肉弾(1968)





まさか戦争をコメディにしてしまうとは。
今でいうと自虐ネタ、とてもシュールです。
このセンスは凄い、現在ならありえない。

ある二等兵の「あいつ」はあまりの空腹のため
人間から、食べた食物を吐いてはまた飲み込む牛になり
さらには上官の命令で豚(裸)にされてしまいます。
しかし特攻隊員になったことで、イキナリ「神」にされてしまいます。

でも「あいつ」にとってはなにもかもが
「たいしたことはない」それだけのこと。

「神」なったことで与えられた豪華な食事と酒。
そして、1日だけの自由に過ごせる休暇。

「あいつ」はまず本屋に行き老夫婦に出逢います。
そこで聖書と、放尿する快感と
観音様のような女性と結婚するという啓示を受けます。

明日は神だが今日は人間、次は女郎屋へ向かいます。
そこでたくさんの怪物女と、エプロンおばさんと
観音様のような女学生に出逢いました。
そして奇跡のようにその女学生と結ばれます。

浜辺であった昆布拾いの男の子。
みんな空襲で焼け死んだという。
手に入れた手榴弾を並べ掛け算の勉強をする・・

今でもテレビなどで、海外の紛争地帯の映像で
武器を手にする幼い子どもを見ることがあります。
日本でもかってはそうだったのですね。

こんなドラム缶で作った人間魚雷で敵を倒せると、何故思ったのか。
当時の指導者の考えには正直疑いを持ちます。
精神論だけで何の根拠もありはしない。

ただ、カッコ悪く、ぶざまに死んでいくだけ。
でも「たいしたことない、それだけのこと」。

私が今まで見た映画の中でも
断トツのブラック・ユーモアかもしれません。

いかにも戦時中を想像させる寺田農さんの痩せた体系。
壊れた眼鏡、諦め、あまりにもイタい。

最近の戦争映画でも、俳優さんはダイエットくらいしろと思いますよね。
グルメな体系に顔は、あまりリアル感がございません。笑

これもまた、戦争を知ることのできる作品のひとつでしょう。
映画ってスゴイ、そう思います。



【解説】allcinemaより
「独立愚連隊」「日本のいちばん長い日」の岡本喜八監督による戦争ドラマの傑作。特攻隊員となった若者が作戦遂行直前に与えられた一日だけの休日に体験した瑞々しい出来事を通して戦争の愚かさとそれによって踏みにじられた幾多の青春への思いをコミカルなタッチで痛切に描く。
 昭和20年夏。“あいつ”は魚雷をくくりつけたドラム缶に入り、太平洋上に浮かんでいた。特攻隊員のあいつは一日だけの外出で色々な人たちに出会った。古本屋の老夫婦、砂丘で知り合った兄弟とおばさん。参考書を持った美しい少女とは、やがて防空壕の中で結ばれた。しかし、その少女は空襲で死んでしまった…。あいつは魚雷と共に復讐へ向かった。そして、ついに敵らしき船を見つけた。