左きゝの拳銃(1958)






アーサー・ペン(35歳)の初監督作品であり
ポール・ニューマン(32歳)の初主演作品

最初はジェームス・ディーンが出演予定だったらしく
やはりディーン向けに書かれた脚本なんだなと感じます
公開当時は暗い内容と不評だったということですが

21人を殺し21歳で殺された、伝説の英雄となったアウトロー
このような血気さかんな若者の純情と暴走というかたちの
表現もありだと思います
ニューマンも若気の至りを熱演していたのではないでしょうか


馬を失い腹を空かせ彷徨っていた得体の知れない若者に
スコットランド出身の牧場主スタントールは馬と仕事を与えます
このビリーとあだ名をつけられた若者にスタントールは親切で
聖書を読み、教え、そしてプレゼントします

字の読めないビリーにとって聖書は無意味なものですが
人にやさしくされた経験はあまりないのでしょう
心の中でスタントールに忠誠を誓ったに違いありません

そのスタントールが、軍に納める牛の値段を安くしたと
商売の邪魔だと、町の実力者たちに卑怯なやり方で殺害されます
ビリーが復讐に燃えてしまうのもしょうがない



しかしそのことが仲間まで巻き添えにしてしまい
逃げるのにも行く場所がないことに気が付きます
恩人の鍛冶屋(奥さんが梅宮アンナにそっくり)まで傷つけてしまう
彼がやったことは、破滅に向かうだけのことだったのです


スタントール殺害とビリーの復讐は「リンカーン郡戦争」という
アメリカでは有名な事件でビリーは牧童ではなく
用心棒として雇われていたそうです
左利きという設定は「最後の無法者」(1941)からで
ビリーの写真が反転していたためで本当は右利きということ

アメリカでビリーがここまで人気なのは
やはり権力をかざし、汚職にまみれた
そんな有力者や役人を許さなかったからということでしょうか

史実は知りませんが、私には英雄というよりも
分別のない、寂しい子どものようにしか思えませんでした



【解説】allcinemaより
西部史に名高い“ビリー・ザ・キッド”の内面に迫った異色のウェスタン。恩人を殺されたビリーは、牧童の仕事を捨て、復讐のために拳銃を手にする。やがて彼は仇を討つが、拳銃を手放すことはしなかった。そしてそれは、彼を破滅の道へと導いていく……。史実を大胆に脚色し、P・ニューマンがビリーをニューロティックに演じる。