原題は「Wonder」
ワンダーは「不思議」や「驚き」という意味がありますが
ここでは「奇跡の子」ということ
トリーチャーコリンズ症候群とは、遺伝子の突然変異によって
頬や顎の骨が未発達、または欠損した状態で生まれ
耳の穴がなく聴力障害を伴うこともある5万人にひとりと言われる疾患
そのため健常者と同じような日常生活を送るために
何度も形成手術をする必要があるのです
主人公のオギーは10歳の男の子
生まれた時から入退院を繰り返し、27回の手術を受け
小学5年生から初めて学校に通うことになります
当然クラスメートから差別やいじめを受けることになるのですが
そんなとき、親から子への強い励ましのメッセージや
正しい「教育」がいかに大切か、優れた教育者が必要かを教えてくれます
子どもを導くのは、やはりそばにいる大人しかいない
この映画には明日から使える「金言」が溢れています
特に印象に残っているのは
「その人を知りたければ、することはただ一つ、よく見ること」
「正しいことと親切なこと、選ぶなら親切なことを」
「心の中がのぞけたら、みんなも普通じゃないと思う」
「オギーは見た目を変えられません、我々の見る目を変えなくては」
トリーチャーコリンズ症候群という病気を知るためにも
多くの人に見てほしい作品
小中学校で上映会をするのもいいと思います
【ここからネタバレあらすじ】
オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)は10歳の少年
いつも宇宙飛行士のヘルメットをかぶり、スター・ウォーズとハロウィーンが好き
明るい性格で27回も顔の手術をした自分の出生を面白いものと語ります
いままで両親(オーウェン・ウィルソン)(ジュリア・ロバーツ)は
自宅で教育していましたが、容体が安定したこともあり
母親はオギーを小学5年から途中入学させる決意をします
オギーが学校見学する日、トゥシュマン校長先生(マンディ・パティンキン)は
優秀だという3人の生徒に、学校を案内させます
いかにも金持ちでお高いジュリアン
親切だけど貧乏な家のジャック
キッズモデルで自慢話ばかりのシャーロット
ジュリアンに「顔はやけどが原因か?」とズバリと聞かれ
明るく対応するもののショックを隠せないオギー
両親は心配しますがオギーは学校に行く、と答えます
勇気を出してヘルメットをとり教室に向かうオギー
担任のブラウン先生はやさしく質問します
しかし生徒たちからは好奇の目で見られ、昼休みにはモンスター呼ばわり
ドッジボールでは標的にされてしまいます
迎えに来た母親と家に帰り、夕食時には再びヘルメットをかぶるオギー
学校でのことを聞かれるとオギーは部屋へいってしまいます
心配でやってきた母親に「何故僕は醜いの?」と泣いて訴えるオギー
母親は「心は人の未来を示す地図で、顔は人の過去を示す地図」
「あなたは醜くない」と信念をもって教えます
そしてヘルメットがなくなってしまいました
オギーの姉、ヴィアのナレーション
ヴィアは母親から「世界一手のかからない子」と言われてきました
母がオギーに手がかかるため、イラストレーターになる夢を諦めたのを
知っているヴィアは母親に甘えることが出来ず成長しました
オギーが太陽なら、私たちは彼の周りを回る惑星だと自分に言い聞かせます
いちばんの理解者だったおばあちゃんは他界し、もういない
しかも親友のミランダに夏休み中ずっと避けられ悩んでいました
高校が始まり、ヴィアはひさびさにミランダに会いますが
彼女は髪の毛を染め、見違えるほど派手なメイクとファッションになっていて
同じように派手な新しい友達と去っていき、ヴィアは傷ついてしまいます
するとジャスティンという男の子が、一緒に演劇クラスに入ろうと誘ってきました
演技に自信のないヴィアは乗り気でありませんでしたが
明るく楽しいジャスティンと意気投合、結局演劇クラスに入ります
すると演劇クラブにはミランダも入部していました
ヴィアはジャスティンの勧めで主役のオーディションを受けますが
結局ミランダが主役で、ヴィアは代役という結果
だけどジャスティンと付き合い始め、ヴィアは孤独を忘れるようになります
「ひとりっこ」と言う彼に、自分も「姉弟はいない」と嘘をついてしまう
嫌われるのを恐れ、弟が障害者であることを打ち明けられなかったのです
やがてジャスティンから真剣な想いを告げられたヴィアは
正直に弟がいることを打ち明け、彼を家に招くことにします
だけどヴィアの心配をよそに、ジャスティンオギーの外見を気にすることなく
オギーのジョークで打ち解けてふたりは親友になりました
ミランダのナレーション
ヴィアとジャスティンの交際を知ったミランダはオギーに電話します
オギーはミランダからの電話を歓び、学校に通い始めたことを知らせます
