学校(1993)

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山田洋次の日本映画の優等生らしい作品

東京下町のある夜間中学校が舞台

 

生徒は7

競馬好きのイノさん(田中邦衛

清掃会社で働くカズ(萩原聖人

中学で不登校になったえり子(中江有里

在日で焼肉店を営むオモニ(新屋英子
シンナー中毒だったみどり裕木奈江

中国残留孤児の二世のチャン(翁華栄

脳性まひで障害をもつオサム(神戸浩

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その中のひとりイノさんが故郷の山形で急逝したと

担任の黒井先生=クロちゃん(西田敏行)のもとに連絡が入ります

クロちゃんは授業をホームルームに変え

生徒たちとイノさんの思い出を語ります

 

圧倒的なキャラクターであるイノさんのエピソードは

実在した生徒による実話ということ

田島先生(竹下景子)への恋心は

最初からフラれることはわかりますが(笑)

やっぱ可哀そうというか、せつなかったですね

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夜間中学に通う生徒の共通点は、不登校などで義務教育を終えていない

または戦後の動乱や、外国籍で学校に通えなかった人たち

いわゆる文盲で、授業もひらがなやカタカナの読み書きや

算数も足し算、掛け算といった小学生1~2年生で習うもの

 

でも、大人になってから読み書きを覚えることは

想像以上に難しく、苦労するんですね

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しかも肉体労働者だったり

外国籍で待遇が悪かったり、差別を受けたり

格差社会の底辺で生きてきたのです

苛立って何もかも投げ出したくなるときもある

 

だからクロちゃんは幸せとはなにか

人生とはなにかと生徒たちと一緒に考えながら

ときにユーモアを交えながら

「勉強すること」や「学校」の意味を探ろうとします

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いい年をした大人が、ひらがなが書けたと喜んでいる

そんな人生が幸せなはずがないと言うカズに

人生とは不幸なものだから、自分は幸せだと

自分に言い聞かせていないと生きていけないとオモニ

みどりはクロちゃんに声をかけられ

学校で自分の居場所を見つけたことで幸せな気持ちになれたと言う

 

大切なのは自分を必要としてくれる場所

なんだかんだ文句を言ったり、喧嘩しながらも

過疎地の少人数しか生徒にいない分校のように

みんなが家族のように思いやり、仲良くなっていく

最後クロちゃんは皆に「ありがとう」と授業を締めくくります

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帰り道、えり子は学校の先生になることをクロちゃんに約束します

卒業したら高校大学に進学して、この中学校に教師として戻ってくると

教え子にそんなことを言われ時が

教師としていちばん嬉しい時でしょうね

 

いい人すぎに、いい話すぎて

正直あざとく感じる部分もあるのですが(笑)

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この映画がきっかけで今まであまり知られていなかった

夜間中学校の認知度が高くなったということ

子どもの頃学校に行けなくなったり、外国籍の人たちが

学校に行きたい、勉強をしたいと思う

もしかしたらきっかけになったかも知れません



2021年の時点で、全国の夜間中学校の数は36

およそ1200人の人たちが学んでいるそうです




【解説】KINENOTEより

東京・下町にある夜間中学校を舞台に、様々な境遇を持つ生徒たちと先生との交流を描くドラマ。監督・脚本は「男はつらいよ 寅次郎の青春」の山田洋次で、彼の十五年来暖めていた企画の映画化。脚本は山田と「スペインからの手紙 ベンポスタの子どもたち」の朝間義隆の共同。撮影は「男はつらいよ 寅次郎の青春」の高羽哲夫と「夢の女」の長沼六男の共同。キネマ旬報ベストテン第六位。 下町の一角にある夜間中学の教師・黒井は、

卒業式も近づいたある日、卒業記念文集のための作文の授業を行う。原稿用紙にそれぞれの思いを綴る様々な職業、年齢の生徒たちの横顔を見ながら、黒井は彼らとの思い出を振り返る。孫もいる年になって入学してきた在日韓国人の女性・オモニ。髪の毛を染めたツッパリ少女・みどり。昼間は肉体労働に励む少年・カズ。父は中国人、母は日本人で五年前に中国から移住してきた青年・張。自閉症で登校拒否児だったえり子……。やがて給食の時間に、クラスの一員・イノさんが死んだという悲しい知らせが届く。突然の訃報に悲しむ黒井と生徒たちは、食後のホームルームの時間、イノさんの思い出を語り始める。不幸な生い立ちとその後の苦労、田島先生への恋心。そして突然病に倒れ、故郷の山形へ帰ったきり帰らぬ人となったこと。イノさんの人生を語り合ううち、いつしか黒井と生徒たちは人間の幸福について話し合うようになっていった。生徒と先生が汗を流して語り合う、これこそ授業だと確信する黒井先生に応えるかのように、えり子が、自分も夜間学校の先生になる、そしてこの場所に戻ってくる、と決意を語る。外はいつしか雪になっていた。