チャッピー(2015)



人工知能ロボットが人間に変わって仕事をすることに
賛否両論ありますが、私はどちらかといえば肯定派
仕事を間違えたり、忘れたり、サボったりしないし
愛想笑いをしたり、話をあわせたり、気を使わなくてもいい

ハラスメントやいじめという人間関係のトラブルもなくなる
仕事も早く終わるし、ストレスも減るような気がするからです


しかしいくら人工知能が発達しても、使う人間がバカだと
結局なにも変わらないのだと
それどころかヒドくなる可能性さえあるのだと
考えさせられました



依然として治安が悪い近未来の南アフリカヨハネスブルグでは
Tetravaal社の「スカウト」と呼ばれるロボット警官が導入され

犯罪撲滅に成果を挙げていました


「ロボット部品の一部が中国製で、製造は南ア」という設定
もの造りフロンティア中国の後、アフリカ大陸に移るだろうと
経済学者らが予想しているからだそうです


その中でソニーパソコンや
トヨタのパトカーが登場しているのには
たとえフィクション少し安心しました
もしかしたらブロムカンプ監督は日本贔屓なのかも知れません(笑)



「スカウト」の開発者ディオンは新しい人工知能

廃棄される警官ロボにインストールし「チャッピー」と名付けます

しかしチャッピーはギャングのニンジャ、ヨーランディ、アメリカの

3人組に強奪され、彼らに育てられることになるのです


ニンジャとヨーランディはケープタウン出身のラップグループ

ダイ・アントワード(DieAntwoord)

リードラッパー(Ninja)サイドラッパー(Yo-Landi)で

日本では知名度が低いものの欧州では人気が高く
独特なパフォーマンスにカルト的信者が多くついているそうです



ヨーランディは目覚めたばかりの臆病なチャッピーに母性が目覚め(笑)
「ママよ」と絵本を読んだり優しく接し

外見は違っても関係ない、大切なのは心だと教えます

ニンジャはニンジャで「俺がパパだ」と、ギャングの振る舞いから
武器の使い方、強盗の仕方まで訓練しようとします


チャッピーは少年たち襲われ火炎瓶を投げつけられたり

スカウトの対抗機「ムース」を開発する

ヴィンセントヒュー・ジャックマンに「殺され」かけることで

恐怖や死の概念を理解して「生きる」という目的を持つようになり




バッテリーが切れたら死んでしまう、そのためには新しいボディが必要

「意識」さえ違う機体に移せば永遠に生きられる

そして、そのことを人間にも応用しようとするのです


人間は生殖本能で種を残そうとするわけですが、ロボットはそうはいかない

人工知能が「自己保存」を自ら学んだ結果は

「死んだら新しいロボットに意識を移せばいい」




それにしても、これでは開発者が無責任すぎます
チャッピーを目覚めさせたのもそうですが
ヴィンセント仕掛けたウイルス警官ロボがダウンしたのを知っても
ディオンは上司に報告もしない(笑)
一方のヴィンセントも自らの開発のためには手段を選びません

ヴィンセントの陰謀でヨーランディはムースに殺されてしまい
怒ったチャッピはヴィンセントをボコボコにします
(ジャックマンのまさかのこの扱い)



しかもあんな普通に売っているUSBモリー
人間の意識が全部保存できるなんて(笑)

設定は「ロボコップ(1987)によく似ていますが
意識のバックアップがあれば何回死んでも大丈夫という
ゲーム的な感覚はこちらのほうが恐ろしい

倫理観を全く無視した結末を、あなたはどう感じるか




それでもこのB級感漂うグロテスクな世界観を

ここまでファンタジックまとめ上げたセンスはなかなかのもの

「人間とロボット」の関係に深く切り込んだ一作だと思います



【解説】allcinemaより

「第9地区」「エリジウム」のニール・ブロムカンプ監督が、警察の戦闘用に開発されたAI(人工知能)搭載の学習型ロボット“チャッピー”を主人公に描く近未来ハード・バイオレンスSFアクション。ひょんなことからギャングに育てられることになったチャッピーの“成長”の行方と、様々な人間の欲望と思惑に翻弄される彼を待ち受ける衝撃の運命をスリリングに描く。「第9地区」のシャールト・コプリーがチャッピーのパフォーマンス・キャプチャーと声を担当。共演にデヴ・パテル、ヒュー・ジャックマンシガーニー・ウィーヴァー
 2016年。南アフリカの犯罪多発都市、ヨハネスブルグ。ディオンは警察用ロボットを開発する軍事企業テトラバール社に勤める才能溢れるエンジニア。彼は世界初となるAI搭載の戦闘用ロボットの製造を会社に提案するが、却下されてしまう。そこで、会社には内緒で独自にAIロボットを製作するが、あろうことかギャングに誘拐されてしまう。ギャングたちは、“チャッピー”と名付けたそのロボットに強盗を手伝わせようと目論んでいた。そんなギャングたちが与える知識を、スポンジが水を吸うように吸収し、急速に成長し始めるチャッピー。そんな中、ディオンの同僚で彼に激しい敵意を抱くヴィンセントがチャッピーの存在に気づき、ある奸計をめぐらすが…。