宇宙飛行士になるのが夢だったオギーにNASA仕様のヘルメットの
プレゼントをしたのは実はミランダだったのです
ヴィアとと幼馴染のミランダにとって、オギーは実の弟のような存在でした
オギーはなぜヴィアと喧嘩したかミランダに尋ねますが答えることができません
オギーとミランダは「また電話」することを約束します
ミランダの両親は離婚しており、ミランダは母親と暮らしていましたが
父が再婚したせいで母は立ち直れず落ち込んでばかりいるので
ミランダは夏休み中サマーキャンプに参加することにしました
そこで別人になりきる「ごっこ遊び」で、ミランダはヴィアになりきり
「顔が変形した弟がいる」という不幸な物語でキャンプの人気者になってしまいます
そのことを打ち明けられない後ろめたさで、ヴィアを避けていたのです
オギーは相変わらず学校で浮いた存在でしたが
大好きなチューバッカが現れてくれるという想像で乗り切っていたある日
オギーは得意の理科で難問を解き、クラスメイトを驚かせます
理科のテストの時には、答えがわからず悩んでいる隣の席のジャックに
(家が貧しいので成績が悪いと退学になると思われる)
回答用紙を見せたのをきかっけに、ジャックはオギーが面白い奴だと気づきます
放課後を一緒に過ごしたり、家に招いてスター・ウォーズごっこしたり
学校でも人目を気にせずふざけあう仲になりました
秋になりオギーが毎年楽しみにしているハロウィンが近づきます
ハロウィンは仮装で顔を気にする必要がないからです
なのにジャックと約束していたゾンビの衣装を
(飼い犬の)デイジーが遊んでボロボロにしてしまいました
しかたがなくオギーは「スクリーム」の衣装で学校に向かい
ワクワクしながら教室に入るとそこには
ジュリアンにオギーの悪口を言いながら笑うジャックがいました
それでもオギーと親しくする理由をジュリアンに聞かれると
ジャックは「校長に頼まれたから」と答えます
体調を崩したオギーは、そのまま家に帰り
ハロウィンパーティには行かないと言い出しました
ヴィアが心配して近づくと「触ると病気がうつる」と泣きだします
ヴィアは自分もミランダに避けられていることを告白し
友情には変化が起こるのだと説明します
そしてオギーに一緒にお菓子をもらいにいこうと誘います
ジャックのナレーション
オギーに無視されるようになったジャックは、理由がわからず困惑していました
オギーの学校見学の日、ジャックは母親からオギーがどういう病気なのか
不幸なのか説明され、やさしくするように頼まれたのでしかたなく従いました
今はもうオギーの外見はきにしないし、頭の良さを尊敬してる
なによりオギーのことが好きで、親友に戻りたい
オギーはいつもどおり「ペスト菌が移る」と陰口を言われていました
そんな悪口ばかりのクラスメイトに、いいかげん呆れたサマーは
ひとりランチを食べるオギーの席に行き、一緒にランチすることにします
「校長先生から自分と仲良くするようにといわれたのか?」と聞くと「違う」
「触ると病気がうつるぞ」と言われると、サマーはオギーに握手を求めます
サマーは聡明で、誰よりも信念の強い女の子でした
(たぶん黒人であることから)誰より頭のいいオギーが
見た目で差別を受け続けることが許せませんでした
オギーは裏表がなく正直で明るいサマーを誰より信頼するようになります
そしてサマーに、誰にも言わないという条件で
ジャックを無視している秘密を打ち明けるのでした
冬休みが明け、ジャックはサマーにオギーに無視される理由を相談します
ジャックが本当にオギーと仲直りしたがってると悟ったサマーは
悩んだ末「ゴーストフェイスとしか言えない」と答えます
ハロウィンの日、ゴーストフェイスがいたことを思い出したジャック
ジャックはオギーを傷つけたことをひどく反省し、
ジュリアンから誘われていた理科研究大会の発表を断り、オギーと組むと宣言します
「ゾンビ」と組むのかと嘲笑されたジャックは、ジュリアンを殴ってしまいました
ジャックは2日間の停学処分になり、校長に謝罪文を送りますが
「たとえ退学になっても、殴った理由は言わない」とありました
校長は「人を殴ってはいけないが、親友は守るべきものだ」と返事を書き
ジャックを責めることはしませんでした
一方ヴィアは舞台発表を隠していたのがばれ、母親は大喧嘩なります
代役だし、オギーには難しいだろうと母親が観劇をためらっていると
オギーは母親を叱り、ヴィアはオギーに劇を見てほしい頼みます
そんな時、長年一緒に暮らしてきたデイジーが天国へ旅立ってしまいます
デイジーの死で、母親は家族はひとつであるべきだと悟り
たとえヴィアが出演しなくても、発表には家族揃って行くことにします
ミランダは舞台の裾から、ヴィアの家族が全員来ているのに
自分の家族がひとりもいないことを寂しく思いました
突然ミランダは体調が悪いと監督に訴え、ヴィアに代役を頼みたいと申し出ます
