レッズ(1981)



タイトルのRedsは、共産主義者のこと


世界をゆるがした十日間の著者ジョン・リードと

その妻である女性解放運動の先駆者ルイーズ・ブライアントの半生

カメラはベルトリッチ組のヴィットリオ・ストラーロ



産業革命以後に広がった産業構造により

18世紀後半より資本主義社会の労働者は劣悪な条件の下で

過酷な労働を強いられていました
その虐げられた者たちを救おうという理論こそ共産主義であり

その時代の進歩的な考えの人々や、アーティストたちの希望であり

政治思想として信奉されることになります

しかし現実には労働者革命の限界の壁にぶつかってしまいます




ここまで正面からコミュニズムの内情を描き切った映画は
そうないでしょう

しかし、長すぎる
編集もよくない

主人公とヒロインの喧嘩しては仲直りの繰り返しに

共産主義運動の繰り返し

同じような場面が何度も何度もあるのです


これでは、男女の数奇な恋愛を見せたいのか

歴史的ロシア革命運動に揉まれる男を見せたいのか

どっちもつかず



ジョン(ベィテイ)が留守の間にルイーズ(キートン)に言い寄る

ノーベル賞劇作家)ユージン(ニコルソン)


自由恋愛主義者のルイーズは彼とも付き合いますが

結局ジョンと結婚するのです

だけどユージンからの手紙を見つけたジョンが、他の女性と寝た

(対抗意識で嘘だと思われる)と言えばキレて家を出てしまう

自分だけが自由恋愛主義者っておかしいだろ(笑)




でも取材のため、別れたふたりが一緒にロシアに行く

インターミッション(途中休憩)前のロシア革命のシーンはいい

そしてまたロシアでくっつくのです


ニューヨークに戻って見れば、社会主義革命家化していくジョンと

仲間と考えが折り合わずアメリカ社会党は分裂

妻の忠告も聞かずにロシア新政権下にひとり密航

しかし目的を果たすこともできず、帰国も叶わず

ロシア国境を超えようとしてフィンランドで捕虜になり投獄




こういう勝手に外国の危険地帯に行き、捕虜になってしまう

理想だけで何の結果も出せない

ご迷惑な人間は昔からいたのだと認識させられます



ルイーズはルイーズでユージンのコネを利用してフィンランド密入国

既にロシアとの捕虜のトレードで解放されていたジョンを追い

ロシアで中東の党大会へ行ったジョンを待ちます

再会を果たしたとき、ジョンの病気は悪化して死を待つだけでした




自分の「理想」は他人の「理想」なのでしょうか

世界を自分の「理想」にすることは可能なのでしょうか


現実には何も成し遂げることができない

理想を追い求めるだけの、屁理屈人間

でも、100年前のこのひとりの男の言っていることが

今もなお、引き継がれているような気もします




【解説】allcinemaより

ビーティが製作・脚本・監督・主演の四役をこなす意欲作で、好色漢として以上に?リベラル派として名高い彼らしく、テーマは、ロシア革命に立ち合い、歴史的なルポ『世界をゆるがした十日間』を著したジョン・リードの生涯。高まる労働運動の中、政治意識に目覚める新聞記者リード。第一次大戦からロシア革命--という激動のヨーロッパを肌で感じ取り、アメリカでも共産主義運動を広めようとするが、既に大資本主義国家として揺るぎなく屹立したかに見えた祖国で、彼の闘争は空しく映った……。私生活のパートナー役に(現実もそうなった)D・キートン(夫を捨て、彼と自由な関係を保つという役柄である)、友人の劇作家E・オニールにはJ・ニコルソン(好演)。実際にリードを知る在米知識人の回想コメントを挿みながら(W・アレンが疑似ドキュメント「カメレオンマン」で試みた方法でもある)、事実の重みたっぷりに描く現代史ロマン。V・ストラーロキャメラも美しい(オスカー撮影賞)。