この世界の片隅に(2016)




この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう」



109シネマズにて鑑賞


2016年度ベストワンとまで絶賛され
とても評価の高い作品ですね

私の場合は、見ている時よりも
見終わったあとからジワジワと感じるものがありました

その理由は女性目線から描いた戦争映画だからだと思います
軍人でもない、戦場でもない、普通の主婦の物語

本当は影で泣いて、泣いて、いただろうに
表では笑顔で耐える姿には心を打たれるものがあります

ただ、知らない用語や方言も多く
エピソードの理解できない部分もあって
もういちど(できれば字幕付きで)見直したいです



広島で育ったすずは絵を書くのが好きで、妄想家
18歳のとき縁談があって呉の北條家に嫁入りします

この頃の結婚って、女性にとっては就職みたいなものですね
親族も近所の人も、職場の上司か先輩のようなもの
何を言われても、どんな労働でも素直に従うだけ

しかも戦時下、配給は乏しく、生活は苦しい
それでも、雑草などを利用しあれこれ献立を考え
逞しく生きようとする家族

空襲のシーンは、実写にも劣らぬリアルな描写でした
美しい空から降ってくる銃弾、投下される爆弾
アニメだからこそ出来るカラーですね

気になったのは、すずの幼馴染水原が一晩泊りにきたこと
その時夫は「最後かもしれないから」と
すずを水原の寝床にやり家の玄関に鍵をかけます

戦争中は軍人に夫は妻さえも差し出したのかと
複雑な気持ちになりますね
国のために、何もかも我慢する

わが子同様に可愛がっていた晴美を時限爆弾で亡くし
大切な右手も失ってしまう
兄は石ころになってしまい
両親を原爆で死に、妹は原爆症で寝たきりに

それでも誰も恨まない
生きていくだけ

戦争は終わりました
ラッキー・ストライクの煙草の箱の入った残飯炊きを
「うま~い♪」と食べるシーンが印象的


「みんなで笑って暮らせたらええ」


「幸福だから笑うのではない、笑うから幸せなのだ」という
アランの「幸福論」の一節を思いだしました

この作品がこれだけ人気になったのは
NHKの朝の連続ドラマのようなストリーと展開のため
多くの人が好きで、馴染みやすかったのだと思います

誰にとっても、平和が、自由が
食べ物のあることが、いかに幸せなのかと
考えるきっかけとなる1本ではないでしょうか



【解説】シネマトゥデイより
「長い道」「夕凪の街 桜の国」などで知られる、こうの史代のコミックをアニメ化したドラマ。戦時中の広島県呉市を舞台に、ある一家に嫁いだ少女が戦禍の激しくなる中で懸命に生きていこうとする姿を追い掛ける。監督にテレビアニメ「BLACK LAGOON」シリーズや『マイマイ新子と千年の魔法』などの片渕須直、アニメーション制作にテレビアニメ「坂道のアポロン」や「てーきゅう」シリーズなどのMAPPAが担当。市井の生活を壊していく戦争の恐ろしさを痛感する。
1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。