思いがけずヴィアの主演を見ることができたオギーと両親は喜び
ミランダはヴィアの素晴らしい演技を見届け、これで良かったと幸せを感じます
舞台が終わるとヴィアと母親は抱き合いました
ジャックはオギーに謝罪し、理科研究大会の制作を一緒にしたいと頼みます
デイジーを失ったことで、親友のありがたさを痛感していたオギーは
勇気を持ってジャックと仲直りします
そしてジュリアンたちを見返そうと結束しました
ふたりは巨大なカメラ・オブスクラ(写真の原理による投影像を得る装置)を作り
生徒たちからは大好評、見事大賞にも輝きました
それからというもの、オギーは学校の人気者になるのですが
大会で負けた悔しさと嫉妬から、ジュリアンはオギーに対して
さらに激しい虐めと嫌がらせをするようになります
オギーは我慢していましたが、ある日オギーだけが(加工され)写っていない
悪口の書かれたクラスの集合写真がロッカーに貼られていました
それが偶然、担任のブラウン先生に見つかってしまい
校長先生はジュリアンの両親を呼び、いじめを非難し停学処分を下しますが
ジュリアンの家は名士の資産家、両親に全く反省の色はなく一方的に学校を非難し
友だちがいるから残りたいというジュリアンの意見も聞かず自主退学させます
オギーは年度末の野外学校に参加することにしました
映画の上映中、オギーとジャックは抜け出し森で遊んでいると
他校の上級生たちが現れオギーの顔を馬鹿にして絡んできました
そしてジャックを押し倒すと、体の小さなオギーに暴行をはじめます
もうだめだと思った瞬間、心配したクラスメイトが駆け付けてくれました
そこにはかってジュリアンの取り巻きだった男の子たちもいました
そしてみんなで力を合わせ上級生たちを撃退したのです
オギーはみんなの勇気ある友情の証に涙が溢れていました
オギーが野外学校中で、ヴィアもデートに出掛けた日
両親は久々に2人だけの時間を過ごしていました
そこでオギーが学校へ通い始めたことで時間のできた母親は
出産で諦めていた修士論文を書き上げたと夫に報告します
修了式の朝がやってきました
父親はオギーの1年間の努力を労い、ヘルメットを隠したのは自分だと告白します
でももうオギーにヘルメットは必要ありません
母親はオギーを「奇跡の子」と呼びました
修了式では、模範となる最も優秀な生徒に贈られるヘンリー・ビーチャー賞に
なんとオギーが選ばれ、スタンディングオベーションで祝福されました
そのときオギーはブラウン先生が教えてくれた言葉を思い出していました
「人を労われ、相手も戦っている
相手を知りたかったら、やることは1つ、よく見ること」
【ネタバレあらすじ終了】
家族の絆と、10代の硝子の心と友情を爽やかに描いた感動作
しかもこの作品のすごいところは、障害を持って生まれたオギーだけでなく
その家族や友人、いじめっこ、先生、そしてその他大勢の人間
それぞれにスポットを当てていること
誰が見ても共感できる人物が、きっといるはず
とくにオギーの姉ヴィアの描写が丁寧で、
長男長女にはあるあるな部分が多いのではないかと思います
ミランダやジュリアンにも、それぞれの家庭環境があり
気持ちの弱さから、仲間意識が強くなり意地悪や虐めに走ってしまう
寂しいから注目されたいという気持ちもあるでしょう
強くて頼もしい母親だって、決して聖母ではないんですね
障害をもつ子どもを産んだ苦悩と苦労、育児への自己犠牲
ときには夫や子どもと激しくぶつかりあうときもある
オギーはこれから先も、何千と言う差別を乗り越えていかなければならないし
就職や結婚という人生の節目にも、きっと見えない敵と戦かわないといけない
それでも、私たちがこのような病気があることを
知ってるのと、知らないのでは大きな違い
映画を通じて、より多くの人に正しい知識と障碍者への理解が
芽生えてくれることを願わずにはいられませんでした
【解説】allcinemaより
R・J・パラシオの全米ベストセラー『ワンダー』を「ルーム」のジェイコブ・トレンブレイ主演で映画化した感動ドラマ。顔に障害のある男の子が、10歳で初めて学校に通い、イジメや偏見にさらされながらも、家族の深い愛情と勇気に支えられて、少しずつ困難を乗り越えクラスメイトと友情を築いていく姿を描く。共演にジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン。監督は「ウォールフラワー」のスティーヴン・チョボスキー。r> 顔に障害を抱え、27回も手術を受けている10歳の少年、オギー。一度も学校へ通わず、ずっと自宅学習を続けてきたが、母のイザベルは心配する夫の反対を押し切り、5年生の新学期から学校に通わせることを決意する。しかし案の定、学校ではイジメに遭い、孤立してしまうオギーだったが…。