ゴッド・タウン(2014)



「“ゴッズ・ポケット”の男たちは単純だ

働き、野球を観戦し、結婚をして子供を持つ、町を出るものはいない

ほぼ全員が盗みの経験者で、子供の頃人の家に放火

戦うべきときわれ先にと逃げ出す連中

イカサマが好きで親は子供を殴る

何があっても町を離れないし誰も変わることはない

町を出ることだけは、決して許されないのだ」


原題は「God'sPocket作中での町の名前のこと

なぜ「ゴッド・タウン」になったのかは意味不明(笑)

未公開ということですが、私はなかなかよかったと思います




1980年代、フィラデルフィア郊外にある労働者階級の町ゴッドポケット

世の中には死んだほうがマシな、どうにもならないクズがいて

レオン(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズもそのひとり


いつもナイフを持ち歩き、女をレイプした話を自慢する嫌われ者

同じ作業場の黒人の老人にそのナイフを突き立てふざけているとき

落ちていたパイプで老人はレオンを殴ってしまいました




レオンは倒れ、死んでしまいます

工場長はクレーンに頭を打ったのだと警察に報告し

従業員たちもそれに同意

警察も面倒なことにはかかわりたくないのでしょう


誰かが死んでも、なにも無かったことにする

それがこの町




しかし母親のジェニー(クリスティナ・ヘンドリックス)だけは

レオンの死を不審に思い

調べるように言います


ミッキーは盗みをして生計を立てているような男で

レオンの本当の父親ではありませんでしたが

根はやさしい人間なのでしょう




親友のバード(ジョン・タートゥーロのツテで
ヤクザに事故の調査を頼みますが

このヤクザも死んだほうが世の中にためになる奴ら

ヤクザは工場長を脅しにいきますが、なんと工場長がめっちゃ喧嘩に強い


今度はバードに因縁をつけにいきますが

バードの花屋のおかみもめっちゃ強い

ヤクザを銃殺し、正当防衛だと言い放ちます

そんな事件もいつのまにかなかったことに(笑)




そんないざこざの中でも息子の葬儀はあげなきゃいけない

ミッキーは高級なマホガニー製の棺を買うために

町のみんなからの「葬儀代」のカンパすべてを競馬につぎ込み

そして負けます


人間ツイていないときは、とことんツイていないもの


ミッキーが金がないと知り

葬儀屋はレオンの遺体を、なんと道に放り投げるのです

ミッキーはその遺体を担ぎ、食肉の冷凍車に保管します


今度はその冷凍車を売り、葬儀代にしようとするものの

冷凍車は事故で大破




不幸は続き、レオンの事故の取材のために訪れた
アル中の新聞の記者、リチャード(リチャード・ジェンキンス)と

ジェニーが寝てしまうのです


そのことは、瞬く間に町で噂になり

よそ者のインテリ男に対するひがみもあるのでしょう

リチャードも町の男どものリンチに遭い、死んでしまいます

犯人のことは誰も警察にはチクらないでしょう

それがこの町の掟




人種差別だけではない

先に住み着いている者の、新参者に対するヨソ者扱い


これは、アメリカ社会全体への痛烈な皮肉

だけど、同時に愛国心も伝わってくるのです
出来の悪い子ほど可愛い、と似たような感情でしょうか


救いようのないラストが好きな方におススメ

だけどどこかユーモラス


この作品の公開後すぐ、フィリップ・シーモア・ホフマン46歳で亡くなり

これが事実上の遺作ということです




【解説】allcinemaより

2005年の映画「カポーティ」でアカデミー賞主演男優賞を獲得、2014年に46歳の若さで亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマン出演作。労働者の町を舞台に描かれるクライムドラマ。
 1980年代、フィラデルフィア郊外の町ゴッドポケットには、労働者階級の人々が多く暮らしていた。そんな中、ダメなチンピラ中年であるミッキーの息子レオンが死亡する。レオンは妻ジェニーの連れ子で、いつもナイフを持ち歩き職場の嫌われ者だった。レオンは怒らせた相手の黒人に撲殺されたのだが、職場の人間たちが犯人をかばい事故死とされたのだ。ミッキーはレオンの葬儀を執り行うが、地方記者のリチャードが事故に対し疑いの目を向け始める。