間奏曲はパリで(2013)




原題の「La ritournelle」とはルーティーンのことで
決まりきった仕事、日課、日常といった意味だそうです

ヒロイン演じるイザペル・ユペールは公開時でなんと60歳!
そのチャーミングさに驚きます
フランス人の肌は皺になりやすいのが欠点だと思いますが
この年でこれだけ可愛いなんて、素敵です

そしてフランス映画だからこそ、こういう夫婦のありかたも
年増女性のアバンチュールも、さらっと粋に描けるのでしょう
不倫もので、心地よく清々しい作品ってそうありません
日本や韓国、アメリカの感覚であれば修羅場にしかならない気がします


ノルマンディで夫のグザヴィエ(ジャン=ピエール・ダルッサン)と
共に畜産業を営んでいるブリジット(イザペル・ユペール)
グザヴィエの育てた牛は、毎年品評会で賞を取るほど立派なもの

だからグザヴィエは妻のことより、牛と賞のことで頭がいっぱい
(ガチで牛の分娩シーンには驚きます)
家を継がずアクロバットを学ぶ一人息子のことも、認めていません





そんなある日、隣の家で若者たちが集まりパーティが行われました
そこでパリからやってきた姪の友達のスタンと、ブリジットは仲良くなります

そしてブリジットは、皮膚の持病を医者に診てもらうと夫に嘘をつき
パリへ2泊の旅に出ます
スタンを探し、再会
ホテルではデンマーク人の歯科医とも知り合います


何十年も主婦をして、夫と牛の世話をしてきた毎日
それがたまたま若い男性と会話をしたことで
思いがけず「女」としての自分が蘇ってしまう
さりげない誘惑に、ときめいてしまう

再びそのときめきを味わうために、パリにまで逢いにいくけれど
所詮は親子ほど年が違う若者、冷静になってみれば未熟な男
「あ~あ」となるわけで、知的なデンマーク人と
大人のお付き合いをするわけです





妻の行動を不審に思いパリまで追いかけてきたグザヴィエ
だけど見知らぬ男と楽しそうに話す妻を見て、何も言わず引き返します
そして息子に逢いに行き、はじめて彼のトランポリンパフォーマンスを見るのです

このときのグザヴィエの流す涙は複雑な思いだったでしょう
彼はずっと妻も息子も支配してきたつもりだったのです
妻のことも、息子の存在も、牛以上に認めてはいなかったのです

でも実はふたりとも自立していて、考えも持っていて
自分だけがひとり取り残されていたことに気が付いたのです


すっかり落ち込んでしまったグザヴィエを、使用人のレジスが励ましました
「奥様は戻ってきます」「浮気はお互いさまでしょう」
かってはグザヴィエにも愛人がいたのです
そのことをブリジットは知っていて
夫に気づかれぬよう、影で泣いたとグザヴィエはいうのです

パリから帰ったブリジットをレストランに誘うグザヴィエ
よほど夫婦で外食したことがないのか喜ぶブリジット
(でも肉の部位のことでウェイトレスと揉め、妻を困らせる 笑)
そして死海への旅のプレゼント


言わなくていいことは、言わない
それが熟年夫婦円満の秘訣なのかもしれません
でも、もっと早く奥さんにやさしくすることに
気が付いて欲しかったと思います

女性は何かあった時、必ずサインを出しています
それを見逃さないべきだと、私は思います



【解説】allcinemaより
「ピアニスト」のイザベル・ユペールが、あたりまえの毎日に満たされない思いを抱き、パリでのささやかな冒険を通して改めて人生を見つめ直す倦怠期の主婦を演じるコメディ・ドラマ。共演は「ル・アーヴルの靴みがき」のジャン=ピエール・ダルッサン。監督は、これが長編4作目のマルク・フィトゥシ。
 フランス北東部ノルマンディ地方。ブリジットは田舎町で畜産業を営む真面目で無骨なグザヴィエを夫に持つ中年主婦。子どもも自分の手を離れ、夫と2人で決まり切った毎日を送るだけの平穏だが退屈な日々にふと疑問を感じてしまう。そんな時、パリから来た姪の友人でイケメンの青年スタンと意気投合し、久々にトキメキを感じたブリジット。すっかり気持ちが大きくなった彼女は、夫に嘘をつき、淡い期待を胸に、パリで2泊する女のひとり旅を決行するのだったが…。