地球は女で回ってる(1997)




「あなたの人生はニヒリズム(虚無)とサーカズム(風刺)とオルガズムよ!」
「その標語ならフランスでは選挙に勝てる」


原題は「Deconstructing Harry」
直訳すると「解体 ハリー」
女性賛美的な邦題ですが、性的描写も露骨ですし
デートムービーには絶対おすすめしません


ウディ・アレンの考える「8 1/2」と評されている作品ですが
私は、ベイルマンの「野いちご」(1957)ではないかと思いました

「野いちご」では名誉学位を受けることになった老教授が
その会場に向かう途中、悪夢や過去の人物や妄想に憑りつかれながら
様々な人物と出会っていくというもの
そしてベイルマンといえばやはり「神の不在」というテーマ





アレンなのでネタはギャグで、エロですが(笑)
賞を受賞した作家のハリーは、受賞式に出席するため
恋人、友人、息子、そして娼婦と一緒に会場に向かうのです

そしてハリーの目の前には現実と、過去と
妄想(小説)の中の人物が次々と現れ
彼のいままでしてきたことを、汚い言葉で罵ります
そして主人公のユダヤ人なのに「ユダヤ教」への不信





身内や友人の秘密を小説という形で暴露し
身勝手極まりない私生活で周りの人間を傷つける
暴力によるものでない、知的な暴力
でも本人は、それが自分なんだからしょうがないと思ってる


そして、そんな最低男の自分も
実は小説の登場人物だったというオチ


ストーリーうんぬんよりも
アレンのこの時点での、性の寛容と開放を訴える
総決算的な作品のような気がしました



【解説】allcinemaより
 W・アレン監督・主演によるロマンティック・コメディ。さまざまな人物や事件を通して、うだつのあがらない中年小説家の悲哀と日常をユーモラスに見つめる。ハリーは、私生活をネタにした小説ばかり書いてベストセラーをものにしてきた小説家。だが、最近は切り売りすべき私生活もなくなり、スランプに陥って新作を書くことができなくなっていた。そんな彼を、元恋人や友人たちが容赦なくひっかきまわしてゆく。