ブギーナイツ(1997)

原題も「Boogie Nights

70年代ポルノ映画界栄枯衰勢と

巨根だけが自慢のポルノ男優のおバカな話と

麻薬に溺れ落ちぶれていく姿を描いているのですが(笑)

一歩間違えばこの映画自体がポルノ映画になりそうなものを

よくうまくまとめたものです

しかもバッド・エンドにはもっていかず、意外にも優しい終わりかた

どんな人間にもやり直すチャンスがある、というメッセージが伝わってきます

 

ただしあくまでポルノ産業がテーマ

見る人を選びますのでご注意を(笑)

17歳のエディ(マーク・ウォルバーグ)高校に行かず

母親との関係もうまくいかず、ディスコでアルバイトをしています

唯一の自慢である30センチ以上ある巨根に目を付けられ

ポルノ映画監督のジャック・ホーナー(バート・レイノルズ)にスカウト

同じディスコで働くローラーガール(ヘザー・グラハム)と

オーディションを受けに行き、ポルノ男優になることを決めます

 

ジャックの妻で元夫と親権争いをしている売れっ子ポルノ女優

アンバー(ジュリアン・ムーア)や

妻の浮気に何も言えないプロダクション・マネージャーの

リトル・ビル(ウィリアム・H・メイシー)

 

のちにエディの相方となるリード(ジョン・C・ライリー)の教えで

ダーク・ディグラーと名前を改め、次々に主演作をヒットさせ

あっという間に業界のナンバーワン男優にまで登り詰めます

 

70年代最後の大晦日のパーティでダークはアンバーからコカインを勧められ

リトル・ビルは妻の浮気現場を目撃し妻と浮気相手を殺し自分も自殺します

1983年になり、コカインを常習するようになったダークは勃起できなくなり

新人のジョニー・ドゥに仕事を奪われるようになります

ダークはジャックと喧嘩しジャックのもとを去り

リードと、ゲイでブームオペレーター(音響)

スコッティフィリップ・シーモア・ホフマン音楽活動を始めることにします

ジャックは映画にこだわりましたが、ビデオが主流になり

さらにスポンサーのジェームズ大佐ロバート・リッジリー

未成年の少女にコカイン過剰摂取させたことと、児童ポルノ所持で逮捕

ポルノ界のドン、フロイド・ゴンドリフィリップ・ベイカー・ホール)の提案で

ローラーガールをリムジンに乗せ

彼女とセックスする男性をランダムに探すという企画では

声をかけたのが偶然にもローラーガールの高校の同級生

男はローラーガールとジャックを侮辱し、怒ったジャックは男を襲い怪我をさせます

アンバーは親権争いで、ポルノ産業に関与していることと

コカイン中毒だという理由で

裁判所から母親としてふさわしくないと判断されます

 

元ポルノ作家のバック・スウォープ(ドン・チードル)は

同じポルノ・スターのジェシー(メロラ・ウォルターズ )と結婚

ジェシーは妊娠し、バックは自分のステレオ機器店を開業しようとしますが

やはりポルノ産業という理由で銀行融資を受けることが出来ませんでした

いくら有名になっても、人気が出ても、世間から色眼鏡で見られ

軽蔑や差別されるだけでなく、法的な資格まで剥奪されてしまう

(今では多少違うかもしれませんが)それがポルノ

ドーナツ店で強盗に遭遇したバック

しかし金を奪った強盗と店員と武装した客が撃ち合いになり全員死亡

バックはとっさにお金を持って逃げます

音楽スターになれると信じていたダークとリードでしたが

デモテープをレコーディングスタジオに支払うお金がなく

ダークは売春で稼ごうとしましたが

男たちにマスターベーションを求められた挙げく袋叩きにされます

そこでダーク、リード、トッドの3人は

麻薬売人であるラハド・ジャクソン(アルフレッド・モリーナ) に

コカインと偽って重曹を売りつけ

ボディガードが粉を検査する前に逃げる計画を立てますが

トッドがラハドの邸宅から麻薬と金を盗もうし、ラハドに殺されてます

ダークとリードはかろうじて逃げ出し

ダークはジャックの家に行き、ふたりは和解

1984年、バック開店することになり、テレビコマーシャルを撮影しています

ローラーガールはGED(高校卒業の資格を得るための授業)を受け

ジェームズ大佐はナイトクラブを経営

リードは得意の手品でマジシャンになり

ジェシーはバックの息子を出産

ジャックは再びダークとアンバーとともに撮影を再開する準備をするのでした

母親から愛されなかったダークにとって

ジャックとアンバーが、唯一自分を認めてくれる

家族のようなものなのでしょうね

お下品で、お下劣で、くすっとして

(申し訳ないけどウィリアム・H・メイシーが最高)

麻薬の怖さ、社会の冷たさに幻滅し

ラストにはちょっとしんみり

(出産シーンをもってくるのは反則だけど 笑)

なによりポール・トーマス・アンダーソン(当時27歳)はじめ

スタッフや出演者たちの若いエネルギーを感じる

宝石の原石を集めたような作品でした

 

 

【解説】KINENOTEより

1970年代後半から80年代にかけての、ポルノ産業に従事する人々の心の葛藤と業界の裏側を描く人間ドラマ。監督・脚本は『ハード・エイト』(V)のポール・トーマス・アンダーソン。製作はアンダーソンと「イベント・ホライゾン」のロイド・レヴィン、『ハード・エイト』のジョン・ライアンズとジョアン・セラー。製作総指揮は「ダイ・ハード」シリーズや「デビル」のローレンス・ゴードン。撮影は「トゥモロー・ネバー・ダイ」のロバート・エルスウィット。音楽は『ハード・エイト』のマイケル・ペン。音楽監修はカリン・ラットマン。美術はボブ・ジンビッキ。衣裳は「未来は今」のマーク・ブリッジズ。出演は「バスケットボール・ダイアリーズ」のマーク・ウォールバーグ、「素顔のままで」のバート・レイノルズ、「ロスト・ワールド」のジュリアン・ムーア、「スウィンガーズ」のヘザー・グラハム、「BOYS」のジョン・C・ライリー、「エアフォース・ワン」のウィリアム・H・メイシー、「死の接吻」のフィリップ・ベイカー・ホール、「トゥモロー・ネバー・ダイ」のリッキー・ジェイほか。98年キネマ旬報ベスト・テン第10位。