血槍富士(1955)




内田吐夢の戦後復帰第一作品のため
伊藤大輔小津安二郎清水宏溝口健二が参画したという時代劇
そんな逸話を聞くだけでもうれしくなります(笑)



東海道を江戸へと向かう旅人たち
酒癖は悪いけれど心優しい若様
それにお供する従来と槍持ち
宿なしの少年、旅芸人の母娘

身分も目的も違うけれど
ともに旅をするうちに
友情のようなものが芽生えていきます

ちょっとコメディで、心温まるのどかな人情もの
それがラストでは全く違う展開をみせることになりました

権力を盾に自分たちより身分の低いものを虐げる武士たち
それに腹を立てた若様と、若様を止めようとした従来は
なんと武士たちに殺されてしまうのです

女性を手籠めにしようとしたり
無抵抗の人間を斬ったり
しかも大人数、なんて卑怯な奴ら

槍持ちの仏のような顔が、怒りで鬼の形相に変わり
敵討ちのために、武士5人を相手に戦を挑みます


希望に満ちた旅のはずなのに
待っていたのは戦いと無残な死だけ



これは内田吐夢監督から
戦争で亡くなった兵士や犠牲者への
鎮魂歌なのだったかもしれません



可愛らしいふたりの子役は
片岡千恵蔵さんの実子なのだそうです
千恵蔵さんと息も見事にぴったりでしたね(笑)

製作年よりさらに古く感じる映像は
江戸時代における風俗を描写するためでしょうか
確かに江戸時代の情緒を感じる名作だと思います



【解説】NHKオンラインより
日本映画創成期から活躍する巨匠・内田吐夢監督が、溝口健二小津安二郎清水宏伊藤大輔ら豪華メンバーの企画協力を得て13年ぶりにカムバックを飾った戦後第1回作品。片岡千恵蔵の代表作のひとつともいわれる。酒のいさかいから主人を殺された槍(やり)持ち権八のあだ討ちを、旅芸人母子、小間物屋、大金を持った男と大泥棒など、東海道を旅するさまざまな人々の人生の縮図を通して描く傑作時代劇。