
原題は「O Sangue」(ポルトガル語で血)
ペドロ・コスタが29歳の時に撮影した長編第一作目で
今なお「最も美しいポルトガル映画」と評されている本作
映画愛好家でもあるコスタが
フリッツ・ラング、溝口健二、ロベール・ブレッソン、ニコラス・レイといった
巨匠たちから得た知識を、多くのシーンやスタイルで明確にしているそうです

まさしく映画における(内容より)「映像の美」の勝利といった作品で
優美な陰影と光を捉えたカメラには感嘆するほかありません

タイトルの「血」とは血族(家族)のことだろうと思います

弟を探す青年と、妹を探す美しく若い女性
その青年がいきなり老人に殴られます
「ぼくになにを望む?ニノはどうするんだ?」
「死んだと言え」と去っていく老人

青年は17歳くらい(たぶん高校生)で名前はヴィセンテ
ニノとは彼の10歳くらいの弟のこと
老人はふたりの父親でした
老人は自分は重病だ、もうすぐ死ぬと家に戻って来て
すでに遺書を残し自殺を考えていますが、踏み切れないでいました
ヴィセンテは薬局に薬を盗みに入り
どうやらその後父親を殺した(自殺ほう助)ようです

父親の遺体を墓地に埋めようと
若い女性、ヴィセンテの恋人のクララに連絡し父親を運ぶのを協力してもらいます
(本当に埋めたかどうかまでは描かれない)

その後、ヴィンセンテはニノのためにクリスマスツリーを伐ろうと
斧を持って森の中を歩いていると2人組の男が現れ
父親に多額の金を貸していて3日前が返済の期限だったと迫ります

それからヴィセンテとクララはニノの親代わりとして彼の面倒を見ます
(死体遺棄という罪を共有したことで絆が深くなったのだろうか)
ニノはヴィセンテとクララのことがとても好きで
ニノとセーターを交換したり、ヴィセンテも本当は心の優しい青年
3人はひとときの間幸せな日々を過ごします
ニノとクララが水辺を散歩しているときクララは1本の木を
(ヴィセンテに教えられた)「幽霊が憑いた木」だから
近づいてはならないようニノに注意します
だけどニノは運試しだとその木のそばでメモ(作文)を読み
「夢をそのまま書いてはだめよ」とクララはニノに教えます

父親と連絡が取れないことを不審に思った叔父さんが訪ねてきて
父親の居所はどこだと問いただすと
ヴィンセンテは叔父さんを殴って追い出します

夏祭りに行くヴィセンテとクララ
水辺では一隻のボートが男の死体を発見し(ヴィンセンテの父親だろうか)
それを引き上げると野次馬が集まり、クララはショックを受けます
その場から立ち去るふたり

その夜、叔父夫婦がやってきて眠っているニノを連れ出します
どうやら叔父さんは裕福なうえ高級マンションに住んでいて
ニノを自分の息子のように育てるつもりのようです
(実の息子に障害があるため跡取りにしようと思ったのかも知れない)
叔父さんはニノに新しい服やおもちゃを買ったり
幼い息子と一緒に3人で水族館に行ったり
ホテルで高級な食事をしたりしますが
ニノが叔父さんに心を開くことはありませんでした

ニノを探しに叔父さんの家に探しに来たヴィセンテは
借金取りの男たちに見つかり連行されると
そこには父親の知り合いだという女性がいました
父親の居所を尋ねる女性(まさか殺したとは言えない)

叔父さんの家から抜け出したニノは、夜の公園でクララと会います
「前のように3人で一緒に暮らしましょう」とクララ
父親の居所を教えると嘘をつき逃げ出したヴィセンテは
水辺でクララと落ち合い抱き合きあいます

ニノはモーターボートを操縦していました
ボートの持ち主が「世界でもっとも偉大な発明はなんだと思う?」と訪ねますが
ニノが答えることはありませんでした

たぶんニノは、ヴィセンテとも、クララとも、叔父さんとの暮らしも
全てを捨てて自分ひとりで生きていく決意をしたのでしょう
それが可能であるかどうかは別として
【解説】映画.COMより
「ヴァンダの部屋」「コロッサル・ユース」などで世界的に高く評価されるポルトガルの映画監督ペドロ・コスタが、1989年に発表した長編デビュー作。コスタ監督自らが経験した映画史と自国の記憶を色濃く反映しながら、父親を殺した青年の物語を美しいモノクローム映像で描き出す。
冬のある日、青年ヴィンセントは病に苦しむ父親を安楽死させ墓地に埋める。弟にはそのことを伝えないまま暮らそうとするも、父親の消息に疑問を抱いた伯父がヴィンセントのもとを訪れ、弟を連れ去ってしまう。弟を取り戻そうとするヴィンセントだったが、父親の負債の返済を求める2人組が現れ……。
マノエル・ド・オリベイラ監督作の常連俳優ルイス・ミゲル・シントラが重要な役どころで出演。日本では、コスタ監督の初期3作品を監督自ら監修した4Kレストア版にて上映する特集上映企画「ペドロ・コスタ はじまりの刻(とき)1989-1997」にて劇場初公開。
1989年製作/95分/ポルトガル
原題または英題:O Sangue
配給:シネマトリックス