新聞記者 (2019年)

「君なら、自分の父親にどっちを選択して欲しい?」

原案は東京新聞の記者、望月衣塑子(いそこ) の同名ノンフィクション

 

望月衣塑子記者は前川文部科学省事務次官

TBS記者からのセクハラ被害を訴えた伊藤詩織氏のインタビューで注目され

2017年からは森友学園加計学園の取材チームに参加

「第23回平和・協同ジャーナリスト基金賞」奨励賞や

「メディアアンビシャス賞」特別賞を受賞

2020年からは日本学術会議問題、ウィシュマさん死亡事件による入管問題

コロナ禍での医療、雇用問題などを取材しているそうです

硬派な作りで意欲作ではあるけれど、残念ながら傑作とは程遠い

逆に日本の報道も、映画界も、結局のところは圧力に屈して

真実は追及しないという限界を証明してしまった

最後まで諦めず国家の汚職と戦おうとしているのは

新聞記者でもない、マスコミでもない

亡くなった財務省職員赤木俊夫氏の妻、雅子さんだけかも知れません

政府の認可した新設大学についての極秘情報のファックスが

東都新聞社会部に匿名(黒いサングラスの羊の画)で届き

帰国子女(父は日本人、母は韓国人でアメリカ育ち)の吉岡エリカは

上司でデスクの陣野から調査を任されることになります

そこで浮かび上がったのが、内閣府の神崎という人物

その矢先、神崎が自殺してしまいます

吉岡は内閣情報調査室の官僚、杉原に

元上司の神崎の自殺の原因を探って欲しいと頼みます

日本の芸能事務所で主演OKの女優がおらず

ヒロインを演じたのは韓国人女優シム・ウンギョン

なので(ネイティブではない)記者としての執拗な質問ができていない

曇りのない表情はよかったです

ちょっと口ポカンだけど(笑)

そして今の記者は、必要な情報や資料集めを行わないものなのでしょうか

大統領の陰謀」の時代ではないと判っていますが(笑)

特ダネは全てリーク頼み、裏を取ることもない

もし誤報と通知があれば実名を出すことで掲載を了承

もしかしたら国家のありかたを少しは変えれたかも知れないのに

マスゴミとはよく言ったもの、結局は官邸ともちつもたれつなんだな

21世紀は、ロックもジャーナリストも死んでしまった

新設大学の決定は大学総長が総理の友人だから

という理由だけではありませんでした

生物科学兵器などの研究や開発が目的だったのです

オウム真理教と同じじゃねえか

与党はどこまで新興宗教が好きなんだか

いくら総理の一存でも、違法は許されない

どうしても食い止めたい杉原

内閣府の上司、内閣参事官の多田は

「お前、子供が生まれるそうじゃないか」と言います

全てを見極めた鋭い視線、実際全て知っている

総理の考えも、政治のあり方が間違っていることも

そのうえで官僚の仕事とは何かを問う

杉原のしたことは間違っていない

吉岡エリカだってそうだ

それでも今の政権を守らなければならない

 

田中哲司さん、知性のある悪役がかっちょえええ

仲間由紀恵さんが惚れたのもわかる(笑)

東都新聞から新設大学のスクープが出た時

杉原は出産を終えた妻の奈津美と帰宅しました

都内を見下ろす高級タワーマンション

ポストに溜まった郵便物に、何日帰ってないのと笑う奈津美

郵便物の中には死んだ神崎から遺書とも思える手紙

新設大学の運営には、総理の友人の企業に多額の税金が注ぎ込まれ

その決済をしたのが自分であること

またも罪をかぶった、と綴られていました

すぐに週刊誌に東都新聞のスクープが誤報であるという記事が

過去の吉岡の父の誤報も交えて掲載されています

陣野は吉岡に続報の覚悟を問います、それは杉原の実名を出すこと

しかも他紙がスクープの後追い記事を出しているという

杉原に取材するため官邸に走る吉岡

その時吉岡のスマホに何者からか電話があります

「君のお父さんの記事は誤報ではなかった」

 

電話を切った多田は杉原を呼び出し

今持っている情報を忘れること

マスコミに誤報だと伝えることを条件に

出向元の外務省に戻れるよう口利きしよう

しばらく外国に行くといい

それくらいは私にも出来る、と伝えます

内閣情報調査室を後にした杉原

首相官邸前の交差点で吉岡と向かい合います

やがて信号が赤から青に変わる

杉原が何かを呟きますが、その声は届かない

映画はここでジ・エンドとなりますが

結局ふたりとも、長いものに巻かれたということ

最後には保身、赤木氏のように命をかけることはできなかった

その証拠に、森友・加計問題は今も解決されていない

 

その後突然、望月衣塑子記者から

赤木雅子さんへの連絡は途絶えたそうです



【解説】映画.COMより

「怪しい彼女」などで知られる韓国の演技派女優シム・ウンギョンと松坂桃李がダブル主演を務める社会派サスペンス。東京新聞記者・望月衣塑子の同名ベストセラーを原案に、若き新聞記者とエリート官僚の対峙と葛藤をオリジナルストーリーで描き出す。東都新聞の記者・吉岡エリカのもとに、医療系大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届く。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、強い思いを秘めて日本の新聞社で働く彼女は、真相を突き止めるべく調査に乗り出す。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原は、現政権に不都合なニュースをコントロールする任務に葛藤していた。そんなある日、杉原は尊敬するかつての上司・神崎と久々に再会するが、神崎はその数日後に投身自殺をしてしまう。真実に迫ろうともがく吉岡と、政権の暗部に気づき選択を迫られる杉原。そんな2人の人生が交差し、ある事実が明らかになる。監督は「デイアンドナイト」の藤井道人。第43日本アカデミー賞では最優秀作品賞、最優秀主演男優賞(松坂桃李)、最優秀主演女優賞(シム・ウンギョン)の3冠に輝いた。

2019年製作/113分/G/日本
配給:スターサンズ、イオンエンターテイメント