ハードエイト(1996)

「私にも同じく親切に」

 

原題の「Hard Eight」は、クラップス(Craps)というサイコロゲームでの

「4のゾロ目」という意味のカジノ用語

ポール・トーマス・アンダーソンの長編デビュー作ということですが

PTAでも、たぶんいちばんわかりやすい

なぜなら登場人物がいちばん少ないから(笑)

まるで舞台の幕のように巨大なトレーラーが横切り

視界が開けるという見事な導入部分

カメラはロバート・エルスウィット

巨匠と呼ばれる監督になるためには

名カメラマンとの出会いがいかに大事かわかります(笑)

ダイナーの前で途方に暮れ座り込んでいるひとりの男

老紳士がどうしたのかと声をかけると

母親が死に、葬儀代の6000ドルを稼ぐため

カジノに行ったものの大負けして一文無しになったと言うのです

シドニー(フィリップ・ベイカー・ホール)は

ジョン(ジョン・C・ライリー)にタバコとコーヒーをおごり

ラスベガスでギャンブルに勝つための心得を教えようと言います

新品のスーツを買い与え、掛け金の両替方法を伝授する

見事に2000ドルもの大金を手に入れます

ここ「パーパー・ムーン」(1973)のレジでのお金のやりとりくらい

わからなかった(笑)

この方法はここまで、6000ドルを稼ぐためには

ロサンゼルスの友人が手を貸してくれるだろうと助言します

それがどういう手かわからないまま(笑)

2年後、ジョンはネバダリノでナイトクラブを経営し

シドニーを父親のように慕っていました

ジョンが従業員友人でもあるジミー(サミュエル・L・ジャクソン)を

シドニー紹介すると

シドニーは品のないジミーを不快に思います

さらにシドニーが好意を寄せているクレメンタイン(グウィネス・パルトロー)が

売春をしていることを知り

シドニーはクレメンタインにも父親のように振る舞い

彼女を説得し、ジョンとの仲を取り持とうとします

ふたりはめでたく両想いになり、結婚しますが

カジノで若者(フィリップ・シーモア・ホフマン)と軽く遊んでいたとき

ジョンから呼び出されます

クレメンタインがホテルで男と金銭トラブルになり

駆け付けたジョンは男を暴行監禁したうえ

男の妻に「夫を殺されたくなければ金を届けろ」と電話したといいます

シドニージョンから銃を取り上げ

クレメンタインの軽率な行動を叱ると

ジョンは「妻を侮辱するな」と逆ギレ

呆れたシドニーが立ち去ろうとすると、ジョンは謝罪します

シドニーは男の妻が警察に通報するかも知れない

捕まる前に「遠くに逃げろ」と警告すると

「金(セックス代)を払うべき」と譲らないクレメンタイン

そこでシドニーが新婚旅行がまだじゃないかと機転をきかせると

「ナイアガラの滝」を見たいとクレメンタイン

「前に行ったことある」と渋るジョン(おいおい)

何とかふたりをカナダ目指して出発させると

シドニーは痕跡を消すためホテルに戻ります

夫婦が警察に通報しなかったことを告げるため

(旅行中のジョンの代わりに店を任された?)ジミーに会いにいくと

ジミーはシドニーのことを調べあげていて

シドニーがかってマフィアであったこと

ジョンの父親を殺したことを知っていると脅します

ジョンに知られたくなければ1万ドルを渡せと要求されると

(サミュエルだけは絶対口喧嘩で勝てない 笑)

6,000ドルしかない、とかけあい

カジノで金を受け取りジミーに渡します

その金で女を家に連れ込むジミー

シドニーは電話でジョンに「息子のように愛している」と伝えると

ジミーの家で彼の帰りを待ち殺すと、奪われた金を取り戻します

ダイナーでコーヒーを注文し

シャツの袖に着いた血を、そっと上着で隠す

アキや、ブニュエルや、ブレッソンのような「徹底した省略」ではなく

「中途半端な省略」がPTA(笑)

 

シドニーとジョンの父親との関係は明かされません

シドニーは、ジョンの父親を殺したことで

マフィアから足を洗い、ギャンブルで生計をたてている

(カジノの支払いでホテル生活しているので大物と思われる)

やがてジョンの母親が死に、お金に困っているジョンに手を差し伸べた

ジョンに近づいたのは罪滅ぼしだったのです(たぶん)

いつしかジョンを本当の息子のように愛しく思い

守らなければならない使命と同時に

かっての冷血さも目覚めます

クレメンタインとホテルに行った男が警察に通報しなかったのは

シドニーが手をまわしたからでしょう

ジョンとの関係を壊されないために、ジミーも躊躇なく殺します

シドニーが父親殺しであることは、ジョンに知らされることはなく

ぬるいままで終わるのですが、とりあえずハッピーエンド

 

最後に私が言いたいと思ったのは

もう売春なんかしちゃいけないよ(できればだけど)





【解説】映画.COMより

マグノリア」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」などの鬼才ポール・トーマス・アンダーソンが、1996年に手がけた長編監督デビュー作。母親を亡くした青年ジョンは葬儀代を稼ぐためにラスベガスを訪れるが、失敗して一文無しになってしまう。途方に暮れるジョンの前に初老の賭博師シドニーが現われ、カジノで勝つ方法を伝授。数年後、シドニーのおかげで一流ギャンブラーへと成長を遂げたジョンは、クレメンタインという恋人もできて満ち足りた生活を送っていた。ところが、友人ジミーの存在がジョンの人生に思わぬ波乱を巻きおこし……。出演は「シカゴ」のジョン・C・ライリー、「ブギーナイツ」のフィリップ・ベイカー・ホール、「ロイヤル・テネンバウムズ」のグウィネス・パルトロウ、「パルプ・フィクション」のサミュエル・L・ジャクソン

1996年製作/101分/アメリ
原題:Sydney