溶岩の家(1989)

「子どもに死を、老人に生を」

原題も「Casa de Lava」(ポルトガル語で溶岩の家)

 

始まりがなく、終わりもない

映画の上映が終わった時、「私は無意識のうちに寝てたのか?」思ったほど

内容が飲み込めなかったんですけど(笑)

続けて「血」を鑑賞したら

ペドロ・コスタはこういう作風なんだな、と勝手に納得(笑)

つまりこれは人生の中で起こった事件の

一部を切り取ったものなのだろうと

人それぞれこの先に物語があり、この後にも物語はあるけれど

他人にはそれがどのようなものか、真実を知る術はないのです

 

映画そのものは非常に美しく、特に色彩の素晴らしさ

赤いワンピース、木にぶら下がった点滴ハンモッグりんご、犬、黒い子豚・・

どのショットも巨大ポスターにして

銀座の高級ブティックのショウウィンドウに飾れるレベル(笑)

ちなみにプロットは、ジャック・トゥルヌールの

「私はゾンビと歩いた! 」(1943)のパクリ・・オマージュということ(笑)

私たちが難解と思うのとは真逆に

ペドロ・コスタにとっては単純な物語だったのかも知れません

舞台はかつてのポルトガル植民地だった火山性の島国、カーボヴェルデ

カーボヴェルデは16世紀頃アフリカからの奴隷船奴隷貿易の中継点として栄え

ポルトガル人と(連行された)アフリカ人による混血が進んだことで

クレオール文化植民地で異なる民族融合し生まれた独自の文化言語 )が

発展したそうです

火山、そして無表情な女性たちのアップ

次にリスボンの病院

無邪気に洗面所で口紅を塗る女性看護師

ふたりのうちのひとり、マリアナは若く垢ぬけていて可愛い

そこに建設現場で働いていた出稼ぎの男、レオンが転落し(自殺と思われる)

運ばれ昏睡状態(植物人間)となってしまいますが

故郷のカーボヴェルデに戻してほしいという手紙と共に輸送費が送られてきます

カーボヴェルデまで担当看護師としてレオンに付き添うことになったマリアナ

しかしレオンの迎えは来ず

通りがかりのトラックに乗せてもらい

カーボヴェルデのいちばん近い病院まで送ってもらいます

マリアナリスボンから医療品も運んできていて

島の子どもたちに予防接種をして回ります

なぜか住民は皆、リスボンから来たマリアナのことを知っていました

そこでマリアナは医師や看護師兼飯炊き女

バイオリン弾きの老人バソエと末娘ティナ

ティナの親友で(マリアナをレイプしようとして、黒い犬を殺した?)少年タノ

バソエの何十人もいる息子達(レオンはその中のひとり?)

島で唯一の白人女性エディット(レオンの恋人だった?)と

その息子らしい若者

島の女アマリア、アリーナ・・たちと知りあい

エディットの息子とは肉体関係をもちますが

結局はよそ者ということでしょうか

リスボンからともにやって来た

寝たきりのレオンに一番愛情を感じてしまいます

しかし目覚めたレオンは

マリアナが手を貸そうとすると、激しくそれを拒絶します

アフリカ社会の大家族制度では

たったひとりの出稼ぎ労働者の収入によって

何十人もの家族が生活している場合があるそうで

(もしかして)レオンもそういうひとりではなかったのでしょうか

その重圧に耐えられなかった

この岩だけの島で作物が収獲(農業が)できるとは思えないし

何より島民が働いている様子が全くない

老人バソエとその息子たちは(レオンが生きる屍となったため)

ポルトガルに「出稼ぎに行く」と言いながら、実はその気もない

音楽を奏で、酒を飲み、踊り、嫌なことは忘れるだけ

あれほど閉鎖的で強固に見えた「家族」島の住民の絆は

稼ぎ手(生活保護のようなもの)がいなくなったことで、実は儚いものだと気付く

マリアナは溶岩の家に石を投げつけると

リスボンに帰るしかありませんでした

この場所には喪失しかない

それでも人々は生きていく

ペドロ・コスタは本作を「破綻した冒険映画」と表現したそうです

 

 

【解説】映画.COMより

ヴァンダの部屋」「コロッサル・ユース」などで世界的に高く評価されるポルトガルの映画監督ペドロ・コスタが1994年に手がけ、後の作品群につながる場所カーボベルデが初めて登場した長編第2作。カーボベルデの言葉や習慣、気候、歴史などを作中に取り入れながら、荒々しい色彩で描き出す。

看護師のマリアーナはリスボンの工事現場で意識不明になった男レオンに付き添い、彼の故郷カーボベルデに向かう。病人とともに荒野に取り残されてしまった彼女は島民に病院まで運んでもらうが、島の人々は誰も病人について語ろうとせず……。

本作撮影後、託された手紙をリスボンのフォンタイーニャス地区に届けたことから、「カーボベルデから届いた手紙」というコスタ監督作の重要なモチーフが生まれた。「ゴースト・ドッグ」のイザック・ド・バンコレがレオンを演じ、フランスの伝説的女優エディット・スコブが特別出演。日本では、コスタ監督の初期3作品を監督自ら監修した4Kレストア版にて上映する特集上映企画「ペドロ・コスタ はじまりの刻(とき)1989-1997」にて劇場初公開。

1994年製作/110分/ポルトガル・フランス・ドイツ合作
原題または英題:Casa de Lava
配給:シネマトリックス