尼僧物語(1959)

 
 
ジンネマン監督×フランツ・プラナー撮影×フランツ・ワックスマンの音楽
見る前から格調高い名作の香りがしてきます。
 
普通の女性が尼僧になるまでのプロセスや、修道院での訓育や生活など
私たち一般人が、普段決して見ることができない世界を
リアリズムの巨匠と謳われたジンネマン監督が描いた貴重な作品でしょう。
 
当時は女性が外国などで貧しい人々や病気で苦しむ人々を援助する手段は
シスターになるしかなかったのかも知れません。
コンゴで熱病で苦しむ人々を助けたいという情熱で尼僧になる決意をした
ガブリエラ/シスター・ルーク(オードリー)。
 
しかしいくらシスターとはいえ、そこは女性の集まり、女の世界。
優秀な看護師で父親は著名な外科医、しかも美しいシスターが現れたら
同僚のやっかみを買ってしまうのは目に見えています。
シスター・ルークの希望は叶えてもらうことができません。
彼女は戒律と、病気で苦しんでいる人を助けたいという本来の気持ちとの間に
ギャップを覚え葛藤します。
やっと赴任したコンゴでも、貧しい人々への医療活動ではなく
白人専門の病院に派遣されてしまうのです。
 
やがて戦争により父親が殺されたことを知った彼女は
憎しみや悲しみの気持ちを払拭することができませんでした。
そして修道会から脱会する決意をします。
 
2時間半という長い尺ではありましたが
コンゴでのキリスト教と地元の宗教との隔たりや
戦争が始まり、家族や愛国心と戒律との間でヒロインが揺れ動く姿など
監督の意図した世界がまだまだ描ききれていなかった気がします。
 
オードリーは「ローマの休日」に引けをとらない程の美しさ、可憐さでした。
そして彼女の映画に取り組む真剣さがとても伝わってきました。
のちのユニセフ親善大使として、アフリカ、南米、アジアの
恵まれない人々への援助活動に献身したオードリーの活躍には
この作品での主演も大きく影響したのではないでしょうか。
 

 
【解説】allcinemaより
ベルギーの尼僧ガブリエラは、コンゴの植民地で医療活動を行なっていた。彼女は生きる糧を神の道に見出していたのだが、第二次大戦で父を失った彼女は、次第に教会のあり方と対立を深めていく……。A・ヘプバーンが可憐な尼僧を力強く演じる、F・ジンネマンによるヒューマン・ドラマ。