血と怒りの河(1968)




珍しいブリティッシュ西部劇。
西部劇としてはあまり見たことのない変わった雰囲気ですね。
とてもクールな出来栄えだと思います。

テキサスの開拓者集落で独立記念日を祝っていた入植者たち。
そこに現れたメキシコの盗賊、オルテガの一団は
抵抗するものを殺し金品を盗みます。
オルテガの息子のひとりは医者の娘であるジョアンヌを襲おうとします。
ジョアンヌを助けるため
仲間であるオルテガの息子を殺してしまったブルー(アズール)。
彼もまた大けがを負ってしまいました。

娘を救ってもらった医者はブルーを治療し家に住まわせます。
青い目で金髪のメキシコ人、謎に包まれたブルー。
ジョアンヌとブルーは次第に親しくなっていきます。
ジョアンヌに好意を寄せている青年ジェスはそれが気に入らない・・

しかしある夜、オルテガがブルーを迎えに来てしまいます。

女への愛と、育ての親への故郷への思いで苦しむブルー。
ジョアンへの愛を選んだブルーはメキシコに帰ることを拒びます。
そして怒ったオルテガ一団と町の住民達は対決するのです。

凶暴だけれど繊細、怒りとやさしさ、そして美青年。
そんな複雑な思いの主人公をテレンス・スタンプ
魅力いっぱいで演じていました。

ラストの河での対決はとてもいいですね。
メキシコで死なせてくれと願うオルテガを抱いて
河を渡ろうとするブルー。
そのブルーを撃つのは兄弟として育った瀕死の兄でした。

これで良かったのです。
開拓者の町は所詮、ブルーの生きられる場所ではないのです。
ベッドの上で安らかに死ねる男ではないのです。

マノス・ハジダキスのテーマ曲も
哀愁たっぷりに聞かせてくれます。
まさに異色の西部劇でした。



【解説】allcinemaより
幼い頃に両親を亡くし、盗賊の首領オルテガに育てられた男ブルー。彼は長じて、仲間の一人となり、オルテガの息子たちと共にある村を襲う。だが、そこで一人の娘が犯されそうになったとき、ブルーはオルテガの息子を射殺する。実の親子以上に、互いに愛情を抱いていたオルテガとブルーは、国境の河をはさんで対決する……。ハリウッド製の西部劇だが、監督はイギリスから来たS・ナリッツァーノ、主演が「コレクター」のT・スタンプという変わりダネ。原色を用いたセット・シーンをはじめとして撮影も美しく、純正西部劇とも、マカロニ・ウェスタンとも少し違う雰囲気が悪くない。ヒロインのJ・ペティット、傍のK・マルデンも抑えた芝居でいいが、やはり作品全体を支配しているT・スタンプのクールな魅力に尽きる。国境の河を舞台にしたクライマックス、それに続くラスト・シーンも鮮やかだ。