方に暮れていた彼はふとしたきっかけから、花屋でバイトする友人のフィオラヴァンテをジゴロに仕立てると、2人で愛に飢えた女性相手のいかがわしいビジネスに乗り出す。すると意外にもフィオラヴァンテの優しいジゴロぶりが評判となり、マレーの巧みな営業活動と相まって商売は思いのほか大繁盛。調子に乗ったマレーは、新規顧客としてユダヤ教の中でも厳格な宗派に属しているラビの未亡人アヴィガルを言葉巧みに勧誘する。しかしフィオラヴァンテとアヴィガルは互いに惹かれ合い、秘密の逢瀬を重ねるようになってしまう。それは、ジゴロにとってもユダヤ教徒にとっても決して許されることのない禁断の恋だったのだが…。