あの子を探して(1999)

 
原題の訳は「1人もやめさせるな」
 
ドキュメンタリーかと錯覚するかのような
リアリティさを感じる作品でした
 
中国の農村部の学校で臨時教師になった13歳の女の子、ミンジ
老先生は自分が休暇を終え戻ってくるまで
生徒が1人もやめなかったら、町長がさらにボーナスも払うといいます
 
もちろん、教えるほうも子ども、教えられるほうも子ども
まともな授業ができるわけではありません
ただ教科書を黒板に写し、それを生徒がノートに写す
お互いあまりやる気はない(笑)
 
ただ、お金を手にいれることに関してだけは
こんな幼いころから、恐ろしいほど現実的
勝手にレンガを運んでは「手伝ったんだから金払え」とか
ひたすらお金の計算が、作品の前半を占めます(笑)
それでも、初めて飲むコーラの味は美味しそうでしたね
 
やがてひとりの少女が足が速いという理由で転校
そしてホエクーというクラスで一番やんちゃな男の子も
家族の病気のため、都会に出稼ぎに出てしまうのです
 
このままではお給料がもらえない
ミンジはひとり、ホエクーを探しに行きます
やっと探したホエクーの勤め先
だけど彼はそこから逃げていなくなっていました
 
お給料のためには、諦めるわけにはいかない
 
ミンジはテレビ局に向かい、テレビカメラの前でホエクーに呼びかけます
思わずホエクーを心配し、思わず涙が出てしまう
その番組を偶然見たホエクーもまた、ミンジを見つめます
 
ふたりとも、まだまだ純粋で、無鉄砲で
そして幼いのです
 
私の職場にも中国出身の方が一緒に働いていて
もちろん、仲良しではあるのですが
 
時には、自己中心的だなとか
お金の話ばかりする人だなと
度々、思うときもありました
 
だけどこのような作品を見ると
なぜそうなのか、そんな国民性が
少しだけ理解できるような気もします
 
 
 
クラスメイトと再会し、勉強に励もうとするホエクーと生徒たち
しかし彼も、もしかしたらほかの生徒のだれかも
また家族の生活のため、都会に出稼ぎに出されたり
家の手伝いのため学校に来れなくなるのです
 
お金さえあれば、仕事さえあれば
もっとましな生活になれる、そんな純粋を教えられる
 
私はいい作品だと思いました
 
こういう、欲に正直な作品はそう多くないと思います
生きるための逞しさと人間愛を描いた、そんな秀作でしょう
 

 
【解説】allcinemaより
紅いコーリャン」「菊豆」のチャン・イーモウ監督作品。舞台は中国の小学校。カオ先生が私用で1ヵ月間学校を離れることとなった。そして、まだ13歳の少女ウェイが村長の指名で先生の代行を務めることに。突然28人のやんちゃな生徒たちをまとめる役目を請け負ったウェイだが、生徒が一人も辞めなければカオ先生から褒賞金を貰えるとあって懸命に生徒たちを見張り続ける。そんなある日、生徒の中で一番腕白な少年チャンが登校せずに町へ出稼ぎに行ってしまう。生徒たちの協力で交通費を手にし、チャンを連れ戻しに町へ向かうウェイ。しかし、すぐに会えるどころか、チャンは行方知れずとなっていた。様々な手段を講じても一向に探し出せず、困り果てるウェイだったが…。ヴェネチア映画祭で監督自身2度目のグランプリを受賞。