グラン・トリノ(2008)





これは見る人の感情を揺さぶります
素晴らしい傑作
公開当時も見ていますが
2度目でも決して新鮮さは失われていませんでした

頭が良く、明るく
ちょっと気が強い女の子、スー

彼女がボロボロにレイプされたとき
卑怯な犯人たちに対して
こんなクズな奴ら、殺してしまえと
私の心にも強い憎しみが沸き上がりました



この町はかっては自動車産業で栄えていたのでしょう
しかし今や、住んでいるのも、公共の施設でも
どこに行っても東洋人ばかり

ウォルトは「米喰い虫」「イエロー」と彼らを嫌い
息子がトヨタ車のセールスをしているのにもウンザリ
古くて、頑固で、口の悪い差別主義者

でも、本当にウォルトが嫌いなのは
頭の悪い人間なのですね
マナーや常識がない、弱い人間を虐める
そんな奴らこそ許せないのです

隣に引っ越してきたモン族の一家
本当のモン族の方々が出演されているのでしょうか
生活習慣や食事のシーンなどリアルに感じます

その中のタオは引っ込み思案でおとなしい少年ですが
やさしく、賢い子でした
ウォルトは彼のことを知るうちに
だんだんと気に入ってきます
馴染の床屋でのやりとりなどは
気分がいいですね





しかし、タオにはやっかいな不良グループの従弟がいました
なにかとタオに絡み、暴行するのです
こいつらこそがウォルトが最も嫌うタイプ
自分たちが戦争で守ったアメリカを汚す悪の存在

しかし反撃にはまた報復が待っているのです
ウォルトが考えた負の連鎖を止める方法
それは、まずは神父に懺悔しました
そして不良たちのアジトにひとり向かいます

私の想像ではたぶん
黒人や、ヒスパニックや、東洋人が、白人に殺されたときより
白人が有色人種に殺されたときのほうが
アメリカで、罪は格段に重いような気がします

丸腰の白人をモン族が集団で銃撃したとなれば
極刑か、一生刑務所から出ることはない

これこそが、スーやタオが怯えることなく暮らせ
自分の家族が汚名をきることもない方法
なにより、自分はいつ死んだっていい身体



愛車を譲り受けたタオが
まっすぐな海辺の道をドライブします
彼はきっと働きながら大学を出て
立派な大人になるのでしょう
そんな未来が見えるエンディングでした

もちろんお気に入り

この「グラン・トリノ」を
私の名作‘‘ハチの巣ラスト3部作‘‘としていきます(笑)



【解説】より
 「ミスティック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」の巨匠クリント・イーストウッド監督が、自ら主演して世の中に怒れるガンコ老人を演じた感動の人生ドラマ。急速に様変わりしていく世間を嘆き、孤独に生きる人種差別主義者の偏屈老人が、ひょんなことから隣人のアジア系移民家族と思いがけず交流を深めていくさまを、哀愁の中にもユーモアを織り交ぜつつ端正な筆致で綴ってゆく。
 長年一筋で勤め上げたフォードの工場を引退し、妻にも先立たれた孤独な老人ウォルト・コワルスキー。いまや、彼の暮らす住宅街に昔馴染みは一人もおらず、朝鮮戦争帰還兵の彼が嫌ってやまないアジア人をはじめ外国人であふれる通りを目にしては苦虫をかみつぶし、亡き妻に頼まれたと、しつこく懺悔を勧めてくる若造神父にも悪態をついては追い返す日々。自宅をきれいに手入れしながら、愛犬デイジーと72年製フォード車グラン・トリノを心の友に、お迎えが来るのをただじっと待つ退屈な余生を送っていた。そんなある日、彼が大切にする自慢の庭で、隣に住むモン族の気弱な少年タオと不良少年グループがもみ合っているのを目撃したウォルト。彼らを追い払おうとライフルを手にするが、結果的にタオを助けることに。タオの母親と姉がこれに感謝し、以来何かとお節介を焼き始める。最初は迷惑がるものの、次第に父親のいないタオのことを気に掛けるようになるウォルトだったが…。