レッド・ムーン(1968)

 
原題の「Stalking Moon」のStalkingは
獣が音もたてずに獲物に忍び寄るさまということなのだそうです
今で言う「ストーカー」で、執拗に相手に近づくのです
これはスピルバーグの「激突!」よりはるか昔に描かれた
姿が見えない襲撃者の恐怖という、異色西部劇
 
アラバマ物語」(1962)のロバート・マリガン監督×ペックだけあり
アクションだけで終わらず、どこか情感があります
カメラはチャールズ・ラング、砂埃舞う荒野の映像が美しい
 
 
白人とインディアンとの戦いも終わりに近づき
騎兵隊は居住区からの脱走者を制圧するような日々を送っていました
 
この道15年のサム・バーナー(グレゴリー・ペック 52歳)は隠居し
貯めたお金で牧場を営む予定でした
しかしたまたま捕えられたインディアンの中に
子どもを連れた白人女性が紛れ込んでいるのを発見します
 
サラと名乗るその女性は過去に一家を殺され
連れ去られ結婚させられた、そういうことなのでしょう
彼女の夫は、息子を取り返すため後を追う孤独な戦士でした
 
姿さえ見せず、遭遇した白人たちを次々と殺していきます
 
 
 
サラもその息子も一切の感情を示しません
だだその場から逃れたいと言うばかり
サム・バーナーは行き場のない親子を哀れに思ったのでしょう
自分の住まいに連れていくことにしました
 
そこにまで殺し屋のインディアンはやってきます
見えない恐怖
 
サム・バーナーは紳士でやさしい男ですが
銃撃を逃れるため子供を盾にするところなど
決して完全無欠のヒーローでないのが人間らしい
怪我の応急処置の手つきなどもリアルで
他の作品では聖人君子的なペックがハードな肉弾戦を見せています
 
 
同情や憐れみが、いつか愛情になり
サム・バーナーとサラは将来結ばれるかもしれません
 
だけど、はたしてハッピーエンドでしょうか
なぜなら、一言もしゃべらない息子が一番怖いからです
彼はいつか父親の敵をとるかも知れないのです
 
 
ホラー映画の先駆けのような西部劇で
今でこそレトロですが、当時は相当怖かったのではないかと思います
アメリカ映画の歴史を感じるような1本でした
 

 
【解説】allcinemaより
アリゾナ、1881年。10年間アパッチに拐われていた白人女性とその息子を救出した案内人は自分の家に親子を連れ帰るが、彼らの跡を子供の父親である凶暴なインディアン戦士が追いかけて来た。姿を見せずに襲撃を繰り返すインディアンの恐怖をホラー映画ばりに描き出した異色のアクション編で、製作アラン・J・パクラと監督R・マリガンの「アラバマ物語」のコンビが手掛けたとあって普通の西部劇に比べてかなり奇妙な仕上がりになっている。