「人に関心を示されるとすぐに恋をしてしまう」
原題の「Eternal Sunshine of the Spotless Mind」は
アレクサンダー・ポープの詩「エロイーザからアベラールへ」(1717)からの引用
How happy is the blameless vestal's lot! 幸せは無垢な心に宿る
The world forgetting, by the world forgot 忘却は許すこと
Eternal sunshine of the spotless mind! 太陽の光に導かれ
Each pray'r accepted, and each wish resign'd. 陰りなき祈りは運命を動かす
いわゆる時系列バラバラ系、クリストファー・ノーランが
恋愛ものを撮ったらこうなる?という作風で
実際ノーランの「メメント」と類似点が多いため
脚本のチャーリー・カウフマンは手を引こうとしたものの
ミシェル・ゴンドリー監督にごり押しされ(笑)
さらにゴンドリーは彼女と別れて落ち込んでいたジム・キャリーに
その状態を1年間維持するよう依頼し
撮影でも誤解を招く指示をしたり、間違ったタイミングでカメラを回して
ジムを追い詰めたそうです
ジムは後のドキュメンタリー番組で当時のことを
「それほどめちゃくちゃ」だったと語ったそうです
終わってしまった恋の思い出を捨てた彼女と
捨て切れない彼(記憶を美化する男の身勝手さ)の物語
夜中に飲酒運転して車をぶつけて帰ってきた泥酔した彼女を
「男と寝たんだろ」と責める彼
怒った彼女は部屋の鍵を突き返し飛び出してしまいます
彼女に謝ろうとバレンタインのプレゼントを買い、彼女の勤める書店に行く彼
すると彼女は彼を無視し、知らない男とキスをします
友人が戸惑う彼に手紙を渡し、差出人は「ラクーナ社」
そこには彼女の「記憶を消去した」と書いてありました
彼女を失ったショックで狂いそうな彼は
自らも彼女の記憶を消すため ラクーナ社に向かいます
しかしいざ記憶を消す作業が始まると
彼の潜在意識は、彼女の記憶が消えないように抵抗をしはじめます
どんどん消えていく記憶の中を逃げ回っていくうちに
彼の記憶の中に彼女の(新しい)意識が生まれ
ふたりは「思い出を忘れない方法」を考えていきます
ほぼほぼ男性目線の恋愛映画で
レンタルDVD店で”「(500)日のサマー」の隣にある映画”という
レビューをしていた人がいましたが、まことにうまい表現だなと(笑)
思い出の中の彼女クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が
どんどん彼ジョエル(ジム・キャリー)にとって都合の良い
想像上の女になっていく(笑)
「モントークで逢いましょう」もジョエルの妄想でしかすぎませんが
記憶を失ったジョエルは、本当にモントークでクレメンタインと再会します
そしてまた惹かれ合ってしまうのです
クレメンタインは境界性人格障害(ボーダー)っぽい特徴をもっていて
美人で魅力的であるけれど感情の起伏も激しいんですね
だから衝動的に「記憶を消す」という行動にまでしてしまいます
でもこういう女性に男性は惹かれる
特にオクテな男性ほど積極的に声をかけてくれる女性にヨワイ気がします
クレメンタインに一目惚れしたという
(しかもパンティを盗むという変態=犯罪だからそれ 笑)
クレメンタインが記憶を消すため処分した思い出の品を利用し
彼女と付き合いはじめます(やはり彼女に振り回される)
というかラクーナ社のスタッフ全員が酷い
受付嬢のメアリー(キルスティン・ダンスト)と
記憶消去技術者のスタン(マーク・ラファロ)は付き合っていて
仕事中に乱痴気パーティ
そこで装置が誤作動を起こし
修理にやって来たハワード博士(トム・ウィルキンソン)を
メアリーが口説いてキス
その姿を夫を怪しんで後を追ってきたハワード博士の妻が目撃
妻の発言でかってメアリーと博士が不倫していたことが発覚します
メアリーは会社に戻ると、博士との交際の「思い出」や
彼との間の赤ちゃんを中絶していた資料を見つけショックを受け
会社を辞める決意をします
しかもあろうことかジョエルとクレメンタインの思い出の記録まで
持ち去ってしまうのです
こんないいかげんな会社に仕事を依頼するのは
まっぴらごめんだわ(笑)
おかげでお互いのリアルな「悪口カセットテープ」を
聞きあうことになってしまう、ジョエルとクレメンタイン
部屋を飛び出したクレメンタインを、ジョエルは今度は追いかけた
そうです
追いかけるのは別れる前が正解
女性と喧嘩したら、すぐ追いかけてすぐ謝ること
(別れるのはその後でも間に合う 笑)
「どうせまた私の悪いとこ見つけるし 飽きるよ」
「それでもいいよ」
「OK」(ほら、あっさりオッケーしたでしょ 笑)
私的には喧嘩ばかりのカップルをあまり好ましく思いませんが
最近のクリスマスやバレンタインには
それをテーマにした恋愛映画がすっかりなくなりましたね
(それも今ではハラスメントになるのでしょうか)
そういう点で懐かしいものはありました
【解説】映画.COMより
ミシェル・ゴンドリー監督と「マルコヴィッチの穴」の脚本家チャーリー・カウフマンが、2001年製作の「ヒューマンネイチュア」に続いてタッグを組んだ奇想天外なラブストーリー。互いの存在を忘れるために記憶除去手術を受けたカップルの恋の行方を巧みな構成と独創的な映像表現で描き、2005年・第77回アカデミー賞で脚本賞を受賞した。バレンタイン直前にケンカ別れしたジョエルとクレメンタイン。ある日ジョエルは、クレメンタインが自分についての記憶をすべて消してしまったという手紙を受け取る。ショックを受けたジョエルは手紙の差出人ラクーナ社を訪れ、自らも彼女についての記憶を消すことを決意する。ジョエルを「トゥルーマン・ショー」のジム・キャリー、クレメンタインを「タイタニック」のケイト・ウィンスレットが演じ、「スパイダーマン」シリーズのキルステン・ダンスト、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのイライジャ・ウッド、「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」のマーク・ラファロが共演。
2004年製作/108分/アメリカ
原題または英題:Eternal Sunshine of the Spotless Mind
配給:ギャガ・コミュニケーションズ