エデンの東(1954)

 
 
 
ジェームス・ディーン、マーロン・ブランドポール・ニューマンの3人は
アクターズスタジオ出身でしかも同期なのだそうです。
友だちだったかどうかは知りませんが、仲は良くなかったでしょうね
たぶん。笑
 
 
切ない作品ですよね、エデンの東
 
ただ父親に認めてもらいたいだけなのに
父親の仕事を助けたかっただけなのに
しかも実業家としての特別な才能はあるのに
頑張れば頑張るほど、父親を怒らせてしまう
素直で正直なキャル。
 
一方の兄のアロンは容量がいい。
敬虔なクリスチャンである父親がどうすれば喜ぶかよく知っていて
その通りにだけ行動します。
恋人でさえ父親が好みそうな、慈愛的な女性であるアブラ。
だから父親からはいつも褒められ愛されています。
 
確かに自分の産んだ子どもであっても
どちらかの方が可愛いというのはあります、どの親でも。
世の中に平等はないのです。
 
しかし、この父親はあまりに極端でしょう。
それはキャルが自分を捨てた妻に似ているからです。
キャルを見ると妻への憎しみが再燃するのでしょう。
自分の恨み辛みを次男にぶつける、そういう親。
 
そんな父親から死んだと聞かされていた母親は、実は生きていて
売春宿を経営しているやり手な実業家になっていました。
 
この母親役は「暴力脱獄」でも母親をしていますが雰囲気ありますよね。
憎まれ口しか叩かないし、自分勝手な生き方しかしてこなかった女だけど
心の奥では深い愛情を持っている・・そういう感じ。
 
自分のことを聖人だと思い、アブラには母親から与えられなかった愛情を求め
束縛するようになるアロン。
アブラは次第に自由だけれど正直な、弟のキャルの方に心を寄せるようになります。
彼女もまた父親に愛されずに育っていた過去があるのです。
兄のアロンは、キャルとアブラが親しくなっていくことに嫉妬するようになります。
 
父親の誕生日にアブラと結婚すると発表したアロン。
それを喜んだ父親は、彼を経済的にまで助けようとした
キャルからのプレゼント退け、しかもアロンと一緒に罵ります。
それこそが無償の愛だったのにかかわらず・・
 
絶望したキャルは、アロンを母親のもとに連れていき
「真実」を告げてしまうのです、オマエも母親も聖人ではないと。

キャルの無分別な行いは、父親も母親も兄をも不幸にしてしまいます。
ほんの少しでもいいから愛してほしい、ただそれだけのことだったのに。
 
アブラの愛は、この大きな不幸を支えてあげれるのでしょうか。
何があっても、アブラのように女性の愛で支えて欲しいのが
男性の理想なのでしょうか。
この作品の本当の主人公はアブラかも知れません・・ひたすらの 母性。
 
はじめての主演作である「エデンの東」で
カリスマ的な大スターになったジミー、今見ても十分なハンサム。
 
そして「欲望という名の・・」「革命児・・」「波止場」などデビュー早々から
強烈な印象の作品で認められたマーロン。
そのうえに「ゴット・ファザー」での見事な返り咲き。
 
しかしながら初期は酷評され
同期では一番出世が遅かったP.ニューマンが
俳優として、ビジネスマンとして、レーサーとして
そして結婚生活においても、晩年まで成功したそうです。
 
出来の悪い子だっていつ成功するかわからない。笑
失敗を責めるばかりじゃいけませんよね
愛情もって育てるべきでしょう。
 

 
 
【解説】allcinemaより
名匠カザンがシネマスコープをドラマ表現において見事に使いこなしたことや、J・ディーンのあるがままの“演技”、L・ローゼンマンによる忘れらない主題曲……。秀作の要素が嫌味なくらいに揃った、しかし、やるせない宿命に喘ぐ青春を描いて、これほどの達成はなかろう。原作は言わずと知れた旧約聖書カインとアベルを下敷きにしたスタインベックの長篇で、映画はその一部を元にしただけだが、小説のエッセンスが全て凝縮されている。温厚な兄だけが父に可愛がられ、冷たくされる自分の出生に疑問を持った、大農場を経営するトラスクー一家の問題児キャルは、彼らを捨てて出奔した母(凄みのある名演J・V・フリート=オスカー助演賞)の行方を突きとめ、予想に反する答えを聞く……。そして、涙なしには観られない結末も素晴らしい。兄の婚約者で次第にキャルに魅かれてゆくエイブラに扮するJ・ハリスの母なる包容力も印象的だ。しかし、それにしてもジミー・ディーンである。